電子書籍で出版した「網走五郎・神社物語」最終回。

(82) 最終回

平成22年(2010年)3月31日、網走五郎、沖縄県護国神社定年退職。

40年前、五郎が勤め始めた頃の沖縄県護国神社は、誰も排除しない愛と理解に満ちた神社であった。

『この神社なら一生勤めることができる』

五郎は大船に乗ったつもりで勤務していた。しかし本土からの波は沖縄県護国神社にも押し寄せ、定年という名のもと排除されてしまった。

五郎が本著で最も訴えたかったこと、それは「誰も排除するな！」である。神道の神は誰も排除しない。存在する全ては神の分霊、神から生まれた神の子と捉えるのが神道である。

排除あるところに平和はない。世界で最も平和な宗教、それが日本固有の宗教神道である。神道こそが人類を救う宗教である。

しかし五郎は定年という名のもと排除されてしまった。

だからと言って五郎は排除されたことを恨んでいない。喧嘩と酒と女に明け暮れていた網走五郎に神道を学ばせたのは沖縄県護国神社である。

さらに言えば排除されたことによって本著が誕生したのである。排除がなければ本著『網走五郎·神社物語』は誕生しなかったのだ。

寺山修司が名づけた網走五郎は、排除されることによって真価を発揮し、夜空の流れ星の如く燦然と光り輝くのだ！(笑)

1970年9月30日発行「演劇実験室・天井桟敷」の新聞に網走五郎は次のように紹介されている。

『網走五郎……男は黙して語らずという哲学の実践者で、私生活はいっさい不明である。いつも黒眼鏡をかけている。「俺の老後は丹下段平さ、ジョーのような奴を一人育ててな」と薄ら笑いを浮かべる。ボクシングと空手の名手で腕はめっぽう強い。天井桟敷を演劇集団から革命集団へというスローガンの提唱者でもあり武装訓練の準備をはじめた』

50年過ぎた今、網走五郎は那覇市奥武山運動公園にある奥武山ボクシング会館で、青少年のボクシング指導に励んでいる。あしたのジョーを育てるために・・・。

(終)

(82) 定年退職 最終回

(82) 定年退職最終回