胸部の痛み、圧迫感、締め付けられる感じ、で受診される方は年齢を問わず多くいらっしゃいます。
胸部のこれらの痛みなどの症状は、様々な原因で起こります。
その中でも、生命の危険のある、急性心筋梗塞や大動脈解離、肺血栓塞詮症、食道破裂、といった疾患については迅速な診断と治療の開始が必要です。
特に、血圧や呼吸や意識の状態が悪化している場合には、早急な処置が必要です。
これらの、胸部の症状を引き起こす疾患が何であるかを鑑別するためには、まずは、詳細な病歴の聴取、身体の診察が必要です。
胸痛は労作時か安静時のいずれに起こるか、胸痛の起こる時間帯、胸痛の強さや持続時間や頻度も重要な事項です。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病や喫煙歴も動脈硬化の危険因子であり重要です。
突然起こる強い胸の痛みや締め付けられる感じが、長い時間20分~30分以上続くときには、「急性心筋梗塞」が疑われます。
背部や側胸部の痛みを伴ったり、急な心臓の雑音の出現は、胸部の大きな血管の破裂である「大動脈解離」を示唆します。
脈拍の増加(頻脈)や呼吸数の増加(頻呼吸)、心臓の聴診上の異常の出現は、肺の血管に血栓(血液が固まったもの)が詰まって呼吸の機能などを悪化させる、「肺血栓塞詮症」を示唆します。
胸部の症状の訴えがあるときには、検査として、まずは心電図と胸部レントゲン撮影を行い、血液検査を行い心筋梗塞などで心筋が傷害された時に上昇する酵素であるトロポニンTの測定や肺血栓塞詮症や大動脈解離の時に上昇するDダイマーというマーカーなどの測定、さらには造影CT検査を行い心臓や肺や大血管の病気の検索を行います。
心臓や肺や大血管の病気以外にも、胸部の痛みなどの胸部症状を起こす病気は多くのものがあります。
胸壁の病気、帯状疱疹、食道や消化器の病気、脊椎症などの胸部の神経や筋肉や骨格の病気も胸の痛みなどの症状の原因になるので、それぞれ鑑別診断を行って否定する必要があります。
また、精神神経系の要因も胸痛や胸部不快感の原因になることは多く、特に若い人にはストレスが背景にある心臓神経症、不安やうつやパニック障害も胸痛の原因になりえます。