世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

新潮社()
¥ 580
[4]全体的に緩やか。(2009-06-14)
上巻と同じペースで緩やかにストーリーは進み、緩やかにトーンは下がる。
細部の描写は比喩も含めて上質ではないが、かと言って飽きる程でもない。
徐々に終熄というか、収束に向かい、最終的にハッピー過ぎずアンハッピー過ぎない終幕。
レビュアー自身、下手に結論を急いだ物語の終わりが好きでないので、この終わりは好きな部類。
全体的にのっぺりとしていて、前半・後半とも感想としては変わらない。
[5]幻想的な現実感(2009-04-18)
村上作品はノルウェイの森以来2作目。
ハイテンポで現実的なハードボイルドワンダーランドと
ローテンポで幻想的な世界の終わり

その相反する二つの世界が繋がり重なり合う。

「私」が使うことが出来るシャフリングという能力に隠された謎。そのキーである「世界の終わり」という言葉。突如手にする事になる一角獣の頭骨。計算士と記号士。やみくろという謎の種族。システムとファクトリー。太った女とリファレンス係の胃拡張の女。そして博士。

「僕」が訪れた「世界の終わり」という街。心を持たないが故に穏やかな永遠の日々を暮らし続ける人々。「僕」の記憶の大半を持つ引き剥がされた「僕」の影。街に住む一角獣。古い夢と呼ばれる一角獣たちの頭角。夢読みである「僕」の手伝いをする図書館の女の子のなくしてしまったはずの心。「僕」の影の脱走計画。

全ての謎が優しく、それでいて複雑に絡み合い二つの世界は除々に重なってゆく。
本当にいい作品に出会えた。
[5]村上春樹からの壮大なメッセージ(2009-03-31)
世界から脱出しようとする「世界の終わり」の「僕」と、世界から消滅しようする「ハードボイルド・ワンダーランド」の「私」。二つの異なる世界は次第にシンクロしながらもそれぞれの結末へと歩を進め、それは誰にも止める事はできない。村上春樹の谷崎賞受賞作、堂々の完結!
自らの意思とは無関係に不条理に翻弄される「僕」と「私」。一貫して繰り返される世界における己の存在に対する問答、そして、逆境に立たされた人間の絶望…。
巧みなのは、理不尽や悲哀を下地にしながらも、「世界の終わり」の詩情に満ちた情景や、「ハードボイルド・ワンダーランド」の軽快さと哲学を織り混ぜた躍動というギミック。深甚なるテーマを扱いながらも、著者の衒学趣味やアイロニカルなレトリックの挿入で、肩肘を張らずに読ませる手法は、大いなるを実験性を秘めた文学の挑戦であって、まさに、喪失の文学たる村上春樹作品の王道と呼ぶにふさわしい意欲作だ。
ラストでの「僕」と「私」の選択は実に対極的である。共に世界に弄ばれながらも、宿命に対して、抗う「僕」と、従う「私」。充足への疑念と喪失への達観という対極的な二人の主人公の対応は、人がアプリオリとして持つ「意思」という名の原罪のメタファーでもある。
アイデンティティーを保て、そして、自我に忠実であれ。そんな村上春樹の投げ掛けるテーゼに、読み手は射抜かれる事なる。
真に高尚なる文学は、作品としてアーティスティックたる事、かつ、読み物として満足できる事。だが、現実には万巻の書の中でも、この条件をクリアできるものは稀少なのが実状。故に、現代の日本文学において、この作品はまさに、至宝といえるのだ。
これは、不死という幻想を通して、人間の魂を描く、破格の物語だ。
[5]何時の時代もBobDylanはいい(2009-02-04)
 1985年(昭和60年)にオリジナルが出た本書は、平成20年を過ぎた今も面白く読むことがきる。
パラレル・ワールドを描く本書は、「カフカ」の先駆けのようなものだけに興味深いが、それにしても、当時は"Positive Fourth Street" "Watching the River Flow" "Menphis Blues Again" そして「激しい雨」が一本に収まったテープがあったんだなあ。
[3]食べ物、音楽が・・・(2008-10-13)
村上春樹初期4部作、他4冊ほど読んでそれなりに面白かったので今回この世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
を読んで見たのだが、
食べ物、音楽の曲名がこまごまと書かれていてうざったく感じた。
食べ物、音楽に関しては村上氏の小説の手法ではあるが他の作品では、
あまり感じなかったが今回は特にうざったく感じた。食べ物、音楽でなければその時の感覚を表現できないのだろうか?
その食べ物、曲を知らない人には何も意味をなさないのではないか?
村上氏は読者が皆自分と同じように食べ物、曲を知っていると思って
いるのだろうか?
この小説を読んでいて村上氏にちょっと失望した。



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