心房細動と脳梗塞の予防 | 文京内科・循環器クリニックのブログ

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東京都文京区本駒込2-10-3 ウエストワンビル4Fにあるクリニック(https://www.bunkyo-cl.jp/)の、医師で院長のブログです。

心房細動は、健診の心電図では約200人に一人はみられる、頻度の高い不整脈です。不規則な心臓の拍動が特徴的です。

心房細動では、脈の不整や息切れ、胸部不快感などの症状がある場合もありますが、無症状のことも少なくありません。

心房細動は、加齢により新規発症率は上昇し、特に60歳を超えると著しく上昇します。心房細動を発症させる要因は、高血圧、心臓弁膜症、心筋梗塞、心不全、慢性呼吸器疾患、糖尿病、甲状腺機能亢進症、飲酒があり、遺伝子異常を伴う家族性心房細動もあります。

 

心房細動を放置すると、脳卒中(脳梗塞、脳の血管がつまる脳血管塞栓症)が起こるリスクがあり、心臓や腎臓の機能を低下させて心不全や腎不全を来すリスクに加えて、認知機能の低下をきたすリスクもあり、死亡率を増加させます。

このため、心房細動がみられた場合には、脳梗塞の予防や心不全の予防などの治療が必要となります。

 

心房細動の患者さんでは、心臓の内部で血栓(血の固まり)が形成されるリスクが高まり、これが心臓から血流に乗って脳の血管に詰まると、脳梗塞(脳血管障害)を引き起こし重度の麻痺を引き起こしたり死亡のリスクを高めたりします。

このため、心房細動の患者さんでは、脳梗塞の予防のために、血栓の形成を防止する薬(血液をさらさらにする薬)の服用が必要になります。このために、以前はワーファリンが用いられていましたが、近年ではより有効で安全性が高い薬(直接経口抗凝固薬:DOACと言います)が用いられるようになっています。

特に、脳梗塞または一過性脳虚血性発作の既往のある方、65歳~75歳以上の高齢の方、高血圧や糖尿病や心不全のある方は脳梗塞を起こすリスクが高いため、脳梗塞の予防のために、血液をさらさらにする血栓予防薬(抗凝固薬)を服用する必要性が高くなります。この他、心筋症、心血管の疾患、腎臓の機能障害、心エコー上の左房拡大を有する方などにも心房細動に伴う脳梗塞の予防のための血栓予防薬(抗凝固薬)を服用する必要性が生じます。

 

心房細動には、一過性に心房細動の不整脈が起こる発作性の心房細動と、長い時間心房細動が続く持続性ならびに永続性心房細動があります。脳梗塞を引き起こすリスクは後者の方が高いというデータもありますが、いずれの場合にも脳梗塞の予防の治療を考慮する必要があります。

 

また、心房細動の治療には、1.心房細動の正常な洞調律への復帰と維持をはかる治療と、2.心房細動として心拍数の維持をはかる治療法があります。これらのうちいずれを選択するかは、心房細動の症状の強さ、心房細動を発症してからの時間の長さ、年齢、心臓のエコーの所見、不整脈に対する薬の治療の有効性と副作用、合併する他の疾患、患者さん自身の価値観、などを考慮して患者さんと医師との話し合いで決められることになります。