入院中の生活はシンプル。
朝、6時半に看護師さんが巡回に来て起きる。
点滴の副作用か、はたまた環境が変わったせいか、働かないからか夜眠れないので、ちょうど眠い頃🥱。
朝食後、2時間の点滴と1時間の点滴で合計3時間。この間に昼食。
これが終われば後は自由なので、シャワーを浴びるのと3日に一回のコインランドリー。
ヒマです。
そこで読書です♪
入院して最初に読んだのは
吉本ばななさんの「ハネムーン」
20年以上前に買ったもので、久しぶりに読み返したけれど、ほとんどストーリーを覚えていなくてびっくり😅。
おかげで初めてのように新鮮に楽しめました。
ストーリーの設定は吉本ばなならしく、ヘビーな新興宗教とか、海辺のヒッピー風生活とか、定職のない若者とか、決して皆が共感できる設定ではないのだけれど、物語のテーマは一貫して愛する者との別れからの再生。
主人公の夫は宗教に傾倒した両親に捨てられ、祖父に育てられる。小さい頃からおじいさんがいつか死ぬことを恐れて、高校を終わる頃、ついにおじいさんは亡くなってしまう。
そこに関係して主人公とその夫が子供の頃から可愛がってきた犬の死などもあって、それらをゆっくりと2人で受けとめ、新しく人生をスタートするまでの柔らかなお話。
設定は奇抜だけれど、文章の隅々まで相手を思いやる優しさや、根底にある大切な人たちと過ごす人生の大切さが美しい文章で綴れていて、入院直後でナーバスになっていた私は何度も涙を拭いました😢。
私、20代でこの小説を読んだ時はこの文章の美しさくらいしかわからなかったのじゃないかな。
去年、一昨年と相次いで母と父を亡くしました。
父は早くに認知症を発症していたので、いずれ介護が必要だろうと覚悟していたけれど、それよりも早く母が大脳皮質規定核変性症という難病になり、父より早く逝くことになるとは兄妹全員が思いもよらないことでした。
仲の良い夫婦だったけれど、具合が悪くなるのも亡くなるのも一緒。
少しずつ悪くなって、入院を繰り返して、最後の1〜2年は会話も出来ず、表情も作れないので両親の思いもわからないまま、兄妹で延命措置を止める形で看取ることなりました。
二人が目に見えて具合が悪くなり、入院を繰り返して、皆がやがて来る最後を少しずつ覚悟する。
あの重苦しい6〜7年は本当に辛かった。
そして本人たちにとっても同じだったでしょう。
延命措置を辞めて看取ることは、年齢的に二人とも80代だったし、長い時間をかけて諦め、覚悟を決めての決断だったけれど、それでも大切な肉親との別れはこんなにも悲しくて辛いのかと自分で驚いた。
同居していた兄夫婦は、二人同時に介護が必要になり、現実的な苦しさを知った上で、本人のことも思って最良の決断をしたのだろう。
嫁に行って離れて暮らす私が、現実として介護することが難しいことはよく分かっていたけれど、母の亡くなった翌年に、父が何度目かの脳出血で嚥下機能が回復しないが胃瘻の増設はせずこのまま逝かせると聞いた時、一度だけ反対した。
母が亡くなって一年もたたないうちに、父まで失う受け入れが出来なかった。
頭ではわかっていたけれど、3人いる兄妹の一人くらい、最後まで生きていて欲しいと願う子供がいても良いんじゃないかと思った。
年の離れた末っ子として、最後まで両親に可愛がってもらった私の、それが役割だと思った。
愛する家族を失う悲しさは体験しないとわからない。でも、その悲しさはちゃんと愛情がかわせていたから。幸せな悲しみだ。
これは一緒に暮らしたペットも同じ。
家族以外の親しい人でもそう。
両親は亡くなる時に最後にいろんな大切なことを教えていったと思う。
母が難病になったように、本人に何も非がなくても、人生にはどうしても受け入れなくてはならないことがある。
そして誰の人生にも限りがある。いろんなことを受け入れて、限られた自分の人生を悔いなく過ごすことの大切さ。
