《旅情》と《終着駅》
イタリアの男性は怖い!と何十年か前には
旅行する時は気をつけなさい.。といわれたものです、
それほど誘惑のアタックがすごいと.
≪旅情≫ もまさにその典型。
で、この作品だけを紹介..というのもなんだか勿体無いので
同じ、イタリア.。こちらはローマはテルミニ駅だけで
ドラマが展開するやはりアメリカ女性と
ローマの観光ガイドをしている若い青年とのつかの間の恋を描いて
秀逸だった《終着駅》を比べて紹介していきます。
人情ものを描いて抜群のヴイットリオ.デシーカが1953年に
アメリカ資本で撮った作品.≪終着駅≫.
イタリア男性の情熱と執拗さは驚くべきものがある.
終着駅のほうは数日の滞在の間に芽生えた恋が
別れの時が来て、別れづらくてテルミニ駅でのふたりの
どうしようもない時間を現実の時間とドラマの時間が
同時進行というこれも、ネオ.リズム手法で、
オール.ロケーションの描写が生々しく活気に溢れている。
話し合っても話し合っても解決の糸口はない二人の
どうしようもない結論。
アメリカ女性にはジェニフアー.ジョーンズ(慕情、など)
が扮しているがアメリカには夫も子もいる。
振りきろうとしても若い青年モンゴメリー.クリフトの情熱になかなか列車に乗れないというもの.
≪旅情≫のほうは中年の生活女性が妻子あるイタリアの
中年男性とつかの間の恋に落ちるというものだ。
こちらは英の名匠、デヴイッド.リーン監督作品で
これも美しいベニスを舞台に恋に縁の無かった
オールド.ミスが手練手管の中年男性の仕掛けに
はまって、男もそのうちに本気になりかける.
その淋しかった中年女性の心のひだをキャサリン.ヘプバーンが
切なく、やるせなく、可愛く、そしてすてきに演じ、
大ヒットとなった映画である。
終着駅のジェニファー.ジョーンズも今まで平凡な結婚をして、
生まれて初めての燃えるような恋のとりこになったのである。
共通した恋にあまり免疫の無い二人である。
ただ、決定的に違うのは...
ジェニファーは青年に押しきられて
抜き差しならぬところまで浸かってしまい、
アメリカへ帰る決心がつきかね、青年は待機線の客車の中で、
別れを惜しむ.
駅員に見つかり、公安室へ連れて行かれ
駅長の一言で目が覚める.。
”子供さんの所へお帰りなさい”
ジェニファーは青年を振りきって次ぎの列車に飛び乗る.
ついて来た青年は列車から飛び降り、列車は速度を増して
テールランプが見る見る遠ざかっていくのである。
≪旅情≫のヘップバーンは恋に溺れかけてもそこからかろうじて
抜け出てゆく
アメリカ女性の生き方が描かれている。
ジェニファーが殆ど自分の意思力を喪失するまでに
その情感にどっぷりと浸かってしまったが、
ヘップバーンの方は長年今で言うキャリア.ウーマンとして
働いてきた生活女性だから
かりそめの恋を受けとめる姿勢の中に
しゃんとした独立心があって、
理性を失わずに良い想い出として、自分の夢に恋をした事を
充分に分かっていて、
アメリカへ持ち帰っていくのである。
しかしそれが却って哀れでもあった。
≪終着駅≫はデシーカの人間臭さがよく顕れていて
木目こまやかであり、
旅情はさすがイギリスの監督.
さらりと切なく、おしゃれにヘプバーンの魅力を引き出して
素敵でした。
両者、見比べてみると面白いですよ。
そうそう終着駅にはあのウエストサイド物語のトニー.。
リチャード.ベイマーが子役で出演していますよ。
≪終着駅≫
制作 米 1953年度
監督 ヴイットリオ。デ.シーカ
出演 ジェニフアー.ジョーンズ/モンゴメリー.クリフト
リチャード.ベイマー
≪旅情≫
制作 英 1955年度
監督 デヴイッド.リーン
出演 キャサリン.ヘプバーン/ロッサノ.ブラッツイ