アースルーリンド『ファントレイユとの出会い』地方護衛連隊長会議8 | 「アースルーリンドの騎士」

「アースルーリンドの騎士」

オリジナル  で ファンタジー の BL系小説。
そしてオリジナルのイラストブログ。
ストーリーは完全オリジナルのキャラ突っ走り型冒険ファンタジーです。
時折下ネタ、BLネタ入るので、年少の方はお控え願います。

アイリスが寄る気配に、アーシュラスが顔を、上げる。
「決闘は・・・!終いか!俺が、負けたとかほざかないな?!すぐあいつを、呼び戻せ・・・!」
汗で乱れた金髪が、黒い肌の額に降り、アイリスは彼を見つめて、ささやいた。
「君は、解ってない。あのまま止めなければギュンターは君の臓腑を、破っていた」
アーシュラスは、随分労るようなアイリスを見上げ、怒鳴った。
「・・・俺が、死んでいたと?!」
アイリスは頷いた。
「あれで相手の急所に詳しい上に、どう叩けば倒れるかも、知り尽くしている。剣で戦うより、危険な相手だ」
アーシュラスは体を起こそうとして、ギュンターの殴った腹の一カ所に痛みを感じて顔を、歪めた。
「内出血、しているかもしれない。医者を呼ぼう」
アーシュラスはだが、アイリスの腕を、掴んだ。
「・・・これ位は、平気だ」
アイリスはそれでも心配そうに、告げた。
「本当に?」
アーシュラスは頷いた。
「自分の体だし、これくらいひどく痛めた体験は幾度も、ある」
アイリスは、頷いて告げた。
「マリーエル相手には、代理を立てろ」
アーシュラスは、アイリスの腕をきつく、掴んだ。
顔が、痛みと怒りに、歪んでいた。とても、悔しいようだ。が、アイリスは尚も言った。
「解ってるんだろう?今、激しく動き回ったら、本当に臓腑が、破れるぞ」
アーシュラスは、はっ!と息を吐き出し、アイリスの腕を放すと腹にその手を、当てた。
「手当てはこちらでする」
侍従の一人がそう言う。アイリスは地方毎にある、独特の治療法を、知っていたので、頷いた。
が、暫くして侍従の一人が、ゆらりとその長身を揺らし、柵を避け、中央に姿を、現した。
アイリスが瞬間、顔を、揺らす。
ドーディン・・・。
アイリスは瞬間、心配げにマリーエルを、見つめた。が、怖じる様子無く彼も、上着を投げ捨て、中央に寄る。ダーディアンは胸にマリーエルの上着を降らされ、顔を歪めてそれを受け止めた。
アーシュラスの懐刀。刺客。・・・そしてアーシュラスを、大公に押し上げた人物だった。
アーシュラスと同様、鋭い顔つきをしたその男は、肌の色の黒さも手伝って、ぞっとする雰囲気を醸し出していた。
アイリスは、マリーエルを見つめた。もしかするとアーシュラスより、手に負えない相手かも、しれないと。
だが、マリーエルは気にする様子は、無い。
相手が前に立つと、あまりにも彼を有名にした、立ってるだけで相手を威嚇する。と言われた、凄まじい“気"が、噴出し、その場を凍り付かせた。
ギデオンがつい、伝説を作った使い手で、かつて剣の講師だった男を、見た。
ギデオンが教練の講師をしていた時彼は一度だって、あれ程の“気"を、見せた事が無かった。ひよっこ相手には、無理だろうと侮られていたと知り、ギデオンは喰い付くように、マリーエルを見つめた。
アーシュラスとは、逆だった。相手の出方を待ったのはドーディンで、先にかかっていったのは、マリーエルの方だった。
だが、拳を直ぐに振るう訳で無く、足を使って間合いを詰める。相手が引くと、逃げる方向にすかさず拳を、振り入れる。ドーディンはそれでも、二発を避けた。
ダーディアンがその戦法に、唸った。
「・・・あれは、嫌だな。凄く、気が、散る」
ウェラハスは観察し、つぶやいた。
「マリーエルは、伺ってるな」
ダーディアンが、尋ねた。
「何をだ?」
「自分の“気"で、相手の動きをどれ程縛れるかを」
ダーディアンは、頷いた。
「・・・初めて見たが、目に、見えるようだぜ」
その場が、寒くなるような“気"だった。
だが当の本人、マリーエルは灼熱のように、見える。
冷たい、焔。
ギデオンはそれでも、かつての師の、戦いぶりに、夢中になった。
つづく。