「・・・・・・どうすると、思う?」
ディングレーがそっと、問う。五人はテーブルから離れた、すっかり暮れた庭で立ち話をしていた。
屋敷の豪奢な窓から、濃紺に包まれた景色の中に、柔らかな黄色の灯りがもれる。
オーガスタスがローランデをそっと、見た。
「サイアクなのはあいつがこらえきれずに、始める事だ。子供の前だろうが」
ローランデが、瞳を見開くがオーガスタスが、促した。
「・・・無いとは言えないだろう?」
ローランデは真っ赤になって俯く。シェイルが素っ気なく言った。
「そんなマネしたら、俺が短剣を投げてぶっ殺してやる」
アイリスがそっと、聞いた。
「ローランデとくっついてるのに?」
シェイルは肩をすくめた。
「あいつは絶対ローランデを庇うに決まってる。あいつが弾かない限りは、当たるさ」
ディングレーとオーガスタスが、顔を見合わせ思い切り下を向いた。
「もっといい案は?」
ディングレーに勝手に却下され、シェイルは睨んだ。
ぷんぷん怒ったシェイルが、テーブルに戻って来る。
生徒のレイファスに見つめられ、二人の子供に顔を向ける。
ギュンターがその端に座り、悠然と腕組みして腰掛けていた。
「どうなったの?」
レイファスに問われ、シェイルは手の上に顎を付き、不機嫌に唸った。
「獰猛な野獣の扱いに、慎重を期すようだ」
テテュスとファントレイユが顔を見合わせた。
レイファスはつい、ギュンターを見つめた。
シェイルがギュンターを睨め付け、口を開いた。
「・・・誰の事か解っていても、言う事は無いようだな?」
ギュンターは顔を上げ、その銀髪の美青年を見つめた。ローフィスとディアヴォロスの前でだけ素晴らしい恋人になる、いつも素っ気ない態度で迂闊に近寄ると攻撃的な男に、彼は唸った。
「・・・だから?言う事なんか別に無い」
テテュスがつぶやいた。
「僕達、立派な騎士がたくさん来てくれて、凄く嬉しいんだけど・・・・・・」
テテュスの言葉に、シェイルは彼らの気持ちに気づき、真顔に成ってつぶやき返した。
「・・・悪いな。ゴタついて。
だが立派な騎士に見える男でも時と場合によっては危険極まりない場合が、ある。
アイリスはお前らの事が凄く大事だから・・・」
レイファスは頷いた。
「腕っぷしが強いと気が大きくなって、平気で乱暴を働く奴でも騎士然としてるから、見分けが必要だって」
シェイルは頷いた。
ファントレイユが、ギュンターも本当にそうなのかといぶかって、つぶやく。
「でもギュンターはとても、格好いい騎士に見える」
ギュンターが彼を見つめるがシェイルが素っ気なく言った。
「だが中味は野獣だ。戦闘で味方だと心強いが。普段の扱いには慎重さが居る」
ファントレイユがそっと訊ねた。
「・・・喰い付くの?」
テテュスもレイファスも、会ったばかりの騎士に対して、かなり失礼な言い方だと感じた。が、ギュンターは平気で、大丈夫だ。お前らに危害を加える気は無い、と言うように、肩を揺らしてつぶやく。
「俺がローランデと一緒で、したい事は一つだ」
シェイルが睨みすえた。
「子供の前でもか?!」
ギュンターは肩をすくめた。
「世間を知る、いい教育になるだろう?」
シェイルはもう、唸り出しそうにギュンターを睨んだ。
「・・・お前の事だからどうせそれは冗談じゃ、無いんだろう?」
「どうして冗談を言う?」
つづく。