【平成22年】 (2010年)
会ひたきと一筆添へて賀状かな 八木 風
平成二十二年 賀状
窯出しの陶ひびき合ふ秋日和 八木 風
平成二十二年一月五日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 入選
走り根の上に走り根木の実落つ 八木 風
平成二十二年一月二十一日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (小見山輝選) 入選
七草粥食べてきれいな息を吐く 八木 茂
平成二十二年二月四日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選
赤ん坊のふんばつて立つ四温晴れ 八木 茂
平成二十二年三月三日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 特選
【評】赤ん坊の成長の過程は、目を見張る情景の連続である。這い這いができると次は物につかまって立とうとする。失敗の尻餅をつきながら挑戦を繰り返し、やっと揺らぎながら踏ん張って立ったその瞬間。四温晴れが効いている。連作の〈先生の隣とり合ふ日向ぼこ〉も微笑ましい。
ミュージカルはねて少女は雪に舞ふ 八木 風
平成二十二年三月三日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 秀逸
【評】ミュージカルが終演し、観客は会場を出てゆく。外は雪である。少女は舞台への陶酔が覚めやらない。自分が主人公になった気分で、雪の舞う会館の前で舞って見せるのである。その可憐(かれん)さが申し分なく描かれた。
友の葬友ら焚火を囲みけり 八木 風
平成二十二年三月二十四日
讀賣新聞 岡山よみうり文芸 (富阪宏巳選) 秀逸
【評】親族ではない友人たちは、屋外で出棺を待っている。家の中からは読経が聞こえてくる。真冬の葬儀。あまりの寒さに焚(たき)火を囲んでしまった友人たち。きっと故人と同世代なのであろう。ゆらめく炎を見ながら死について語り合う彼ら。
だんだんとおじぎひとつや草の餅 やぎ しげる
平成二十二年四月二十一日
朝日新聞 岡山俳壇 (竹本健司選)
本堂の金極まりし彼岸寺 八木 茂
平成二十二年十月二十一日
毎日新聞 俳壇 (密田真理子選) 入選