骨粗鬆症の診断と治療について | 文京内科・循環器クリニックのブログ

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東京都文京区本駒込2-10-3 ウエストワンビル4Fにあるクリニック(https://www.bunkyo-cl.jp/)の、医師で院長のブログです。

骨粗鬆症は、骨密度の低下と骨質の劣化により骨密度が低下した疾患であり、骨折リスクが増大した病態です。

 

加齢、閉経、遺伝的素因、生活習慣病による原発性骨粗鬆症と、それ以外のステロイド使用や内分泌疾患などの原因による続発性骨粗鬆症があります。

 

骨粗鬆症の治療は、椎体(背骨)や大腿骨近位部(足の付け根)などの骨折の原因となり、QOLひいては生命予後にも影響するため、骨折の予防が最終的な目的となります。

 

骨粗鬆症の治療には、食事療法(カルシウム摂取など)、運動(ウォーキングなど)、薬物療法があります。

 

骨粗鬆症の薬物療法の開始基準は、椎体や大腿骨近位部やそれ以外の部位の骨折の既往や、骨密度検査で若年成人平均値(YAM)で70%~80%以下、などの場合で、将来骨折が起こるリスクが高い場合に適応となります。

 

骨粗鬆症の薬物療法は、骨折の既往のない比較的早期の閉経後骨粗鬆症の場合には、選択的エストロゲン受容体モジュレーターである(SERM)(エビスタなど)、活性型ビタミンD3製剤(エディロールなど)などが適応となります。

 

男性や閉経後比較的時間が経過した高齢の女性では、臨床データが充実した骨粗鬆症治療薬である、ビスホスホネート製剤(ボナロン、フォサマック、ベネット、アクトネル、ボノテオなど)が第1選択となります。ビスホスホネート製剤には、毎日服用するタイプのもの、週1回服用するタイプのもの、月1回内服ないしは静脈注射で投与するものなどがあり、各人のアドヒアランスに応じて選択することができます。

ビスホスホネート製剤と活性型ビタミンD製剤を併用すれば、有効性を高めることが可能です。

ビスホスホネート製剤では、まれに食道炎や食道潰瘍が起こる副作用があるため、朝食前にコップ1杯の水と一緒に服用して服用後30分は横にならないことが必要です。抜歯などの際にも留意が必要です。

 

更年期障害(エストロゲン欠乏症状)や閉経によって血中エストロゲン濃度が低下して骨吸収が亢進して骨量が減少する人には、ホルモン補充療法の選択肢もあります。1990年代の半ばまでは、ホルモン補充療法が第1選択でしたが、その後上記のような骨粗鬆症の治療薬が開発され、現在も新たな治療薬が出てきています。各人のアドヒアランスに合った薬物療法が可能になってきています。

 

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。このうち、エストロゲンには骨の形成を促し、骨の吸収(古い骨を壊す)を抑える働きがあります。

ところが、40代以降になるとそれまで骨を守っていたエストロゲンの分泌が減少するために、骨密度が低下し骨の質も劣化して骨がもろくなり、進行すると骨折の原因になります。もともと、女性は男性に比べて骨量が低いうえに加齢による影響に更年期のエストロゲンの減少も重なって、50代以降には骨粗しょう症の発生が急増するのです。

骨粗しょう症は自覚しにくい病気のひとつです。外から骨の健康度を目で確認することは難しいため、40代を過ぎ女性ホルモンが減少し始める時期に入ったら、骨密度など骨の状態に気を配りたいところです。食事面では、栄養バランスのとれた食事を基本に、小魚や乳製品、海藻類などカルシウムが豊富な食材を意識して摂取することが大切です。そして、適度な運動を取り入れて丈夫な骨を保ち、骨粗しょう症に備えましょう。

 

骨は私たちの身体を支え、運動を可能にするだけでなく、カルシウムなどミネラルの貯蔵庫としての役割、血液細胞を育てる造血器官としての役割など、多彩な機能を宿しており、脊椎動物の高度な生命制御システムを特徴付ける臓器です。骨の恒常性は、破骨細胞による骨の破壊と骨芽細胞による骨の形成の厳密なバランスにより維持されており、破骨細胞が古くなった骨を壊すことで常に新陳代謝を繰り返しています。ビスホスホネート製剤やホルモン補充療法などの薬物による骨粗鬆症の治療は、加齢や閉経に伴う骨の代謝の変化に対して、骨の恒常性を保つ薬物療法であるといえます。