部活でヘロヘロになり、塾の勉強に追われ、夕食に1時間もかかり、風呂ものんびり入り、
もともと時間の使い方がへたくそで、TVも見せてないのに毎日時間が足りない上の娘が、
ピアノの練習不足で先生にまたしても怒られて帰ってきました。
娘のピアノの先生は、ピアノの先生・・・どころのお人ではなく、
「ピアニスト」であり「演奏家」であり・・・つまり、普通の先生ではないので、
レッスンのレベルが非常に高く、娘は、毎回、アップアップの状態のようです。
とうとう今回、
「一度、お父さんとお母さんと話を・・・・。」
先生もそうおっしゃったそうな。
しかし、私、本音を言うと・・・・・娘は私の子供ですから・・・。
この私の子供ですから、先生のようなピアニストは、絶対なれんと・・・・ひそかに思っています。
大体、娘と先生では、迫力が違う。
ある分野で突出した能力を持った人と、私のような器用貧乏タイプの娘とは、
もともと人間のタイプが違います・・・・向き不向き・・・・というやつかもしれません。
今から20年近く昔のこと・・・・。
私は、東京である女性のことが好きになり、正直、結婚したいと思いました。
そんな時、彼女のお父さんと話をする機会があったのですが、
お父さんが私にこうおっしゃった・・・・。
「G君は今、建築設計の仕事を始めたそうだね。」
少し前まで、音楽に夢中だった私ですが、この頃、方向転換し、
建築の勉強を始め、設計事務所に勤め始めておりました。
「娘の話では、多分、君は、建築の仕事も、きっとすぐに身につけてしまうと思う。
しかし・・・・だからこそ、余計に心配なんだ。」
「・・・・・・(意味がわからず、沈黙する私)。」
「つまり・・・・その・・・・なんだ?・・・・よく言うじゃないか・・・・器用なんとか・・・。」
「器用貧乏ですか?」
「そうそう。器用貧乏。
すぐに建築の仕事が身についてしまうと、今度は、また別の事がやりたくなるんじゃないか?
でも、男は、一つの仕事をずっとやり続けないとだめだ。
そのことが・・・・唯一心配だよ。」
こうおっしゃるお父さんだったのですが、この時点で、私は既に、建築設計だけでなく、
不動産の仕事も考えていました・・・・つまり、お父さんのおっしゃる通り、とても、
一つの仕事だけを続けることができる人間ではなかったのです。
この時、私は、最後まで、口先だけ調子よく、
「建築設計の仕事しかしません。」
と、嘘もつけず、かといって本当のことも言えず、ひたすら黙っていました。
その沈黙から、お父さんは、きっとその後の私を、察したに違いない・・・・。
ただ、個人的な意見ですが、器用貧乏がいけないかと言えばそうではなく、
現在、私は、器用貧乏ゆえ、他の方々ができない仕事をしています。
建築関係の知り合いは、
「Gさんはいいね。
建築だけだと仕事は限られるけど、不動産もできるから・・・・。」
と、言ってくれます。
現に、建築一本では、この時代、非常に厳しいようです。
結局、自分の性格が活かせる仕事に就けばいいのではないか?
自分の短所をカバーして長所を活用できる生き方を選べば、それはそれでいいと思うのです。
実は、私だけでなく、私の父も祖父も・・・・皆、器用貧乏タイプで、
これは、どう考えても・・・遺伝かな?・・・・と、つくづく思います。
娘は、箱入り(?)期間が長かったため、体力はありませんが、何でもそこそこはやります。
しかし、「その道の大家」には、性格的には絶対なれん・・・・と思うのです。
私は、今のピアノの先生に指導していただいている事は、娘にとって、
自分を悟るきっかけになってもらえれば・・・・と思っています。
つまり・・・。
「ピアニスト、演奏家になろうと思ったら、先生のような才能と努力が必要だけれども、
はたして自分にそんなちからがあるんだろうか?
自分はそういう人生を送れるタイプなんだろうか?」
本物を身近に見れるんですから・・・・娘にもいつかはわかるはずです。
と、同時に、そんな先生にずっと指導していただくことは、たとえ、先生のようになれなくても、
自分の人生に必ずプラスになると信じています。
先生の今までの人生経験も含めて・・・・・もっと大人になれば、
色々勉強になると思いますよ・・・・。
自分とタイプが違う故に・・・お父さんなんか先生のこと・・・素直に、尊敬してしまいますけど。