『黒水仙』・知性 清廉 高貴 風格 デボラ.カーの魅力満開 ・・1947年作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。






みなさま、こんばんは。

毎日ご訪問くださり
ありがとうございます。

一昨年の9月に  
吐夢の懐かしい名画座として二度目のブログを再スタート
しましたが、

今夜は デボラ.カー主演の(黒水仙)です。

カラー映画というものが今、当たり前であるが、
テクニカラーというものが完成されるまで
色々試みられたようです。
その辺のところはあまり詳しくないので述べられません。

ただ、最初は赤と緑の二色法から、
赤、青、緑の三色を重ね合わせたもので確立されたのが
どうも始まりのようです。

デイズニーの≪森の朝≫や≪虚栄の市≫というのが
最初に作られていたようです。

そして、≪風と共に去りぬ≫でこの三色法が
確立されたということです。

ただ、これらのカラーは
メリハリがはっきりとした
いかにも
カラーでございますというものであった。

そんな中で、
ジャック.カーディフの登場は
カラー映像に新風を巻き込んだと言ってよいでしょう。

今ではジャックはカラー映像の神様と思われている人です。

さて、

デボラ・カーファンのみなさま、お待たせしました。


デボラ.カーと言えばもう、
(黒水仙)で決まりでしょう。
1946年のジャック・カーディフの撮影による
伝説の作品ですね。

個人的には(めぐり逢い)や、(お茶と同情)も好きですが。

作品の素晴らしさもさることながら
カーディフのすばらしい撮影技術による
映像をただただ堪能する作品です.
作品については後で述べることにして、
デボラのことを少し、語りましょう。

エレガント、知性、気高さ、母性、とまあ
彼女の魅力はファンに言わせれば
こんな言葉だけでは足りないかもしれませんね。
゛深窓の令嬢゛とか゛良家の子女゛という表現がピタリかしら。

 

凛とした中に、高貴さを醸し出している英国美人デボラのその魅力は

今夜の作品<黒水仙>に余すところなく発揮されている・

父親の世代の方ですが、その当時はバーグマンかデボラ.カーかというくらいに
素敵だったそうです。
英国映画界で数本撮った後
ハリウッドに招かれ、英国と米国の両方で
活躍した人である。

1921年、スコットランド生まれ。
バレー学校で基礎を学んでいる時に
野外劇に出演しているところを、英国の監督に見出され、
レックス・ハリスンの相手役としてデビュー・

ハリウッドの仕事も含めて初期の頃数本の映画は日本未公開。

その端正な容貌を日本のファンに見せたのが
今日紹介する≪黒水仙≫である。

この作品にはインド人の女の子に扮する
18歳のジーン.・シモンズも登場。

シモンズも鮮烈な印象を与えた作品である。

デボラは、その後≪白い砂≫、
≪クオ・ヴァディス≫、≪キング・ソロモン≫、などの
史劇に出演、
≪めぐり逢い≫では多くの女性ファンを泣かせましたね。

ニュヨーク映画批評家大賞は三回も受賞しているが

オスカーのほうは度々のノミネートを受けながらも
ついに一度も手に出来なかった。

みなさまは≪地上より永遠に≫や
≪王様と私≫でもお馴染みでしょう。



今夜は≪黒水仙≫を紹介します。
まずはストーリーから。

製作、監督、脚本・・・マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
撮影・・・・・・・・・・・・・・ジャック・カーディフ
  1946年   英国作品

出演 シスター・クローダ ... デボラ・カー
    デイーン         デヴィッド・ファーラー
    シスター・ルース    キャサリン.バイロン
    シスター・フリッパー  フローラ.ロブスン
     王子          サブー.
    娘カルチ        ジーン・シモンズ

イギリスからやってきて奉仕活動を行っている
カルカッタの尼僧院に
ヒマラヤ山脈の奥地モブから一通の手紙が来た。

モブの寂れた宮殿で現地の人々への奉仕活動をしてもらいたく
尼僧をよこして欲しいという依頼の手紙だった。

デイーンという英国人からで、
彼はずーっとここで土地の領主と親交をもち
ここに病院や学校を作りたいと思っていた領主の
遣いのようなものだった。

今までにも修道士達がやってきたが、
半年と持ちこたえない

過酷な土地であった。

村人は高山の谷間に住んでいるが、
ここモブの旧い宮殿は
断崖絶壁に建っていて、
風雨ともなれば寒さと強風で
身が持たないほどであると言う。

荒れた土地、言葉も通じない。
その上無知な村人達に混じって
尼僧たちは何処まで堪えられるのか・・・

選ばれた5人の尼僧たち、

修道院長は弱冠26歳の
シスター・クローダ(デボラ・カー)。

明るい尼僧、真面目な尼僧と選んではいたが、
ひとりの尼僧、ルース(キャサリン・バイロン)は
少し精神を病んでいる被害妄想癖のある人だった。

領主の料理長の息子6歳になるジョゼフは英語も堪能で
尼僧たちの手助けをするために領主が遣してくれた。

初めて大きな責任を持たされ、
希望に満ちてやってきたクローダだったが、
シスターたちは厄介な事はすぐに
ディーンさん、ディーんさんで

誇り高いクローダは取りまとめるのに手を焼いた。

一人の尼僧は畑を耕していていつも祈りを忘れた。

遠くヒマラヤの山を見ると
尼僧になる前のことを思い出してしまうという。

クローダも時々昔のことを思い出した。

ヒマラヤのこの奥地の自然はそういった神秘が彼女達を人間に
戻そうとするかのように。

聖者と呼ばれる老人がいて、いつも谷の崖ブチに座っている。

旧い宮殿の修理、水の問題、皮膚病の問題と次々に
問題は起こり、シスターたちは次第に疲れていく。

ディーンが最初に雨期までは持たないだろうと言ったが
確かに肉体的にも精神的にも過酷であった。

シスター・ルースはそんな中で
ディーンに持ってはいけない感情を
持ち始めた。
しかし、ディーンが長であるクローダに
話をするために勘違いをし、
嫉妬の炎が燃え上がってくるのである。

その上、
村人が連れてきた赤ん坊の病気に手を施すことが出来ずに
村へ帰したが、
赤ん坊が死に誰も来なくなった僧院は誰もが殺伐とした
気持ちになっても仕方がなかった。

ある日、
ルースはジョゼフが運んできた自分あての郵便物を
クローダの検閲無しに
ジョゼフからもぎ取った。
カルカッタに注文したものだといって。

ディーンが16,7歳の女の子カルチ(ジーン・シモンズ)を
連れてきた。
無知で着飾ることしか能のない娘だが
色気を振りまくことだけは知っていた。

その娘がある日、蜀台の鎖を盗んだところを
領主の王子が助けたことで
二人は恋に落ちた。

クローダは過去の生活を思い浮かべることが多くなった。

ディーンと話すついでにふと漏らし、
泣いているところを見たルースは鬼のような形相になっていた。

数日後、ルースの部屋へクローダが訪れると鍵がかかっている。
押し入った彼女の前に私服に着替えたルースが不敵な笑みを
たたえ、立っていた。
カルカッタに注文したのはこの衣服だったのだろう。

僧院を出るという。
制止するのも聞かずに彼女は手鏡を持ち、
唇にルージュを引いて
そこを出て行った。

彼女はディーンの家に行った。
愛を打ち明けたが受け入れない彼に
クローダが好きなのね!と逆上した。
誰も愛してなんかいないというディーンの言葉にも
聞く耳は持たないルース。

とりあえず、僧院へ一度帰ることにしたが、
ルースは何かを決意したようであった。

絶壁の端にある鐘を撞いていたクローダに
般若のようなルースが近づいた。

彼女は押され、鐘の紐にしがみついてぶら下がった。
下は断崖絶壁だ・・・・

しかし、不敵に笑うルースは足を踏み外し、
真っさかさまに落ちていった。

シスターたちはもう、精神も肉体も限界だった。

結局、彼女たちはカルカッタに戻ることになった。

ディーンは”やはり雨期まで持たなかったな!”と言って
クローダに握手を求めた。

その時、大きなハスの葉にぽたりと雨粒が落ち始めた。
ぽタリぽたりと落ち、それは大粒の雨に変わった。
霧のように霞むラバに乗ったクローダを見送るディーンの顔に
滴り落ちる雨粒をぬぐうこともなく
彼はじっと見つめつづけた。


★、カーディフのカメラはすばらしい!!
≪老兵は死なず≫で
彼の最初のカラー映像に始まり≪天国への階段≫、
そしてこの≪黒水仙≫で最高の技術が結晶され
すばらしい映像となった。

尼僧の衣服はあくまでベージュががった白衣。
その上に重なるブルーのカラー・
前半はまるで押さえたパステル調で光と影を映し、
春の満開の花はゴッホの絵のように、
そしてオレンジ色の黄昏のヒマラヤ、
青くほの暗い石の建造物の中に光る黄色いローソク。
朝焼けのヒマラヤ。雪もブルーに霞み、ラストの雨のシーンは
まるでモネの絵画をみるような見事な映像。
恐らく私の中では
雨のシーンをこれほどすばらしく映した作品は
これが最高だと思っています。

デボラの顔だけでなく、
尼僧のメーキャップはその白衣に浮き上がらないように
唇もベージュがかっている。

それがあのルースがクローダをあざ笑うように
真っ赤な口紅を引くシーンで鮮やかに効果を増し
ドキッとするのである。
すべて計算されたものでしょう。
床から手へとカメラが動いてルースの
顔のアップへと続くシーンでは、
彼女の鬼と化した表情をアップで映す。




デボラは尼僧姿がよく映る。

笑うこともないこの尼僧の誇り高さは
気高くもあり、棄てた過去の痛手も
表すかのように。。。。



ジーン.シモンズのデビューといっても良いこの作品での
鮮烈さは
デボラの高貴なまでの美しさと共に
永遠に残る名作でしょう。



ジーンシモンズはヴィヴィアン.リーの再来といわれ、
ローレンス・オリビエの舞台≪ハムレット≫の
相手役オフェーリアを演じていた時の抜擢であった。

彼女も息の長い役者となった。

王子に扮するサブーは
≪バクダッドの盗賊≫ではまだ少年でしたが
りりしい若者になっていました。

光と影と色の魔術師カーデイフの≪黒水仙≫。

小学生の時に見た記憶がありますが、
改めて見るとこんなにきれいな映像だった!!と
  感激、感激の作品でした。

1947年に米アカデミー撮影賞、美術監督賞を受賞。
美術賞で外国映画が受賞することは殆どなかった中での
受賞です。
デボラはニューヨーク映画批評家賞女優賞を受賞しています。

因みに黒水仙というのは
登場する王子がロンドンの軍の売店で買った香水をつけているのだが、
その香水の名が黒水仙らしい。


またぬぼれが強く、毎日着飾っているのをシスターたちが
色の黒いうぬぼれやと揶揄して呼んだものをさすらしい?。。

水仙の花言葉は自惚れ屋さん。


今夜もお付き合いくださり、ありがとうございました。