必死で、剣を交え様、その剣を横に滑らす。が、やっぱり体勢を止められずに、ぐらついて横に転ぶ。そしてまた・・・さっと身を起こし、オーガスタスを見つめる。オーガスタスが、待ち構えるように優しさすら滲ませて、その鳶(とび)色の瞳で微笑む。テテュスの剣を握る手に力が、籠もる。止めどなくその剣に気迫が漲り、増して行く。
がっ!
だがやはり、交え様突っぱねる、オーガスタスの剣の勢いに押され、後ろに吹っ飛ぶ。
それでも、テテュスの瞳には挫ける色は、浮かばなかった。
「・・・アイリスが、泣く筈だ。
テテュスはあの年であれだけ戦えるんだから」
ローランデもそっとアイリスの様子に、ため息を混じらせた。
「・・・父親なら喜んでいい筈なんだけどね」
ディングレーはローランデを見つめると、
「早く自立されると、寂しいんだろう?」
ローランデが、いかにも意外そうにそっとささやいた。
「・・・アイリスって、実は甘えん坊だったのか?」
ディングレーは肩をすくめた。
「テテュスの時だけが例外だと、思ってた方がいい」ローランデは解った、と頷いた。
アイリスは二人を見ると、眉間にきつく眉を、寄せた。
「どうして君達に甘えたいだなんて思うんだ?
だってテテュスはもの凄く・・・・・・・・・可愛いだろう?」
その馬鹿ぶりに、つい二人は言葉を無くし、アイリスに同意せずに俯いた。
ギュンターはだがファントレイユに振り向くものの、一瞬でファントレイユの剣をその素早い剣で堰き止め、またローランデに視線を送る。
ファントレイユがとうとう、ギュンターのその様子にキレて剣に殺気を昇らせた。
がっ!
再び叩き払うように剣でその突きを遮られ、ファントレイユはだが完全にその“野獣”に腹を立て、ギュンターはその殺気につい、マジで対応した。
つまり、とうとうファントレイユに凄まじい視線を、向けたのだ。
が、キレたファントレイユはもう相手に構ったりはしなかった。
“野獣”に睨み据えられながらもまだ、鋭い切っ先をギュンターに向けてぶつけ、ギュンターは五月蠅い蠅を払うように振り下ろす。
ファントレイユの気迫が増す。
とうとうその、子供にしては凄まじい気迫に気づいたオーガスタスがファントレイユに視線を送り、テテュスが、倒れた体を起こしてそのオーガスタスを見つめ、レイファス迄もがシェイル同様二人を、見つめた。
シェイルがつぶやいた。
「・・・戦意のあるギュンターに向かってあいつ・・・思い切り、キレてないか?もしかして」
レイファスはファントレイユがキレると、相手がどれだけ大きかろうが数が居ようがお構いなしだし、その時受けた痛みすら感じなく成る様子を思い出してつい、口をあんぐり開けた。
ファントレイユは見た事も無いくらい凄まじい気迫で、ギュンターはそれを押さえつけるように睨み返し、その剣は一応相手は子供だと、思いやってはいたものの、いつ堰が切れるか、はらはらものだった。
ギュンターは腹に据えかねるくらいイラだっていたし、ファントレイユはそんなギュンターに容赦無く思い切り、キレまくっていた。
つづく。