領地の外れの小川で、レイファスもファントレイユも素っ裸で、はしゃぎ回った。ファントレイユは幾度もレイファスに水を、掛けたし。浅いと言っても、彼らは五歳だったから、水に浮かぶ事も、出来た。
浮いていると青空がとても、綺麗だった。
木々の葉の間から、きらきらと陽光が煌めく。
風がさやさやと吹き渡る。水は冷んやりと、体に染み渡る。
「気持ちいいだろ?」
レイファスが言うと、ファントレイユが返事した。
「とても」
レイファスはファントレイユを、見た。
あれをしちゃ、駄目だとかを全部聞いていたりしたら、こういう気持ちよさとか、楽しいとか、わくわくした事を全部、諦めてるようなものだと、言った言葉が、身に滲みて解った様子だった。
髪と体を乾かす為に、木にも登った。
「・・・・・・・・・・・・わぁ・・・・・・」
ファントレイユの声に、レイファスが振り向いた。
「見晴らしが、いいだろう?」
風を受けて濡れた髪をなびかせ、ファントレイユは日頃見ていたものが足下に小さく見える、広がる景色に、頬を、紅潮させて、頷いた。
ようやく、人形に見えないファントレイユの姿に、レイファスはそれは、安心したようだった。
4 ある日の、出来事
領地の、ファントレイユの友達に、6つも年上の、アロンズが、居た。彼は執事の息子で、暗い栗毛の、青い瞳の、大理石のような白い肌の、とても利発そうな子供で、彼らよりようんと背が高く、大人びていた。いつも地味な身なりはしていたが、とても綺麗な、神話の若くりりしい神様のような顔をしていて、ファントレイユは彼がいつも優しいので、とても懐いている様子だった。
彼の年の離れた妹は、ファントレイユ達より2つ年下で、いつも、アロンズにまとわりついて居た。あまり顔立ちのいい女の子じゃなくて、赤毛でそばかすだらけで、神秘的な美男の兄と同じ血が流れてると思えなかったが、ファントレイユもアロンズも、とても彼女を、大事にしていた。
彼女は二人に優しくされると途端、無邪気に微笑む。
それがとても可愛らしくて、レイファスも納得が、いった。
だがアロンズは毎度、レイファスの、とても愛らしい美しさに見とれていた。
アロンズはそろそろ、異性を意識する年頃だったし、実際女の子に、モテていた。だがどの女の子よりもそれは可愛らしく可憐なレイファスの、一際人目を引く美貌には、男の子だと、解っていても、必ず頬を染めて見とれた。
レイファスは気づいていて、それはにっこり、微笑んでみせたりするからファントレイユは、彼が何か、企んでいてアロンズに愛想を振りまいているなと、感づいた。
レイファスが、聞いた。
「アロンズはもう大きいから、一人で村に買い出しに行く事も、出来るって本当?」
妹のサイシャに、聞いたんだなと、アロンズは笑った。
「でも、本当に伝言くらいだ。支払いとかの、お金は持たせて、貰えないんだ」
ファントレイユもレイファスも、セフィリアにそれはきつく、領地の外出を、禁止されていた。
でも領地内はそれ程広く無かったし、セフィリアや召使いに見られず暴れ回るにはそれは、苦労した。
彼らの姿が見えると、二人とも途端に、騎士ごっこの木の枝を、引っ込めて隠さなければならなかった。
外れの小川や大木の辺りに長く居ると決まって誰かが、彼らの姿を探しに来る。
レイファスはもう、その監視体制の厳しさにうんざりの様子で、領地の外へ冒険しに出かけたくてうずうずしてるのが、ファントレイユにも解っていた。
つづく。