《パラダイン夫人の恋》・ヒッチコック作品・米1947年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。




≪パラダイン夫人の恋≫

あまりに有名なヒッチコックの一連の作品では、
ヒロインは大別すると
大方のところ髪はブロンドで、エレガントな富豪の令嬢か、
堅実な家庭の育ちの良いお嬢さんが登場し
それにふさわしいナイトが一緒に冒険をするか、
謎解きに一役買うという登場人物の設定が多い。

こういうシチュエーションは追っかけのサスペンスに多い。

そしてもうひとつのパターンが夫婦や恋人にどこか翳りがあって、
悩みながらも信頼を取り戻そうとかいったドラマを
盛り込んだ中でサスペンスに巻き込まれていく
二つのタイプのような気がする.

それを面白い展開に持っていく小道具の使い方と
サスペンスをどういう風に盛り込むか、
そして適度なユーモアとロマンテイックな部分...
この量りのかけ方がヒッチコックは非常に上手いのですね。
ひとつ狂うとつまらないものになってしまう。

どこにでもありそうな人間間の問題をクローズアップして
殺人の動機にしたり、
サスペンスに織り込む上手さ、、、、
うん蓄はさておいて。
今夜もネタバレで参ります。

≪パラダイン夫人の恋≫

製作  米国  1947年
監督  A.ヒッチコック
出演  パラダイン夫人  アリダ.バリ
    弁護士      G.ペック
    妻        アン.トッド
    判事       チャールス.ロートン
    妻        エセル.バリモア
    馬番       ルイ.ジュールダン
    検事       レイモンド.マッセイ
すごい顔合わせだけれど....。

平凡だが幸せを絵に描いたような夫婦がいる.
夫は弁護士、妻の父も弁護士で裕福で穏やかな家庭.
夫は盲目の大富豪が殺されたことで殺人犯となった夫人の
弁護を引き受けたことで運命が狂ってくる.
無実だと訴える夫人。

妻に色目を使い袖にされたことを根に持つ判事の目論み。
弁護を引き受けた夫人に一目逢ったときから
その比類無き美しさに心を奪われ無実を証明しようと
常軌を逸したのめり込みようのグレゴリー.ペック..
その美しさの中には過去の夫人の生き方や男に対する考えが明らかになっていく。ますます魅かれて行く弁護士キーン。
女には男の人生を根底から揺るがして破滅させるほどの魅力が
あるというのか?...

妻はそのことを敏感に悟り不安でならない。
そして夫人の邸に使えていた馬小屋の下男の登場。
この4人の男女と判事の5人が殆ど法廷での会話のシーンの中で
感情の現れや、心の動きをクローズアップで横糸とし、
事件の解明を縦糸に描いた作品です。

弁護士‐は馬小屋の下男アンドレが犯人だと思い込んでいて、
尋問途中でもアンドレに嫉妬をあらわにする自分を
押さえられないほど熱中し、
すればするほど判事はバカにしたような表情をする.

夫人は媚びを売る訳でもなく,殆ど表情は無く
凛とした態度である。
何かをじっと思いつめて...

これでもかこれでもかと弁護士は下男を尋問する。
とうとう裁判が続いている中で
アンドレが自殺をする.すると
夫人は自分が殺したことをあっさりと認める。

アンドレを愛してたのに彼が死んだらもうどうでもいいと...
弁護士に向かって、

“あなたがアンドレを殺したのよ!あなたがわたしたちの人生を
メチャメチャにしたのよ、あなたの弁護士生命は終わりよ“と
捨て台詞を吐く.

女は弁護士が自分に気があることを充分に承知した上で
嘘をついて彼を利用し無罪になろうとした。

しかしその矛先は女にとって
アンドレであってはならなかったのだ.
女は自分のエゴだけに生きた悪女であり、
男にだらしが無かったのだ.

アンドレとて女 いや 夫人の気持ちを受け入れられなかったから自殺をしたのだろう。
そして夫人が殺したことを知っていたから...

女を愛していたら決して死を選ばなかっただろう。
弁護士に責められて死んだのではなく
女の勝手な愛が彼を死に追いやったのだ。

この下男はルイ.ジュールダンが扮していましたが
彼では顔もキレイ過ぎるし雰囲気も上等過ぎます。
もっと汗臭い感じの下作な役者の方が
弁護士の闘志が沸く心理が浮き上がると言うもの。

ヒロインは徹底して美しく、悪女であるから
物語が盛りあがったのでしょう.
文句なし.

アリダ.バリが美しいです。
第三の男のときは踊り子で地味な感じでしたし、
かくも長き不在では殆どノーメークでしたから
この富豪夫人の彼女はものすごくきれいでした.
どこから写してもキレイ!

良くみるとエリザベス.テーラーに知的さを加え、ビビアン.リーを足したような
美しさなんですね。
魅力的です。

妻は夫を温かく迎えた。
この弁護士もG.ペックよりローレンス.オリビエに演じて
欲しかったなあ.

そして、≪らせん階段≫で老夫人を演じた名女優、
エセル.バリモアが判事の妻で出演していました。
貫禄と言い、品と言い良いですねえ.

チャールスロートンはいつもながらのいやらしい視線たっぷりですが、
敵でもユーモアがあってちょっと憎めないのよね,
上手いのよね.
紙一重のところで使い分ける巧さ、
さすが!です。