=第104回= 『ゆすり』 (感想) | 3110 - 映画研究会

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会長の3110です。

今回はヒッチコック監督初のトーキー映画ですが、正しい邦題がいまいちわからないんですよねぇ。

『ゆすり』,『恐喝』,あるいは『恐喝(ゆすり)』なんてのも。

他には『ヒッチコックのゆすり』とかですかね。

 

今回は私の好みで、一番シンプルな『ゆすり』でいきます。

 

     ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ

 

 

   『ゆすり』

  

1929年 83分 監督:アルフレッド・ヒッチコック

 

  ※画像をお借りしています

 

  〔あらすじ〕

 刑事のフランクは仕事終わり、恋人のアリスとレストランへ行くが、ちょっとした喧嘩になり出ていってしまう。

 仲直りしようと外で待ち伏せていたフランクだったが、アリスは別の男と店を出てきた。

 アリスはその男に誘われて家に行くが、そこで思わぬ悲劇が起こる……。

 

     ─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ コ コ マ デ!

 

 

というわけで、また最旧映画の記録更新です。

今から90年近く前の映画ですが、聴覚効果、視覚効果共に、今の映画よりも遥かに鮮やかに描かれています。

 

理由としてはやっぱり、製作当時はサイレント映画がまだ当たり前だったこと。そして、今では当たり前になったトーキーをいかに効果的に使うかが考えられていたからでしょう。

 

つまり、当時の映画は今よりも視覚効果の重要度が高く、登場したばかりだったから音も新鮮に使うことができた、ということでしょうね。

 

 

本作に対する私の印象を一言で表すと、

音声付きのサイレント映画、ですかね。

「音声付きならサイレント映画じゃねえだろ」とかいうマジレスはやめてください。

 

まあ早い話、「サイレント映画の演出がたくさん使われたトーキー映画」、ってことです。

 

 

例えばここ↓

 

部屋にアリスを招いた男です。下心丸出しで。

アリスを襲う直前、(当時悪人の象徴だった)ひげのような影が顔にかかります。

 

カーテンの内側でアリスを襲う男。抵抗するアリス。

カーテンから覗いたアリスの手が掴んだのは、近くのテーブルにあったナイフ。

次にカーテンからはみ出たのは、動かなくなった男の手。

 

一連の出来事はすべてカーテンに隠れて見えません。

なっちが言っていた、「すべてを描写で説明しない」というのがよくわかるシーンです(第96回参照)。

 

影を使った演出は他にもたくさん登場します。

探してみましょう。

 

 

勢いで男を殺してしまったアリスは、まぶたの裏にちらつく男の手に怯えながら家に帰ります。

翌朝、近所で殺人事件があったとの噂が彼女の耳に入ります。

雑貨屋を営む彼女の家では、噂好きの客が事件について話しています。

呆然としたアリスの意識には、その客が繰り返すナイフという言葉ばかりがこだまします。

「……ナイフ、……ナイフ

ここの音声効果は素晴らしいですね。

 

そこへ現れる恋人のフランク。

事件現場で見つけた手袋が彼女のものだとわかり、アリスをかばおうとしますが、そこへもう一人の客が↓

 

 

彼もまた、現場でアリスの手袋を見つけ、これをネタにアリスとフランクを恐喝します。

 

ここまで観れば、加害者のアリスが事件をネタにゆすられる。そういう話だと思うでしょう。

なんせ邦題が『ゆすり』なんだから。

 

もちろんそれもあります。

しかし、ゆすられるのはアリスだけではありません。

その男が前科者で、事件当日現場近くをうろついていたと知ったフランクは、その男を犯人としてでっち上げようとするのです。

 

そう、これはゆすり合い。脅迫、恐喝のし合いです。

 

本作にはたくさんの悪人が登場します。

 アリスを襲った

 男を殺したアリス

 アリスを恐喝する前科者

 前科者をはめようとするフランク……

 

勧善懲悪とはかけ離れたストーリーを意識すると、ラストシーンがなんともやるせない。

 

 

     ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ

 

こんなに古い映画なのに、今観ても決して古臭くない。

サスペンス好きの人、おすすめです。

 

 

続く……ヒッチコックのカメオ出演は既に確立済