アースルーリンド外伝。テテュス編。『幼い頃』 83 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

16、剣の、稽古

だが、朝三人は目覚め、夕べ何の騒ぎも起こらなかったと思い、皆顔を見合わせてわくわく、した。
ローランデが剣を使う様を思い浮かべて。
はしゃいだ様子で寝台を飛び出す。
レイファスとテテュスの着替えは速攻で、一番遅れたファントレイユが、慌てて部屋の扉を蹴立てる二人の、後を追った。
爽やかな朝の光差し込む食堂で、アイリスが真っ先に立ち上がりテテュスを迎え、体を屈めて頬にキスし、朝の挨拶をした。
テテュスはそんなアイリスに、くすぐったそうな表情を見せて笑い、アイリスは彼が可愛くて仕方ないという父親の表情を見せて微笑み、レイファスとファントレイユを呆けさせ、見ている二人にアイリスは、うっとりのするような微笑を向けて、挨拶に代えた。
いかにも大貴族らしい、豪奢でどっしりとした雰囲気の食堂の中、ローランデとシェイルが窓から射す光にその輪郭をぼやけさせて、重々しい葡萄茶色の、手の込んだ飾りが随所に施された、20人は腰掛けられそうな立派な机の前に、二人並んで座っていた。
浮かぶような銀の髪と鮮やかなエメラルドの大きな瞳、そして小さな赤い唇をしたシェイルの姿は相変わらず息を飲む程美しく見え、だが隣のローランデは自分を制するような武人の静けさはあったものの、柔らかな栗毛を胸に流し、澄んだ青の瞳と色白の面立ちはそれは端正で美しいと、三人は思った。
シェイルはだがやっぱり口を開くと途端ぶっきら棒な口調で「よぅ」と三人に声を掛けて、その完璧な絵のような美しさをブチ壊した。
ローランデは本当に優しげな笑顔を子供達に向け、彼が子供好きなんだと、三人に解らせた。
レイファスが彼の横に掛け、その横がファントレイユ。テテュス、アイリスの順で席に着き終わると、ディングレーが、戸口から姿を見せた。
相変わらずとても素っ気ない様でだが、その黒髪の醸し出す秘やかな男らしさが滲み出ている姿は、女性達がつい、どぎまぎして意識せずにはいられないような男っぽさがあり、品格ある男前に見えた。つい、子供達が、男としての彼のそんな様子に初めて気づいてじっと見つめたが、ディングレーは彼らの視線に気づくと普段のように何気ない笑顔で「よぉ!」
と三人に挨拶した。
ファントレイユは、集まる仲間が違うとこれだけそれぞれの印象が違うのかと、つい大人達を見回した。
アイリスは、いつもはゆったりとした領主然としていて、エルベスといる時気品漂う貴人みたいな印象なのに、彼らといるととてもチャーミングな笑顔の、長身で体格のいい人懐っこい下級生、という様子に見えてびっくりした。
レイファスもテテュスも同様で、つい黙って皆を観察しているみたいに見えた。
そして・・・。ディングレーがアイリスの正面に座した時、戸口に二人が、現れた。
長身のギュンターが、素晴らしく目立つ男らしい美貌で金髪を揺らし、どこか猫科の猛獣のように秘やかでしなやかな動作で憮然と姿を現し、だがその後ろに、それより更に長身の、ライオンのように人目を引く大柄なオーガスタスが、ゆらりとその幅広の肩の上で跳ねた栗毛を揺らし、頭を戸口にぶつけ兼ねないすれすれで軽く頭を下げ、見つめる一同に、親しみある笑顔を浮かべて見つめ返した。
二人が並ぶ様は草原の豹とライオンに見え、そのゆったりとした野生の迫力に三人は目を、丸くした。
ギュンターは不機嫌な表情でディングレーの横に座ると、正面に座るローランデを恋い求めるように真っ直ぐ、見つめる。
その紫の瞳が宝石のようで、三人はつい、その透ける綺麗な瞳に見惚れた。
オーガスタスの、ギュンターの横に座る様子はゆったりとしていて、その広い肩幅の隙無く引き締まった立派な体格は頼もしげで信頼感に溢れ、男達の視線を引き付けた。
つい、ファントレイユがその立派な騎士達が居並ぶ様子に、感嘆のため息を洩らす。教練に行けばこういう男達がたくさん居るのかと思うと、自分もその一員に成って、彼らに仲間と認められたいと思ってると告げたテテュスの気持ちが、凄く解った。
レイファスも言葉も無く、その大きく強そうで立派な男達に見惚れていた。
テテュスとて、これだけ男達が集まるのは初めての事でつい、彼らの醸し出す、普通の男達とは違いゆったりと見せながらいつ不測の事態が起こっても直ぐに対処出来るような隙の無い様子に、息を飲んだ。
「・・・格好いいね・・・」
レイファスがつい、隣のファントレイユにこっそり感想を洩らす。が、ファントレイユも同感のようで、頬を染め、彼らに刺激されたのか、とても少年らしい表情で、こっくりと頷いた。
だがレイファスの隣のローランデは、そう言う彼らに振り向くと、どう見ても可憐な美少女に見えるレイファス。人形のように美しいファントレイユ。そして美少年だがゆったりと落ち着き気品ある、一番少年らしいテテュス達の方こそ、普段ではお目にかかれない子供達だと思っているのに。と、隣のシェイルに肩をすくめて見せた。
が、本人達の自覚なんてそんなもんだと、彼ら同様、目立ちまくって他人の注目を浴びるのに慣れたシェイルは、親友に肩をすくめ返した。
だがギュンターの視線がローランデから外れず、ローランデはつい彼を避けて俯いた。
アイリスはテテュスの横で息子と居られる幸せをその微笑みに浮かべていたが、ついギュンターの不機嫌な“気"がその場を覆い尽くすのに気づいて、顔を下げた。
つづく。