今日ちゃんと大さん | 電波女と小さな世界

今日ちゃんと大さん

わたしはわたし、あなたはあなた。
そんなことはわかっている。



「大さぁん」
と、語尾にハートマークを沢山つけたように、でもハートマークはつけられないから代わりに笑い声を沢山つけて、今日が俺の背中に頭突きをしてきた。
「痛ぇ」
「大さん大さんあのね、私今日、大さんにすごく会いたかったの」
「知ってるよそんなこと」
ぐりぐりぐりぐりと頭を背中になすりつけ、今日はくふふと笑う。嬉しくて嬉しくて死んでしまうわ、そんな調子で俺の腰をぎゅうと掴む。
「ここは寒いね」
「ああ」
11月の空は高く澄んで今日が俺を見上げた目がきらきらと光る。こいつの吐く息が白くて、俺は仕方がないから今日の顔に煙草の煙を吐いてやった。
目をしかめ、その後にばかと言う今日の頭を撫でる。小さくて俺の掌にすっぽり収まるこの頭は、本当に切ない。
撫でてもらって満足したのか、今日はようやく俺から離れる。俺達は歩きはじめる。
どちらともなく、手をつないで、家に帰る。


「今日すごく授業面白かったの」
「それは良かった」
「でもね、授業が面白くても、友達と楽しい話をしても、なんだかすごく渇くの。
渇いて渇いて渇いて、満たされないのよ。
どうしてかなあ、こんなに楽しいのになんでかなあ、って思ったら、大さんに会ってないからだったのね」
ふふ、と今日は笑い、俺を見上げる。その目はやっぱり、11月の空に反射してきらきらしていた。

「私、すごくおかしいと思うわ。依存という言葉は悪い言葉かもしれないけれど、私はやっぱり、あなたに依存している。
あなたがいないことが耐えられなくて、あなたといつもいつまでもいたいと思う。
あなたといて、私はようやく一人になれる」

ね、依存してるでしょう。
きらきらとした目でそんなことを言われては、俺はもうたまらなく切なくなって、でも抱きしめられなくて、今日の小さな切ない頭にそっと手を置いた。
「それを依存というのなら、俺もお前に依存している。それで異存ないか?」
そして、そう、小さな声で言った。


お互いが違う人間だなんてわかっている。
でも二人一緒じゃないと、人になれないんだ。



「清くも正しくも美しくもないその様のなんと愛しいことか」

お題…replaさまより

今日は眠たくてしょーがないので、リサイクル品で勘弁。