〈ニノチカ〉・グレタ.ガルボ・1939年度作品  エルンスト・ルビッチ監督 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。






みなさま、こんばんは。
福岡は梅雨に入りまして
今日は肌寒い一日でした!

今夜はグレタ.ガルボの
≪ニノチカ≫を 取上げます。

山田洋次監督が野村芳太郎監督の薫陶を受けたのと
ビリー.ワイルダーがエルンスト.ルビッチ監督の薫陶を受けた
経緯がちょっと似ていると思ったのですが.........

≪砂の器≫で山田洋次監督は
シナリオ書きに参加しているし、
今日紹介するルビッチ監督の
喜劇≪ニノチカ≫では
ワイルダーがシナリオ書きに参加している。

そして、ふたりともどこか恩師の作風を継いでいる。

山田洋次は≪霧の旗≫に最もそれが顕れていると思います。

さて、グレタ.ガルボ

笑わない女ガルボ。笑わない魅力が彼女の本領である。

作品的にはすごくいいし、
ワイルダーの脚本のさえも
見えていいのだけれど、

彼女について言えば、
この作品で、
笑い顔を見せてしまって
躓いたといわれている。

悲劇も喜劇も女優は出来なければならないのだけれど
ガルボに関してはそれは許されなかったようだ。

あくまで、笑わない
謎に満ちた女性で、
ありつづけなければならなかった。

この作品の二年後の≪奥様は顔がふたつ≫という作品を最後に
引退してしまった。

スタンバーグとルビッチの全盛時代は
デートリッヒとガルボの全盛時代なのである。

    ≪ニノチカ≫

出演  ヤクシューバ.ニノチカ......
グレタ.ガルボ

レオン.ダルグ伯爵............
メルヴイン.ダグラス


ストーリー

三人のロシア政府商務省の
すっとぼけた三人の役人が
国家所有の宝石を売る為に、
花のパリにやってきたが、
パリで羽目を外してなかなか商売をしないために
ニノチカという名の
女性特使が使わされる。

その女性特使は、
共産党員の代名詞のようなコチコチの
鋼鉄のような女性。

物事に対しての情操もなければユーモアも解さない。

一方、アイラノフ.ブイラノフ、コバルスキーの三人は
持ってきた宝石が、

現在パリの社交界で
その名を知らない人はいないほど
有名な
かつてロシアの亡命大公妃であった女性の所有物であったと聞かされていた。

その代理人と称するレオン.ダルク伯爵は大公妃の情人で
彼女の代理人として三人を丸め込み、
パリの裁判にかけると持ちかけ
半額の値段で買い取ろうとしていた。

偶然、エッフェル塔見物をしようとしていたニノチカと
交差点で知り合ったが、
彼女は言葉は抑揚なく、表情もなく、
しゃべるセリフはコチコチの堅物であった。

レオンはしかし、この女性に
何故か興味を持ち、追いまわす。

この映画はつまり、
ニノチカがどうしても笑わないというところが
喜劇なのである。

レオンの饒舌なギャグは
ワイルダールビッチの瀟洒なものであるが、
受けるニノチカのちぐはぐな返答が
我々を笑わせるという仕組みである。

まあそんなこんなで、
ニノチカはレオンの口説きに落ちるわけだが、

”ごらん!時計を見て!午前0時だ。
   時計の針がキスしているだろ?
  パリではこの時間はみんな愛を囁いているんだ!”

普通の女性ならこんな洒落たくどき文句に陥落するわけだが、
ニノチカは
   ”長針と短針が重なっているだけでしょう”と
  表情も変えずに言う。

口説きの名人、プレイボーイのレオンもお手上げだが....
   そこは。。。。??


そして今度は恋の虜になったニノチカが
パリかぶれになっていくのに反して、
レオンが
コチコチのロシア人のような商売根性を持つようになるという

ワイルダー、ルビッチのロシアへの皮肉たっぷりのドラマへと
展開していくのである。

ガルボの声はトーンが低く私好みであります。

あの容貌からして美しいソフトな声を想像しがちだが、
この低い声が案外マッチしていて、
威厳のある雰囲気を醸し出して
彼女の魅力のひとつかもしれない。

≪モロッコ≫でのタキシードにシルクハットの
男装の麗人,デートリッヒの魅力にも舌を巻きましたが、

≪椿姫≫の華やかでありながらも薄幸の麗人にも
うっとりとしました。

このニノチカでの彼女の喜劇はわたしはなかなかよいと
思ったのですがアメリカでは??だったようです。


ともあれ、ルビッチとワイルダーの洒落た言葉遊びの作品に
いつか触れてみてくださいませ.。