1.5人称の恋

1.5人称の恋

私たちの時間は、いつのまにか25年になった。
絡んだ小指くらいでつながる遠距離の婚外恋愛は、焦がれすぎても続かない

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遠距離の婚外恋愛。 “先生”との恋の始まりから今までを綴っていきます。


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 チューリップオレンジ 1つめの婚外恋愛




 


「好きです」

 

 

 

こんな言葉が許されるのか、こんな言葉で赦されるのか。

 

ためらいがちの返答は、発した瞬間に強く強く抱きしめられた腕の力で正しいと解った。

 

 

 

まだ好きでいていい。

 

 

 

 

「僕のこと好き?」

 

「はい」

 

 

身体が緩んでいく。少しずつ隙間が出来始めて

 

 

「・・・身体を流そうか。これだけで我慢はちょっと難しい。抱きたい」

 

 

そっと身体をほどくと、身体を覆うように洋服が背中にかけられた。

 

能面のように見えた表情が和らいで、いつもの気配に戻った先生がそこにいた。

 

 

 

 

 

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ここからは私の、今の私の推測。

 

 

 

「僕は結婚しているから、sanaちゃんを僕のものにはできないし、してはいけないと思ってる」

「でも、この先、僕のほうから先に手を離すことはしない。・・・sanaちゃんが手を離したくなったときに僕の手を離したらいい。」

「彼氏が出来るよ。結婚もするでしょう? 何年先になるだろうね。」

 

 

言葉がたとえ噓だったとしてもかまわない。私は「世間の常識」よりも自分の心に従う。

そう決めて先生の胸に飛び込んだ。

 

その言葉はまた、先生にとってもその場限りの浮ついた台詞ではなかったのだろう。

 

そう思っていたから「彼氏はどんな人だったの?」は聞かなかった。いや聞けなかった。

聞いてどうする。誰とつきあうを止める権利はない、という理性が、嫉妬など欠片もあってはならないというプライドが、続く言葉を押さえ込んだ。ある種の諦めも噛みしめながら。


もし問われていたら、私は告白しただろう。もう二度と逢わないという前提で。

どう弁解しても先生ではない別の人に身を任せたことに変わりがない。私のネックはそこだった。

 

不器用な者同士のぶつかり合い。

 

「僕が好き?」の裏面で、聞きたいけど聞けない言葉が渦巻き

「好きです」の裏面で、どうかそれ以上聞かないでという思いが渦巻いた。

 

ふたりで、むりやり噛み合わせた「好き」でごまかしながら、その互いの心の揺れを封じ込めた。

 

 

その時にふたりとも、そんな意識は無かっただろうけど。

 

 

 

「別れました」から先生が受け取ったのは、自分ではない他の男との時間。

 

何があった、どんな男だった。まだ自分がすべてを把握していないその身体で、何を話しどう許しどんなふうにその男に応えたのかと。

たった一度見せた、青い炎のような静かな激しさ、あれは、私の背後への嫉妬ではなかったか

 

だから思わず。私にああやって焼き印のような罰を与えたかったのかもしれない。

 

 

 

 

書いていたら浮かび上がってきた記憶。

 

書き起こすまで、そんなことがあったことすらすっかり忘れていた。

たぶん雅治も、そんなことがあったなんてもう覚えてないはず。

 

 

 

 

・・・またまた。

「色々とsanaに都合のいい壮大な解釈だね」と雅治は笑うかもしれないけど。