「久しぶり」

そう言おうと思ったら、

「おめでとう」

と言っていた。


「私とあなたの関係は変わらないでしょ?」
そうあなたは言うけれど。


ずっと前、
私とあなたが20歳そこそこだった頃、同じときを過ごして。
あなたが苦しそうなのを、あなたのその小さな背中を、私は見ていた。

あなたの話をよく聞いた、あなたの写真をよく撮った、あなたに甘えた。あなたを抱いた。
結婚して同じ名字になったら運がよくなるんだって、と
あなたの言葉が懐かしい。


「自分だけ階段上ってずるい」と言った。
「ひとりで大人になっちゃうね」と言われた。


あなたの選ぶ言葉は、付き合っていた頃と変わらなくて、
それが羨ましくて
言う通りひとりだけ大人になってしまったのかも、なんて思うけど。

でも
別々の道、選んだから。
あなたはそこにいることにしたし、
私は進むことを選択したんだ。


あなたのことは今でも多分好き。
あなたと言葉遊びをして、キスして抱いて、笑って泣いて
そんな人生も楽しそうだなって思うときもあって。
でも、同時にそんな自分に耐えられそうになかった。



「どんどん遠くにいこうとするけど、遠くになんかいけないんだからね」
と、あなたはそう言う。
あなたらしい言葉。
それでも私は遠くに行きたいと思う。
あなたのいないずっと。

ずっとずっと、ずっと遠くに。


出涸らしの。

テーマ:
「あなたは私がいなくても少しも寂しくないの?」

そんな風に聞かれて、なんて答えようか少し迷った。


寂しいと言って、何になる?
変わらないのなら、言葉に意図はいらない。


「大丈夫!少しつまんなくなるけど。」
そんな意味をなさない言葉が送られる。まるで蝶のように。


「そう感じてた。多分、都合いいんだろうなって。」

あーあ、って思った。
蝶ではなかった。蛾が舞った。
死の匂いが、そこにはしていた。



深く
深く
深く
その血は止まらない。



逃げることにした。
意図の無い言葉から始まったのなら、どんな結末だろうと最初から意図にはならないだろうと。
そんな風に思って。

でも同時に、一度起きた歪みを修正するだけの気力が
僕にはとうに残っていなかったようにも思う。




逃げて逃げて行き着く先はどこだろう。
生きて生きて辿り着いた先は一体なんだというんだ。

ずっと刺さった魚の骨のように、
あなたを不意に思い出して、
出がらしの茶に似たこの想いを、また宙に浅く沈める。





そんな僕をあなたは殴る。
「あなたは殴るに値する人だ」
そうやって言いながら、何度も
何度も
その非力な拳で。

君の家と卒業

テーマ:
時々思い出すんだ。

君と昔テスト勉強をしたこと。



君の家で勉強をして

君の家で寝て

君の家からテストを受けにいって。

そして君の家にまた帰った。


もうあれから何年も経ってしまって
何のテストを受けたかは忘れてしまったけれど
君と一緒だったことは、きっとこれからもずっと忘れないと思う。


卒業通知の日も
君が起こしてくれて、教えてくれた。

君の家で右手を上げて喜んだのを覚えてる。



卒業式の日、君の家に行ったら
ショートケーキが用意されていた。

私だけに買ってくれたケーキ。
「卒業おめでとう」

の紙と共に。




記憶を切り取って思い出しては
君を懐かしく思い、それはほんのり甘い。

短い間だったけれど、君が与えてくれた影響は大きくて。
この私の形成の一端を担ったんだ。



大好きだった。じゃあ、なんで一緒にいないんだ。