アースルーリンドの騎士外伝。『幼い頃』冒険の旅 130 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

王冠2 登場人物紹介
王冠2 イラスト入り登場人物紹介(まだ全部じゃありませんが…)


 レイファスは目を閉じるオーガスタスの顔色が真っ青で、血の気が無くてぞっとし、必死でオーガスタスの肩を抱いた。
白い光に包まれてオーガスタスの出血は、それでも止まっているように見えて、レイファスは震える手でオーガスタスにしがみつくように抱きついていたけれど、それ以上彼が血を流し続けずに済んで、ほっと僅かに安堵した。
けどオーガスタスの衣服の殆どが彼の血で真っ赤に染まっているのに気づくと、また不安に襲われ、血生臭いのも気にせず、オーガスタスの胸に突っ伏して泣いた。
そして、祈った。
『誰か、お願い…!
オーガスタスを助けて!
絶対、死なせないで!』
心の中で繰り返し、繰り返し、祈り続けた。

 ローフィスが寄り来る死体をものともせず、呪文を唱え続ける。
空間の見えない敵は空気を震わせ、雷のような声で怒鳴る。
“これだけの力を持つ、俺を倒せると本気で思ってるのか?!
たかが、人間風情で!"
ギュンターもディンダーデンも、薄気味悪い、たった今自分達が殺した筈の死体が続々と立ち上がり、寄り来るのに、ローフィスに勝算があるのかと、本気で疑った。
だがローフィスが呪文の最後に
「アクル・エル・クス・ミッターテンダー!」
と叫んだ途端、姿の見えない敵は、空間を震わせる。
瞬間、ローフィスの斜め前に白い影が姿を現す。
ディンダーデンは目を疑って叫んだ。
「…ホールーン!」
続き、ローフィスがまた呪文を唱え始め、その最後に同じ言葉を吐いた。
「…アクル・エル・クス・ミッターテンダー!」
そして、反対の斜め前に、また白い影。
「…アーチェラス………!」
ギュンターが唸った。
金の刺繍飾りの付いた白い神聖騎士団隊服に長身のその身を包む、白っぽい長髪の二人の神聖騎士達は周囲を見回し、死体が不気味に寄り来るのを、笑った。
“おのれ、末裔…!
大した力も持たぬ癖に、私を封じようというのか?!”
アーチェラスが、叫んだ。
「どう喚こうが所詮“影”だろう?!」
ホールーンの心話が、響き渡る。
“久しぶりだな。
アルクス・ザマーン。傀儡(くぐつ)の凶王。
アースルーリンドには居場所が無くて、こんな場所に巣喰ってたのか?!”
アルクス・ザマーンと呼ばれた凶王は、二人の神聖騎士に言葉を無くした。
ホールーンが何かを唱え始め、アーチェラスがそれに追随する。
彼らの腰に下げた剣が白く光り輝き、二人はそれを抜くと、動く死体に振り下ろし始める。
まるで、見えない操り糸を断ち切るかのように、その死体の頭上を、次々に。
彼らが剣を振る度、死体はごろりと転がり、動かなくなった。
空間の御大“傀儡(くぐつ)の凶王”は、一人、一人と操り人形が死体に戻って行く度、空間を振るわせて怒り狂う。
“おのれ…!
おのれ!!
やっと俺のものに、したばかりなのに…!”
凶王の怒りそのままに、黒い靄が空間から漂い、神聖騎士達を覆い始める。
彼らの白い衣が、ギュンターやディンダーデン。ローフィスらに黒く見える程の濃い“障気”だった。
が、ホールーンがその銀の真っ直ぐな髪を散らし、靄を切り裂くと、傀儡(くぐつ)の凶王は、ぐわっ!と叫んで空間を震わす。
アーチェラスもやはり、その黒い靄に激しく斬りかかる。
途端、凶王は空間を激しく揺さぶり始める。
アーチェラスが、はっと気づいてローフィスに振り向く。
ローフィスが、意味を察して頷く。
ホールーンの、心話が三人の頭の中に響いた。
“奴は力を失い、この空間を維持出来ない…!
直閉じるから、早く行け…!”
ローフィスは呆ける後ろのディンダーデンの腕を咄嗟に鷲掴み、その隣のギュンターに視線を振り、怒鳴った。
「白く光ってるその道へ、走れ!早く!」
ディンダーデンはローフィスに引っ張られ、ギュンターは慌てて振り向くと、背後に大きく光る白い光を見つけ、ローフィスと共にその中へと駆け込んだ。
真っ白な光で周囲が眩しくて見えない。
が、だんだんと光は消えて行き、ギュンターが気づくとそこは再び暗い、洞窟の中だった。
「どうなってんだ?」
ディンダーデンが手を振り上げてローフィスの掴む腕を外すと、前へ進もうとし、ローフィスが周囲の状態に気づいてディンダーデンの頑健な肩をむんずと掴み、引き戻す。
「折角連れ戻ったんだ!
またどっか行かれたら困る」
ギュンターもディンダーデンも、ようやく暗さに目が慣れ、少し先に居る仲間に気づいた。
ゼイブンが、三人の姿が真っ白く光る光の中から現れるのを目にし、つぶやく。
「ローフィス。戻ったのか?」
ギュンターもディンダーデンも良く見ると、周囲に粉が、薄い白い光となって浮かんでいた。
ローフィスが、それを見て怒鳴る。
「もっと真面目にやれ!ゼイブン!
光が薄いぞ!」
ゼイブンは腰に手を当ててぼやく。
「道筋は、見えるだろう?」
「不十分だ!」
ファントレイユとテテュスが見上げると、ゼイブンは眉間を寄せ、ぶつぶつと呪文を唱え始める。
ギュンターが見てると、空間の光の粉はほんの少し、明るい白に光った。
ローフィスはその体たらくに、ゼイブンを怒鳴りつける。
「呪文は唱える人間の“気"に反応するんだ!
“気"を抜きまくってるだろう!真面目にやれ!
キレた時くらい、本気で唱えられないのか?!」
ローフィスに怒鳴られ、ゼイブンの顔が真剣に成る。
「糞!
アフル・ゼルダ・アン・カーソンズ・ゼブンダルド………」
一瞬にして光が輝き、周囲が真っ白に成るのに、ギュンターもディンダーデンもぎょっとした。
「…いいぞ。
この光の中なら、全然安全だ」
ローフィスが背を向けて進むのに、ディンダーデンもギュンターもお互い顔を見合わせ、付いて行った。




つづく。

宝石赤宝石緑 この連載を、始めから読む星


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 『野獣の初な恋心』『幼い頃』
の2008/6/11から
宝石赤

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