登場人物紹介だが食事中、ギュンターが魚のフライを取ろうと山と盛られた皿に手を伸ばすが、その一つはいきなり宙に浮き、ふわふわと空間を漂って、テーブル下座の神聖騎士の皿の上に、ストン。と落ちる。
テテュスが気づき、レイファスもファントレイユも、宙を漂っていく肉の塊やとうもろこしや人参。そしてタルトやパイをつい、魔法のように見つめた。
神聖騎士達は言葉を発しなかったが、食べながら忙しく視線を、アーチェラスに向ける。
アーチェラスは毎度、食事の手を止め、言われた料理に視線を送り狙いを定めると、その料理は宙に浮き、テーブルの上を漂い、ドロレスやムアールの皿の上にストン。と落ちた。
「アーチェラスがしてるの?」
レイファスに声を掛けられ、アーチェラスが顔を上げた途端、空中を漂っていた鶏肉がすとん。と、ディングレーのワイングラスの中にダイブした。
ディングレーは上着を、グラスから溢れ、飛び散らかったワインまみれにし、暫く目をまん丸に見開いて呆然とする。
アーチェラスが顔を下げて
「すまない…」
と言い、レイファスも慌てて言った。
「僕が声を掛けたから失敗したんだ。
ごめん。ディングレー」
だが、隣のギュンターはそっと、ワインを上着に浴びた大貴族にハンケチを差し出し、つぶやく。
「近衛じゃ、ワインが上着に散るのは良くある事故だ」
ディングレーはハンケチを受け取り、金の髪の美貌の男を、見た。
「だが、喧嘩でだろう?
それに近衛じゃ、もっとハデで一旦始まるとテーブル毎ひっくり返る」
ギュンターは笑った。
「大事じゃないから、油断したのか?」
ディングレーは同意するように肩をすくめた。
「普通のテーブルでは滅多に、こんなに静かに鶏肉だけが、宙を泳いだりはしない」
レイファスの、眉が寄る。
「…それって、普通?」
アイリスがくすくす笑った。
「近衛ではね」
ファントレイユの横のゼイブンが、パスタをフォークで口に放り込み、唸る。
「近衛は野蛮人ばっかだからな!
コックの自慢料理を喧嘩でいつも、台無しにするロクデナシ共だ」
ギュンターはムッとして、顔を上げる。
「俺は皿を、庇うぞ!」
ディングレーも眉間を寄せて言い返す。
「俺はテーブル毎、避難する」
オーガスタスがぷぷっ!と吹き出した。
二人が見ると、上座ウェラハス近くに座る彼らの総大将は肩を揺らし、笑っていた。
「それはお前らが珍しく喧嘩をしてない時で、他人の喧嘩を眺めてる時は滅多に、無いんじゃないのか?」
神聖騎士達もその、喧嘩っ早い二人を、見た。
ドロレスがぼそり。と言った。
「上着をワインで汚したのは単に、派手な乱闘でないから避け損ねただけか」
そのつぶやきに、オーガスタスはディングレーとギュンター双方に睨まれたが、構わず笑いながらの食事を、続けた。
つづく。

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