会長の3110です。
今回はヒッチコック監督初のトーキー映画ですが、正しい邦題がいまいちわからないんですよねぇ。
『ゆすり』,『恐喝』,あるいは『恐喝(ゆすり)』なんてのも。
他には『ヒッチコックのゆすり』とかですかね。
今回は私の好みで、一番シンプルな『ゆすり』でいきます。
ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ
『ゆすり』
1929年 83分 監督:アルフレッド・ヒッチコック
※画像をお借りしています
〔あらすじ〕
刑事のフランクは仕事終わり、恋人のアリスとレストランへ行くが、ちょっとした喧嘩になり出ていってしまう。
仲直りしようと外で待ち伏せていたフランクだったが、アリスは別の男と店を出てきた。
アリスはその男に誘われて家に行くが、そこで思わぬ悲劇が起こる……。
─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ コ コ マ デ!
というわけで、また最旧映画の記録更新です。
今から90年近く前の映画ですが、聴覚効果、視覚効果共に、今の映画よりも遥かに鮮やかに描かれています。
理由としてはやっぱり、製作当時はサイレント映画がまだ当たり前だったこと。そして、今では当たり前になったトーキーをいかに効果的に使うかが考えられていたからでしょう。
つまり、当時の映画は今よりも視覚効果の重要度が高く、登場したばかりだったから音も新鮮に使うことができた、ということでしょうね。
本作に対する私の印象を一言で表すと、
音声付きのサイレント映画、ですかね。
「音声付きならサイレント映画じゃねえだろ」とかいうマジレスはやめてください。
まあ早い話、「サイレント映画の演出がたくさん使われたトーキー映画」、ってことです。
例えばここ↓
部屋にアリスを招いた男です。下心丸出しで。
アリスを襲う直前、(当時悪人の象徴だった)ひげのような影が顔にかかります。
カーテンの内側でアリスを襲う男。抵抗するアリス。
カーテンから覗いたアリスの手が掴んだのは、近くのテーブルにあったナイフ。
次にカーテンからはみ出たのは、動かなくなった男の手。
一連の出来事はすべてカーテンに隠れて見えません。
なっちが言っていた、「すべてを描写で説明しない」というのがよくわかるシーンです(第96回参照)。
影を使った演出は他にもたくさん登場します。
探してみましょう。
勢いで男を殺してしまったアリスは、まぶたの裏にちらつく男の手に怯えながら家に帰ります。
翌朝、近所で殺人事件があったとの噂が彼女の耳に入ります。
雑貨屋を営む彼女の家では、噂好きの客が事件について話しています。
呆然としたアリスの意識には、その客が繰り返すナイフという言葉ばかりがこだまします。
「……ナイフ、……ナイフ」
ここの音声効果は素晴らしいですね。
そこへ現れる恋人のフランク。
事件現場で見つけた手袋が彼女のものだとわかり、アリスをかばおうとしますが、そこへもう一人の客が↓
彼もまた、現場でアリスの手袋を見つけ、これをネタにアリスとフランクを恐喝します。
ここまで観れば、加害者のアリスが事件をネタにゆすられる。そういう話だと思うでしょう。
なんせ邦題が『ゆすり』なんだから。
もちろんそれもあります。
しかし、ゆすられるのはアリスだけではありません。
その男が前科者で、事件当日現場近くをうろついていたと知ったフランクは、その男を犯人としてでっち上げようとするのです。
そう、これはゆすり合い。脅迫、恐喝のし合いです。
本作にはたくさんの悪人が登場します。
アリスを襲った男、
男を殺したアリス、
アリスを恐喝する前科者、
前科者をはめようとするフランク……
勧善懲悪とはかけ離れたストーリーを意識すると、ラストシーンがなんともやるせない。
ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ
こんなに古い映画なのに、今観ても決して古臭くない。
サスペンス好きの人、おすすめです。
続く……ヒッチコックのカメオ出演は既に確立済