宮迫さんと亮さんのお二人が開いた謝罪会見について、早速インターネット上では全文が公開されていましたね。

吉本興業に文化人として所属する弁護士としては、いろいろ考察したいところですが、この件については、事実関係を含め、おそらく当事者双方それぞれに言い分があると思いますので、現時点でのコメントは差し控えたいと思いますあせる


ただ、この会見の中で、吉本側の弁護士の対応や、お二人が弁護士に依頼しその依頼を一旦解除した経緯について、触れられていたので、この点に関連して、日々仕事をしていて感じるジレンマについて書いてみたいと思います。


弁護士は、依頼者の代理人として交渉等にあたります。

そのため、会社に依頼された弁護士や、会社の顧問弁護士であれば、会社のために動きます。もちろん、会社に所属するタレントが、トラブルに巻き込まれた場合などには、その相談に乗ることもあるでしょう。しかし、会社とタレントの利害が対立する場合には、会社の立場で意見を述べることになります。


なので、今回のケースでお二人が会社と交渉するために、会社の弁護士ではなく、自分たちで会社とは関係のない弁護士に依頼したことは、ある意味当然なのです。


「弁護士」「交渉」というと、どうしても「もめごと」「対立」というイメージを持たれがちですが、私たち弁護士は積極的に争いを推奨しているわけではありません。


実際、弁護士のところには、「相手ともめたいわけではない」「できるだけ円満に解決したい」という気持ちを持っているけれども、自分たちではどうしようもできないので、相談に来られるお客様もとても多いのです。

そのようなご相談の際には、「弁護士がついた」ということだけで、構えられてしまって相手の態度が硬化したり、弁護士が入ることでかえって当事者の関係が悪化してしまうのではないかということを懸念されるお客様もいらっしゃいます。


けれど、私は、弁護士はあくまで依頼者の「代理人」であり、依頼者の意思を尊重して職務にあたることが大切だと考えています。そのため、依頼者が「問題をできるだけ円満に解決したい」と考えている場合には、交渉にあたっても、相手に対して一方的に敵対的な対応をすることはしません。依頼者が本当は争いたくないと思っているということや、それなのになぜ弁護士に依頼をしたかということについて、丁寧にお話しすることもあります。


一般的なイメージとは異なるかもしれませんが、私たち弁護士は、「訴訟などでたたかう」ということだけでなく、「紛争を円満に解決する」という目的の依頼もお受けしているのです。


今回のケースでも、お二人は会社と対立がしたくて弁護士を雇ったわけではなく、話し合うために弁護士を雇ったのだと思います。そしてまた、会社側も、お二人と対立するために、当初から弁護士と一緒に対応にあたったわけではないのだと思います。

なのに、もし、「弁護士が入る」ということが、結果的に双方の対立を深める原因となってしまったのであれば、それはとても残念なことです。


「自分の正当な権利を主張するために弁護士に依頼する」ということが「相手と揉めても構わない」ということと、常にイコールではないということ、円満に解決したいからこそ弁護士に依頼することもあるし、そんなケースでも弁護士に依頼できるということはぜひ知っていただけると嬉しいです。


風邪をひいたら病院に行くように、何かあれば気軽に弁護士に相談できるということが、当たり前になるといいなと思っています赤薔薇