アイリスは階段を登り切り、二階の廊下に出ると、二人の男が振り返った。一人が先に進み、一人がかかって来る。
その先には子供達の寝室が、あった。
まずい・・・!アイリスは思い、剣を下げたまま突っ込み、相手が横から剣を振るのを体を振って避け、男の横を通り様その腹を思い切り、横から突いた。
ぎゃっ!と言う声で先に進む男が振り向き、アイリスは、刺した剣を男の脇から血糊と共に引き抜き様、咄嗟にその男めがけて突っ込んで行った。
男は慌てて剣を構えるが、アイリスは右から剣を振り入れようとし、男が右に剣を泳がせた隙に刃を俊速で返して、左から一気に斜めに、男の胴を、凪払った。
剣を振り切った瞬間、男の血しぶきが顔に飛んだがアイリスは歩を止め、ゆっくり剣を、下げた。
こと・・・!
音がし、廊下の先の、戸が開いて、テテュスが顔を見せた。
アイリスが、ガウン姿で顔と胸に血しぶきを受けて剣を下げているのを見て、目を丸くする。が、アイリスはテテュスを見て、うっとりとする微笑を浮かべた。
「休んでいて、いいから」
テテュスが、アイリスの握る剣が血に染まるのを見て、ささやいた。
「悪者?」
アイリスは、愛しいその自分に良く似た息子に、そっと言った。
「退治するから。任せて、ゆっくりお休み」
ローランデは、五人の男が外階段から屋敷の中に侵入した後を追って行った。
バルコニーに面した広間から、次の間へと駆け込む一番後ろの男の背に追いつき様、斬る。
ずどん・・・!と音を立てて男は前へ倒れ伏すが、すばしっこい男達はそれを見、戦うべき相手で無いとローランデの剣を避け、物陰に隠れては、次の間へと、散って行く。
ローランデは舌打つと、窓辺の月明かりが薄いカーテンから青く洩れ注す室内を進む。
次の間へ、入った一人の男に追いつき、迫り、一瞬進む様子を見せて男を後ろに引かせ、壁際に追いつめた。
後ろが壁で、後が無いと知った男は襲いかかり、ローランデがあっという間に間合いを詰め、その手に握る剣が横に綺麗な弧を描くと、男はローランデの横に倒れ伏す。
ローランデは直ぐに体を起こすと、もう一人の男を見つける。
その男はローランデを見、必死で逃げ場を探した。
ローランデは剣を下げたまま、静かに歩を進めて追いつめる。
男は横に扉があるのを見つけ、幾度もローランデに視線を送りながらそちらに飛び込もうと、ちらちら見やる。
が、ローランデがすっ!と剣を下げると、男はほっとしたように一気に走りかけ、うっ!と仰け反って、倒れた。
「シェイル」
ローランデが微笑むと、男の背後に立って居たシェイルが、背に短剣を受けて倒れ込む男を、覗き込む。
「まだ、居るか?」
ローランデは頷いた。
「後、二人」
シェイルは軽く頷く。
が、バタン・・・!と開いた戸が風で叩かれ、二人はしまった!と駆け出した。
つづく。