久しぶり | 1.5人称の恋

1.5人称の恋

私たちの時間は、いつのまにか25年になった。
絡んだ小指くらいでつながる遠距離の婚外恋愛は、焦がれすぎても続かない

「まぁお久しぶり。元気だった?どう?そっちの仕事は順調にやってる?」

 

「はい。なんとか」

 

 

 

受話器の向こうに広がる懐かしい賑やかさ、静かな声色ながら語尾にはしゃいだ気配を含んで秘書さんは続ける。

 

「どうしたの?こっちに来る用事ができた?たまには遊びに来る?」

 

「・・・はい。ちょうど研修会が。お構いなければ少し寄らせていただこうかなと思って電話しました」

 

「いらっしゃいな。楽しみ!・・・あれ、えーと・・・ちょっと待ってね、彼氏を呼んでくるわ」

 

「彼氏・・・って」

 

「だってねぇ、あれから2年?3年?だっけ。sanaちゃんみたいにいっしょけんめ追いかけてくれるような学生さんなんかいないからー淋しいもんよー」

 

 

 

相変わらず、時間が止まっていたかのような電話の向こう。

3年近い、いや一度電話をしたことがあったから1年半ぶりくらいの「久しぶり」

 

もう、何、そんな、と受話器の向こうで照れ隠しのようなじゃれあう声が聞こえたかと思うと

 

 

 

「もしもし」

 

懐かしい、低い先生の声が受話器に響いた。

目の前にいるわけでないのに、耳に届いたほんの四文字に思わず息が止まり目を伏せる。

 

 

「どう?・・・元気でやってる?久しぶり」

 

「・・・はい」

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

言葉が続かない。報告できるような話を抱えていないし、ましてやそんな。

 

 

ちょっと、何かもっとしゃべりなさいよ、せっかく久しぶりのカノジョとの会話なんだからーと秘書さんがからかう声が聞こえる。sanaちゃーん、まっちゃん照れてるわよーなんて受話器の向こうから聞こえる大きな声は、先生がむせたように咳払いをするのに重なった。

 

「・・・やっと声が聞きたくなった?僕という存在がありながら随分連絡もしないで」

 

秘書さんのノリに乗っかる、先生の照れ隠しのジャブが飛んでくる。

 

sanaちゃーん、まっちゃんの顔真っ赤よー。受話器の向こうから実況中継も聞こえる。

 

 

 

「もぅうるさいってば、え、ええっと、でこっちに遊びに来るんだって?」

 

「はい。研修があるので。ついでにお休み取ったから前日入りしようかと」

 

「そっか、来るのは午後?午前中よりも・・・・」

 

「ですよね、午後のほうが忙しくないかなと思って午後のつもりで」

 

 

「わかった。ちょうど講義も無いし。みんなで待ってるよ、楽しみにしてる」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 


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