どうしようもないことだと、頭ではわかっているけど…。ちょっとだけヤキモチを焼いた。

どうしたものか?どうしようもない。

結局、その繰り返し。


彼が私の住む街に初めて遊びに来てくれた。

奥さんが旅行に行くから、私の住む街やふるさとが見たいと、はるばる4時間運転をして。

仕事で300キロとか運転してる人だから、慣れてるとは思うけど、会いに来てくれる気持ちが嬉しかったし、身体を休ませる貴重な休日をつぶしてしまったことが少しだけ申し訳なかった。

だから、帰りも遅くならないように早く帰ってもらうつもりだった。

だけど、到着した途端に「カミさんを迎えに行かなきゃいけないから、明日は遅くとも◯◯時には帰るね」と言われ、予想外に胸がチクリとした…。


彼は、週の半分以上を出張で留守にしてるから、奥さんと休みが一緒の時は出かけないし、奥さんが仕事の日は、彼が休みでも奥さんが帰る時には家にいるようにしてるのは知っている。

そもそも、付き合うときに「お互いの家庭は大事にする」という約束を持ちかけたのは私だった。

付き合いも一年近くなり、たくさんの愛情を注いでもらって、なんの不安もなくて、普通の恋人なんじゃないかと思うくらいの毎日。

それくらい私に対して誠実な彼のおかげで、苦しい思いをせずに過ごしてきた。

だけど、私に対してと同じくらい、奥さんに対しても出来る限り誠実でいたい人だということを、今更ながら思い知らされた。


頭では、そうしてほしいと願ったはずなのに。

滅多に会えない私と付き合うことで、彼の日常が寂しいものになるのは嫌だったから。

普段は奥さんと穏やかな日常を過ごして、たまに会った時だけ私をうんと甘やかしてほしい。そう望んでいたはずなのに。

とても楽しみにしていた彼の訪問で、不意打ちのカウンターパンチをくらって、ショックを受けた自分に愕然とした。


帰った夜のLINEで彼に伝えたら、

「俺もちょっとヤキモチ焼いた。旦那さんの職場を教えてもらって、昨日、迎えに来る前にすれ違って手を振られたって聞いたから。」

と言われた。

彼と落ち合う間際に夫と街でバッタリ会ったのだ。私は車に乗っていたし、そこに彼はいなかったから良かったものの、相当ドキドキして、思わずそのことを話してしまった。

気にするだろうから言わないようにしようと思ったのに、あまりの動揺と、彼の奥さんを迎えに行く発言で、イジワルな気持ちになったのだ。


なんだ、お互いに同じか。

結局、私たちはよく似てる。

だから、お互いにこんなに好きなのに、なんなら人生の選択を誤ったんじゃないかと内心思っているくせに、家族を捨てることができない。

だって50代半ば。互いの家族のことや、仕事のこと、遠く離れた生活環境や、そのどれを考えたって、現実は甘くない。ましてや、これから老いていくことを思うと、これまでの人生で何の貢献もしてあげていない彼に、私の介護や老後の問題を背負わせることは出来ない。


30年の時を経て、やっと大切な相手に気づいたけれど、結局今の鳥かごからは抜け出せない。

それでも…

この恋が生きる力になるのなら…。