登場人物紹介廊下の先に、明かりの漏れる戸の無い部屋があり、その中にローフィスが入ると、皆が後にぞろぞろ続く。
四方が白壁の、金の装飾施されるとても洒落た室内の、中央に長いテーブルがあって、上座中央に掛けていたウェラハスが彼らの姿を見ると、微笑む。
彼は料理の盛られた皿が数成すテーブルの椅子に、彼らを導いた。
深夜とは思えないご馳走が、湯気を立てて長いテーブルの上に所狭しと並べられ、ウェラハスはつぶやく。
「遠慮無く、始めてくれ」
ガタンガタン…!と皆が一斉に音を卦立てて椅子に座るなり、不作法に盛られた料理に手を伸ばして肉を掴み食い、料理を自分の皿に乱雑に盛ると、それを一気に、むしゃむしゃと食べ出す。
テテュスがその野蛮人のような皆の凄まじい食事風景に、ついウェラハスを見つめるが、ウェラハスはとっくに知っているように、微笑んでいた。
ウェラハスが自分に視線を向けるのが解って、テテュスは彼にそっとささやいた。
「心が読めると心の準備が早くに出来て、いつも落ち着いていられるんですか?」
ウェラハスはテテュスにもっと微笑むと告げる。
「君達の中でも、人の心や行動の予測が早く出来る人物はいつも、落ち着いているだろう?」
そう言って、彼の父親アイリスに視線を振る。
テテュスは横で、皆の凄まじい食べっぷりの中、ローランデと並んで唯一、品を保つアイリスを見上げる。
アイリスは気づくと途端、微笑みを息子に、送った。
「でも…。僕達はいつも、その予測が本当かどうか、解らない」
そうつぶやき、ウェラハスを見上げる。
横のレイファスもファントレイユもが、肉を手掴みで頬張りながら、テテュスはお腹が減ってないのかな?と首を捻った。
ウェラハスは優しく微笑む。
「冷静な観察眼。
状況の判断力。
そして、私情を挟まなければ、心が読めなくても十分事態に備えられる」
「でも…。
読めた方が時間がうんと、短いと思う…」
ウェラハスはその整って美しい面立ちをテテュスに傾ける。
「私達の敵(『影の民』)はかつての同族だから、それ位で無いと、戦えないんだ」
レイファスが、つい肉を頬張ったまま、もぐもぐ言った。
「に…んげんとは、戦わないの?」
ウェラハスは優しく微笑む。
「戦う必要が、無いからね」
ファントレイユも顔を上げた。
「どうして?」
ウェラハスはもっと微笑むと
「だって人間の敵は人間が倒すし、彼らは私達と戦う危険を、大抵避ける」
テテュスは頷いた。
「ウェラハス達には、勝ち目が無いから?」
ウェラハスはうんと微笑むと、大きく頷いた。
ディンダーデンが、一度食事の手を止めて俯き、ぼそりと言った。
「人間を支配出来るのに、しないなんて逆に、傲慢だ」
ウェラハスが口を開こうとしたが、ローフィスが先だった。
「連中が力を使うのに、光のエネルギーが要る事を忘れてるな?
光の無い場所で力を使い果たせば、ただの人間だ。
力を使わない生活に慣れて無いから、ヘタをすれば赤子以下だぞ?」
ローフィスのその厳しい言い草に、だがウェラハスは見つめるディンダーデンに
『その通りだ』と頷く。
ギュンターもローランデもシェイルも、彼らがいつも、白っぽく光っているのは、光のエネルギーをいつも、帯びているからだと解った。
レイファスもファントレイユも、もっといっぱい、聞きたいことがあった。
けど、目の前に積まれた、香ばしい香りのかりかりに皮の焼けた豚の丸焼きや鳥の丸焼き。
いい臭いのする魚の焼いた物や、蒸し料理。
野菜の炒めた物や煮た物、クリームのシチュー。スープ。色んな茸の入った卵サラダ。
そして、甘い香り漂うパイ類やクリームの乗ったチョコレートケーキ、たっぷりカスタードクリームの盛られた木苺や木の実のタルトに、夢中で次々と手を出し、それどころじゃなかった。
ウェラハスは彼らの感情波が解るのか、夢中で食べる子供達に、にっこり笑って見せる。
オーガスタスはふと、肉を手掴みで食べる自分を意識し
『俺も、奴らから見たらただの、餓鬼だな』
と、内心吐息を吐いた。
つづく。

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の2008/6/11から



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