混構造の耐震診断 | 杉本 龍一のブログ I am a 古民家鑑定士

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古民家を壊してしまうこと無く、修繕、再築しながら、未来のこどもたちに残して行ける、持続可能な循環型建築社会の創造を目指しています。

そのような活動を、建築士の立場から紹介していきます。

前回、伝統構法と在来工法との違いについて話題にしましたが、今回はその二つが混ざった「混構造」について説明したいと思います。

昭和25年以前に建てられた古民家は、元々伝統構法で建てられています。

その後増改築が在来工法で行われ、結果伝統構法と在来工法が混ざった「混構造」となっているケースが非常に多いです。


例えば、次の写真の建物の向かって左側の赤い屋根の部分は元々あった伝統構法。向かって右側の部分は在来工法で増築されました。


構造的に分かれていれば良いのですが、壁も屋根も一体となっています。



伝統構法部分は敷石の上に乗った二重土台。「柔構造」です。


在来工法部分は、コンクリート布基礎で、「剛構造」です。


混構造が耐震的に望ましくないということは想像頂けると思います。

この状態で非破壊で耐震診断を行おうとすると、伝統部分と在来部分をそれぞれ別々に行うのが一般的ですが、構造的に一体となってしまっているのでお互いにどのように影響を及ぼすかは解析できません。

ところが「伝統耐震診断」ならこの様な混構造の耐震診断が可能なのです。



地震計を地面と建物の上に設置し、常時微動がどの様に建物に伝わっているかを伝統耐震診断士が計測することにより、その建物全体の「耐震性能評価指数」を導き出します。


建物の振動特性値が柔構造と出るか剛構造と出るかで、耐震改修方法を決定します。

柔構造であれば、日本伝統再築士会が持つ「再築基準」を用いて柔構造のまま耐震補強を行います。
剛構造であれば、現行法に基づく方法で耐震補強を行います。

「伝統耐震診断」では、耐震補強施工後の結果測定も可能なので、施主様にとって、より安心な診断法となります。