コロナですっかりご無沙汰なのだが、以前はよく職場のメンバーでカラオケに行っていた。私自身は歌は苦手でとても他人様に聴かせられるものではないのだが、メンバーはプロか⁉️と思うほど歌が上手い人が何人もいて歌うより、飲みながらみんなと盛り上がるのが楽しかったのだ。

M君はメンバーの中でも一番若かったが、カラオケ部長と呼ばれるほど歌が上手かった。歌だけでなく彼は何でもスマートにこなすタイプで、ジムで身体を鍛えて仕事も完璧にこなしていた。それだけでなく、私がドラえもんの似顔絵を描くのにハマっていた時は、誰よりも素晴らしい絵を描いた上、「これもらってもいい?」と言った私にスネ夫とジャイアンを書き足して渡してくれたりした。そんなM君がカラオケで選ぶ曲は懐メロが多く、私達昭和世代を熱狂させた。「なんでこんな曲知ってるの⁉️😍」と聞くと「母が聞いていたので」という回答に軽くショックを受けはしたもののメンバーが20代前半から40代後半まで幅広い年代の割にカラオケはいつも盛り上がっていた。

ある日の事だ。誰かが沢田研二の『勝手にしやがれ』を歌った。私達はジュリー‼️と叫びながら、当然のように最後の『あ〜あ〜♪』の場面では全員両手をあげて音楽にあわせてユラユラと身体を揺らした。そう!M君をのぞいては…。

えっ⁉️とは思ったが、盛り上がってる最中に問いただす事も出来ず、歌がおわったとたん私は立ち上がってM君を指差し

「ちょっと!なんでみんなと一緒に手をあげへんの⁉️ここはお約束やろ‼️」と詰め寄った。

するとM君は真顔で

「だって生まれてませんもん」と冷静に言い放ったのだ。

「えええーっ⁉️」

若いとは思っていたがそこまで⁉️

カウンターパンチをくらった私は、言い返す言葉を失い周囲から憐憫の眼差しを向けられながら、しおしおと椅子に座ったのだった。