同じはずなのに | 1.5人称の恋

1.5人称の恋

私たちの時間は、いつのまにか26年になった。
絡んだ小指くらいでつながる遠距離の婚外恋愛は、焦がれすぎても続かない

「部署で、アイツをおざなりに扱ってないか?あんなヤツを上司と思いたくない、その気持ちは解らなくはないけど」

 

 

「事務局長だって言うじゃないですか、アイツって。仕事せずにふらふらしてるのご存じでしょう!」

 

 

「私はいい、私はいいの。立場的には彼の上司だから。でも君はそうはいかない。君にとっては残念ながら上司なの」

 

 

「上司だから、訳の分からないことを言われても、はいわかりましたって聞きなさいってことですか?おかしいじゃないですか。仕事で引きあげておいて、これは事務局長が動いたことじゃないんですか?私を動かすというのは。その辺をどうして整えて下さらないんです?こんなんじゃ動けなくなる」

 

 

「部署の小さなイザコザにまでいちいち手を入れることはできない。そこは考えないと、自分で。それが組織ってもんです。対外的な動きをしようとする人間が自分の部署にトラブル起こしてどうするの」

 

 

「小さなイザコザ?!」

 

 

 

いよいよ吊り上がる眉根、私の苛立つ様子に、静けさを保つ事務局長。

 

求めている、突き詰めているところは同じはずなのに、どうして。

張りつめた気配を、再度事務局長が破っていく。

 

 

 

「君の仕事、そう、そこまで言うならそうなんでしょう。・・・では明日以降の、その「君の仕事」の動きに、君の今までの努力を賭けてみますか」

 

 

「・・・どういう意味ですか」

 

 

「私が動かした、私の仕事だと。動き始めてから修正をかけていく必要があるとも言った。では本当に君でないと現場が回らないのか、試してみましょうか」

 

 

「試す?」

 

 

「待つ、ということです。それによって私も動ける」

 

 

 

 

こういう時、事務局長は徹底的に事務局長だった。

最後まで、彼のもとを離れるまでその呼び名を変えることはできなかったのはその圧倒的な動きの強さからだった。

 

恋人、という気配は下地にはありながらも、どちらも完全には許さない。

身体を許し合っても、気持ちの最後までは許し合うことができない、許し合うにはお互いの考え方の違いが邪魔をする。

 

相手を傷つけ、嫌な思いをさせることはわかっている。

「仕事」においての事務局長の言葉は時に私を斬りつけ、対する私の言葉は事務局長の、自身が見たくないであろう優柔不断さを浮き彫りにして事務局長に突きつける。

解っているだろう?という互いの思いは、時に錆びた刃物で斬られたように余計に痛む原因になった。

 

本当は寄り添い、理解したふりをしたいのだけれど、出来ない。

 

私のことを白か黒、ツートンカラーの女だと言いながら事務局長もまたその白黒が実は身体の中から抜け切れていない人だった。

 

 

 

そんなところが、私達はとても良く似ていた。

勿論、そんなことは今書いてて思うことで。当時はわかるわけないんですけど、ね。

 

 

 

 


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