騎士達の控えの間に、ファントレイユとレイファスが駆け込んできて、オーガスタスが立ったまま、その足音に振り向いて微笑んだ。
「元気だな!」
二人はオーガスタスの、髪が跳ねて居ず、髪も肌も艶々なのに、つい凝視する。
その鬣に櫛を入れ、綺麗な艶のある赤褐色の巻き毛でとてもきちんとした、野性的で崇高な感じのする鳶色の瞳のでもやっぱり、ライオンに見えた。
彼は黄色のかかった褐色の上着を着、立ち姿がとてもたおやかでしなやかで、あんまり上品な格好良さに見えて、二人共が目を、こすりそうだった。
ローフィスは明るい唐色の上着で、いつものように軽やかに微笑んだ。けどオーガスタス同様、跳ねた明るい栗毛がやっぱりとても品良く、肩と胸の前で大きなウェーブを描いてまとまり、その青の瞳がとても鮮やかで、ひどく伊達男に見える。
ギュンターは長椅子に掛け、腕を背もたれに乗せてこちらを振り向いた。が、いつも目立つ金髪がまとまり更に輝きを増し、顔も艶やかでその美貌が際だち、紫の瞳が宝石のように煌めき、どう見ても、野獣に見えない程気品に溢れている。
瞳と同じ金糸を縫い込んだ濃い紫色の上着が彼を、落ち着かせて見えるからなのかもしれなかったが。
顔に巻き付きかねない緩やかにくねる金髪に囲まれた顔を少し俯けて揺らす彼の横で、椅子に沈み込んで座る、果てたディングレーが、二人の姿にその身を、肘掛けに捕まって何とか起こす。
ダーク・ブルーの瞳がその艶やかな顔の中鮮やかに瞳に飛び込み、くっきり整えられた黒い眉毛が品良く男らしく見え、白に弾く宝石を散りばめた殆ど黒に近い紺の上着の胸に、黒髪が流れるような艶を纏い、素晴らしい男前に、見えた。
が、ディングレーはまじまじと二人を見ると、言った。
「・・・随分綺麗に、されたな」
二人はとても男らしい彼にそう言われ、思い切りヘコんだが。後ろからテテュスが現れると、ディングレーは苦笑した。
「お前も、可愛くされちまったな!」
が、ファントレイユもレイファスも『絶対、嘘だ』と内心、怒鳴った。
ゼイブンが部屋の隅から姿を現す。洒落た銀糸の飾り模様の刺繍の施されたグレーに近い光沢ある上着を付け、淡い銀に近い栗毛が肩をふんわりと被い、ブルー・グレーの瞳がとても美しく見える。これがあの軽い男かと思う程、品良く整った美男に、見えた。
が、ファントレイユを見ると眉間を寄せる。
「・・・良く、ドレスを着せられなかったな・・・。
奴ら、これはいかが?とか言って、持ってこなかったか?」
ぶっきら棒にそう言うと、ファントレイユが寄り添うのを受け止めてしげしげと見つめ、ファントレイユは思い切り、ぶすったれた。
「それ、女の子みたいに綺麗だって意味?」
ゼイブンは一瞬ためらったが、つぶやく。
「そう言ったつもりだ」
ゼイブンはどう見ても粋な美男で、ファントレイユがそれをとても羨ましそうに見上げて、ささやいた。
「僕、やっぱり顔はセフィリアに似てる?」
ゼイブンは、頷いた。
シェイルとローランデがテテュスの後ろに姿を現し、シェイルの美貌は一気にその場を明るく変え、レイファスはつい感想を口にした。
「シェイルが居れば、女性は必要ないくらい華やかだよね?」
皆がつい、一番華やかで花のような可憐で小さいレイファスを一斉凝視し、シェイルは彼の横に来ると見下ろし怒鳴った。
「お前が一番、華やかなんだよ!」
レイファスは真っ赤な可愛らしい唇を少し開くと、そうか。と、がっくり首を折って項垂れた。
アイリスが、おもむろに室内に入って来る。
一斉に振り返る皆の出来を見回して頷き、
「彼らも心から満足した筈だ」
と微笑んだ。
皆の方も彼を、一斉に吟味した。
艶やかな焦げ茶の巻き毛をとても品良く胸に垂らし、濃紺の瞳の際だつ美男で、いかにも大公。と言った品格の塊のような彼は、喪中の濃紺の衣服を付け、やっぱり控えめな銀の刺繍が付いていたものの、いつもの彼よりほんの少しおめかししただけに見えて、ローフィスが代表してつぶやいた。
「さてはお前、暇が出来るといつも召使いどもにいいように、いじられてるんだな?」
アイリスは肩をすくめた。
「今日は人数が多いから、私は手抜きされて嬉しかった」
ディングレーが目を丸くした。
「それで、手抜きか?」
アイリスが吐息を付いた。
「お手入れ品目を省く言い訳を作るのに、毎度苦労するんだ」
皆が一斉に、項垂れてため息を吐いた。
つづく。
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