告白した翌日の月曜日。

人間ドックのために、振替休日をもらっていた。

久しぶりにゆっくり過ごして、改めてK君のLINEを読み返していた。

昨日はいつものことで、自分でフィルターをかけてしまったけど、改めて読み返すとなんだかK君が嬉しそうである。今日も朝からLINEが届いて、やはり「嬉しい」と書いてある。

これまでのことをふと思い出す。

そういえば、電話し始めた頃から、K君のLINEに赤いハートマークがつき出して、随分と可愛らしい感じの絵文字を使ってるのが意外だな程度に思ってたけど、もしやと思いググってみた。

なんと!

男性が赤いハートの絵文字を使うって、いわゆるチャラいタイプの人やそういうキャラでなければ文字どおりの意味があるらしい…。気づかなかったかも。

そこはスルーしちゃいけなかったの?

でも私はさすがに恥ずかしくて、ハートマークとか送り返せないけど。

これはやっぱり電話しなくちゃ。


K君が出張しているクリスマスイブ。

私は家族に嘘をついて、自宅からK君に電話した。

「ミナミさん(告白の後押しをしてくれた人)に電話するから。下の部屋には来ないでね!」と夫と息子にキツく言いおき、2階の自室にあがってもらった。それでも会話がモレ聞こえないよう、普段は開けっぱなしの部屋の引き戸まで閉めて。

途中、息子が降りてきて何か探してるような物音がしたけれど、ニブイ息子のことだから、母親の電話相手がまさか男性とは気づかなかったはず。いや、気づいてもそれ以上の想像は働かないだろうということにしておく。


なんだかめちゃくちゃ照れながら、K君と電話で、答え合わせをした。

結果、占い師さんの言ったことは全て当たっていた。LINEで伝えるのもどうかと思ったからと、K君は電話で気持ちを伝えてくれた。

要するに、お互い11月に再会した時にあまりの変わらなさ(細かなところは当然年相応として、雰囲気や人柄)に、私達はお互い恋に落ちたのだ。

友人の表現を借りれば「思いのほか保存状態が良かった」ということだろう。

K君はOB会でもほぼ私を見てしか話さなかったと言うけれど、それも全然気づかなかった。


K君が大学時代に私を好きだったことも、これはもう時効として、その後もずっと心の底に留めてくれていたらしい。

びっくりしたのは「AXIAかなしいことり」の話で、当時、私に長電話をかけていたことをすっかり忘れていたK君(最初のLINEデートで判明)だから、当然忘れていると思ったのに、再会した後、K君もこの歌をよく聴いていたのだという。

「この歌を聴くといつもちび子さんを思い出していた。」と言う。二人で同じ曲を聴いていたと言うことか。ここまでシンクロすると、占い師さんに言われたソウルメイトとか、運命とかと思わずにはいられなくなった。



なんとなく不思議だと思っていて、一番腑に落ちたのはお互いが結婚していることに対するK君の考えだった。

「自分はたぶん変わっていると思う。でも、ちび子さんは結婚していてもちび子さんで、当然、一人で暮らしているわけはないから家族がいて。自分にしてみれば、旦那さんはなんだろう、ちび子さんのご両親と同じというか、家族というくくりでしかない。大学の時もそれは同じで、彼氏がいてもちび子さんを好きになるのには関係ないと思っていた。」と言う。

なんだろう、一般的な、「彼氏や夫がいる人を好きになっても無駄」というような概念をK君は持ち合わせていないらしく、ただ、その人を人として好きかどうかということか。それならば私に送ってきていた匂わせ発言も納得がいく。

なんだろう、その純粋さに改めて観念してしまった。訳もわからないうちにガツンと恋に落ちたと感じていたのだけれど、もしかしてこれはK君に落とされたのか。30数年かけて…。


しかも、K君。これまた明るく前向き。

私のように「お互い家庭があるのに…」とか、湿っぽい感じは全く出さず、「これからが楽しみですね。よろしくお願いします。」と明るく交際を求めてくる。とにかく嬉しいと気持ちを隠さない。


とにかく、ここまで言われたら、自分ももう好きになってしまったわけだし、30年以上かけて落とされたわけなので腹をくくるしかない。

この恋を家族に隠して貫き通すと覚悟を決めた2024年のクリスマスイブだった。

人生は何が起こるかわからない…。