登場人物紹介「アィリアはお前が踊れ」
ギュンターは隣のローランデにそう告げる。
ローランデは呆れたように彼を見上げると、ささやくように告げた。
「…君の腕の中で無防備で居ろと本気で言ってるのか?
大観衆の目の前で!」
ギュンターは肩をすくめる。
アイリスの明るく男らしい声が響く。
「二人は親友ですが、決闘を余儀なくされる。
その決闘の場面を舞踏に振り付けたもので、ローダンが傷ついた時アィリアが気遣い、そして最後はアィリアがローダンの手にかかり、息絶える場面で終わります」
そしてアイリスは踊り手のローランデとギュンターを紹介しようとして二人に振り向いたが二人はまだ、どちらがどちらを踊るかで、小声で言い争っていた。のでアイリスは仕方無く、踊りの解説を続けた。
「この踊りは名の残る有名な見せ舞踏を数々後世に残した、ラーダウィツの振り付けで…」
ローランデが密やかに、だが強い声音で異を唱える。
「…アィリア役は最後、ローダンの腕の中で息絶えるじゃないか!」
ギュンターもすかさず言い返す。
「俺を抱きかかえるのは、だってお前無理だろう?!」
「無防備に死んだふりなんて君みたいに危ない奴の前で出来るか!
…誓えるか?
絶対公衆の面前で悪さしないと!」
ギュンターは一瞬顔を揺らし熱い紫の透けた瞳でローランデをじっ。と見つめる。
がローランデは意思の強い青の瞳を射るように投げかけて、確約を強要した。
ギュンターはもの凄く、ためらい、小声でぼそり。と告げる。
「…くそくする」
「聞こえない!」
アイリスが二人の様子にチラリと視線をくべる。
近衛でこの踊りは大抵酒の余興で、おふざけに最後、息絶えたアィリア役にローダン役の男が口づけをする。
という罰ゲームに頻繁に、使われていたし、ギュンターにとってはバツどころか褒美に成ると、気づいたので。
つづく。

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