こんばんは。
訪問ありがとうございます。
通勤中の読書。
ちょっと記事のアップが前後してしまいました。
52ヘルツのクジラたちは良かったな~と余韻に浸りつつ、短編でした。
●あらすじ
自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。
地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。
●感想
葬儀会社に勤める人たちや、その身近な人の死に纏わる短編でした。
どれも泣けて泣けて…これは好きな町田さんでした。
これを読んで私の中で引っ掛かっていた近しい人の死で、境遇は違うけれど長年の引っ掛かっていた事やモヤモヤと後悔する感情がなんだか肯定されて救われたような気持ちになった。
正直、近い存在の人が死にすぎ!と思うところは多々あるけれど、それを差し引いてもすごく良い一冊だった。
「見送る背中」
葬儀会社のディレクターを勤める主人公が、彼に結婚のかわりに職を変えて欲しいと言われていたけど、迷いながらも自分がどうして迷っているのかを自覚していく話。
親友の死で、その仕事が好きなのだとより強く自覚するところがなんだ悲しい。
けれど、仲の良かった他の親友と、●●が居たら~と笑顔で話しているラストがすごく好き!
「私が愛したかった男」
花屋のシングルマザーの話。
かつての夫の恋人の葬儀を手伝うことになる。恋人が男性だと知って驚くけれど、葬儀を通してあのときと蟠りが解けていくのと、依存心の強いダメな元夫が一人で生きていこうと決意するのが明るい未来がありそうで良かった。
でも依存心の強い元夫と、甘やかせたい恋人の共依存で、端から見たらどうかと思う関係も、穏やかな二人の時間があったのだと思うと、なんだか悲しいな。
娘が母親の頑張りをちゃんと見ていた所は泣いてしまった←ここがこの話で一番好きかも。
「芥子の実」
実はこれが私の中では一番好きかも。
新人社員の話で、母子家庭の貧しい家庭で育った主人公。母親の容姿のせいで学生時代にいじめられたり、父親(元?)と切れないがために学費も払えずに、頑張りが報われず母親を恨んでいたはずなのに、年々母親の死が後悔として大きくなっていて…。
最初は人を見下したり、適当に熱意なく描かれていたけれど、だんだんとこの新人の須田の本心みたいなのが明かされていくところがらすごく泣けた。
豊かに生きたひとは、豊かに死ねる。
貧しく生きたひとは、死すら貧しい。
という出だしで、最後まで読んで、すごく悲しくなった。学生時代にいじめていた同級生の父親の葬儀を手伝うことになって、余計にみじめさを感じるところとか、なんて酷いんだろうと辛くなった。
この同級生とトラブルになって仕事を辞めるとヤケになってたけど、辞めないで続けているといいな。
そして母親の死を、貧しい死に方と思うのではなく、受け入れることが出来たらいいな、と勝手に妄想してしまった。
あの同級生、いつか痛い目見ればいい(感情移入し過ぎ)
「あなたのための椅子」
これもすごく良かった。元恋人が突然の事故で亡くなり、葬儀に出席する主婦の話。
故人の知らない交流関係があり、知らない顔が見えるのだけど、故人の兄の言葉が…。
亡くなった人のための椅子が自分の中にある限りはいつでも対話が出来るというような話。
これでちょっと気分が軽くなったな。
要はいつまでも忘れないということなんだろけど。故人とこれから関係を深くはしていけないけれど、今までの思い出が消えるわけではないから、あの人ならなんて言うだろう? どう思うだろう? と想像することで自分の中でいつまでも生きている。
うん、そうだよね!!
椅子はいつまでも取っておくよ!と思った。
「一握の砂」
最初の話の主人公たちのその後の結末が描かれている。自分の気持ちに正直に生きていくことを選択してさっぱりするのが良いが、主人公の結末がちょっと残念。結婚と仕事どちらも選べたらよかったのに。
芥子の実とあなたのための椅子は、何度も読み直したいな、と思える話だった。
一番は後悔のないように付き合っていくことが大事なんだけど、やっぱり難しいから、その後悔をどう折り合いをつけていくかも大事なんだろうな。
次は、藤岡さん
だったんだけど、前後した…