ヨルダントイレ事情 アラビートイレとは | アーディで行こう

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「普通」を意味する便利な言葉、「アーディ」 地元の足として、とことこ走るバスなんかを「アーディ バス」、エジプトではエアコンなし列車を「アーディ」 そんな方法での旅を紹介しましょう。
え、そんなの自分には無理だって? 大丈夫。「アーディ、アーディ」

アラビートイレって聞いたことありますか? 旅先のトイレ事情は、なかなかわからないもの。
和式に似ていて非なるもの、アラブ圏(特に田舎の)在住者の悩みの種にして愛すべきアラビートイレを大解剖です。

アーディで行こう-アラビートイレ$アーディで行こう-アラビートイレ シリア駅これがアラビートイレだ!
アラビートイレとは、だれが名付けたか、アラブ圏にある洋式トイレ以外の、しゃがんでする方式のトイレのこと。ちなみに同じ形式のトイレはトルコではトルコ式トイレ、イランではイラン式トイレと呼ばれることが多いですね。「◯◯式」なんてしゃちほこばった言い方よりも、活用して
عربيアラビー」と形容詞にした方がおしゃれです。なお、英語ではArabic Toiletとなるので、「アラビー」というのはアラビア語、日本語共通?の形容詞形ですね。

和式に似ているが、しゃがむ向きは逆
右の写真がそのアラビートイレの典型例。
和式トイレに似ていますが、アラビートイレはどんなところでも水洗です。水タンクはたいていこの写真のように高いところに取り付けられており、そこから下がる紐を引いて水を流します。
また、和式と決定的に違うのは、しゃがむ向きです。吸い込み口がある方の上にお尻が来るようにするのは同じなんですが、写真をよく見てください。奥に吸い込み口が来ています。アラビートイレでは、日本の和式とは反対向き、たいていは入口に向かってしゃがむことになるのです。
右上の写真は、私の勤務先の傘下だった役所のトイレ。職場のトイレとしてはずば抜けてきれいで明るい。2008年から観光案内所もこの庁舎に入ったので、外国人旅行者もここを使うことがあるかも(でも1Fの方を使うかな。このトイレは2F) 実は、ヨルダン、カラク城の入口前にある考古局事務所(今はチケット窓口でもある)です。
汚い?トイレもお見せしましょう。2枚目の写真は、シリアの鉄道駅のもの。公衆トイレは実際だいたいこんな感じです。床の汚れは靴が持ち込む泥によるもので、これでも汚物が付いていないだけましです。

しゃがむ向きを間違えると悲劇が襲う
さっきからやたらしゃがむ向きにこだわっていますが、反対にしても流せばいいじゃないか、と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、必ず吸い込み口の上に、ピンポイントでお尻をセットすることをお薦めします。
なぜなら、アラビートイレは一般的に水流が日本ほど強くはなく、しかも便器の他の部分はほぼ水平なので、そこに着いた「大」を押し流すほどの水量ではないのです。
また、大量に「大」をするときは、こまめに水を流しましょう。アラビートイレは管が細かったり、なぜか管は太くても入口が狭くなっていたりして、大量の「大」をいっぺんに流そうとすると詰まります。

詰まりやすいので、こまめに流そう
また、公共のトイレよりも、一般家庭でより詰まりやすい傾向が顕著ですので、どこかご家庭におよばれしたときは、トイレで「大」をするときは細心の注意を!
私の知人の家には、しゃがんだ時に目に入るドア裏側に、そのトイレの特徴と流し方が図入り!で貼られ、決して詰まらせないよう(そして知人がその始末をせずに済むよう)に注意喚起されていました。彼によると、そのトイレには床下に「ミラクルスポット」があり、流した際にブツがそこまで達しない場合は、数分後にブツが便器上に帰還するという、まったく迷惑な構造になっているとのことでした。さすが、マアーンはひと味違う。って、町の問題とは違うか。

$アーディで行こう-トルコ鉄道トイレアーディで行こう-イランの列車トイレ紙はない。水で洗い清めよう
アラビートイレで旅人が困惑するのが、紙を使わないこと。基本的に、自分の左手を使い、水で局部を洗い清めるのです。
トイレには、かならず水容器が置かれています。最初の写真のトイレでは、左側の壁にあるポットのようなものがそれ。右写真のトイレでも、左側の壁下に同じような容器と蛇口がありますね。
ことを為す前に、まずはこれに蛇口から水を注いでおくのがポイント。トイレによっては、しゃがんだ位置から水を汲めないことも多いので。
この容器ですが、右写真でよくわかるとおり、じょうろのような注ぎ口が必ずついていますので、把手を右手で持ち、背中側からお尻に水をかけ、左手で流れてくる水を使って局部を洗うというやり方になります。いきおいよく傾け過ぎると、無駄に水を使ってしまい洗っている途中で水切れになってしまいますし、ビビりながら流しても今度は水勢が足りずに左手に水が来ないということになってしまいます。訓練あるのみ。
また、使用後の左手はきちんと洗いましょう。アラビートイレには手洗い場があります。どんな田舎の一般家庭でも、必ず石けんが備えてあります。右写真でも、赤色をした液体石けんが見えますね。

シャワーもある
紙を使わないなんて、と思う方もいるかもしれませんが、世界中で見れば紙で拭く行為はマイナーな方。日本でも一般家庭ではシャワートイレが主流ですね。そういった意味では、アラビートイレは一種の手動式シャワートイレだと思えばいいわけです。そして、今ではじょうろを使わず、ホースが備えられているトイレも多いです。右の写真2枚目でホースが見えますね。これを右手で持ち、先端を局部に向けて(汚いので当ててはいけませんよ)、蛇口を開くわけです。2枚目の写真のように、このホースが床にだらんとなっていると、なかなか触る勇気は出ませんが。
ちなみに、右上のトイレは、トルコの列車のなかで、右下がイランの列車のなか。蛇口やシャワーのレイアウトの関係で、どちらも部屋の奥に向かってしゃがむことになります。
列車内トイレは、まれに水が切れていることがあるので、先に試してみましょう。トルコやイランの長距離列車は、主要駅で停車中に水補給をするので、そんなに水切れはありませんが、シリアの長距離列車、例えばダマスカス~カミシリ夜行なんぞは要注意です。

持参した紙で拭く場合は、使用後の紙はゴミ箱へ
どうしても左手は使いたくない、紙で拭きたいという人は、紙を持参しましょう。
ただし、拭いた後の紙は便器に流すのではなく、備え付けのゴミ箱へ。
前述のようにアラビートイレは非常に詰まりやすく、紙は大敵なのです。
アラブ圏にもあの丸まったトイレットペーパーはあります。普通にスーパーや雑貨店に売っていますし、ホテルや高級レストランならたいていトイレに常備されています。