きょうの潮流
 

 「いつまでも壊れた家が並ぶ光景を見続けるのは、ほんとうにつらい」。能登の輪島で製塩業を営んできた男性の声には、いらだちが込められていました

 

▼変わらない崩れた町の姿。朝市に構えていた自身の店も倒壊し、先行きは見通せません。不安だけが募るなか、商店の仲間たちと励まし合い、なんとか前を向いて生きようと努める日々だといいます

 

▼能登半島地震から半年。生活の再建がまったく描けないとの訴えは被災地のどこからも。実際、能登では100をこえる事業所が廃業を余儀なくされ、地域を長く支えてきた所も次々と閉じています。人口流出も加速し、インフラが復旧されても町のありようは…

 

▼被災家屋の公費解体も滞っています。申請にたいし、完了したのはわずか数%。手続きの煩雑さに加え、人手が圧倒的に不足しているのが実情です。復旧工事では資材の不足も進まぬ要因に。これでは、能登は見捨てられたと多くが嘆くのももっともです

 

▼被災地では、自分も復興の力になりたい、困っている人の役に立ちたいと奮闘する若者たちの姿があります。それはボランティア活動をはじめ、全国からも。先日は長野県の民青の学生らが能登を訪れ、仮設住宅でくらす被災者のつらさや要望を聞き取っていました

 

▼地域の未来をになう若者の息吹と、支援の輪のひろがり。一方でなりわいの再建に立ちはだかるさまざまな壁。いま求められていることは何か。希望はどこにあるのか。被災地の現状から見えているはずです。

 

 

能登地震、「公費解体」完了4% 1日で発生半年、復旧遅れ深刻

 

 

 能登半島地震は7月1日で発生から半年。地震による死者は災害関連死を含め計299人となる見通し。石川県の被災地では全半壊となった住宅などを自治体が解体する「公費解体」の完了数が4%にとどまることが県のまとめで判明。被災地ではインフラ復旧の遅れが深刻で、能登半島からの人口流出も加速している。復興に向かう体制整備が急務だ。

 

 地震の犠牲者は建物倒壊などによる直接死229人に加えて、避難生活で体調を崩すなどして亡くなった「災害関連死」52人、関連死への認定が決まっている18人がおり、計299人となる。2016年熊本地震の犠牲者数276人を上回った。

 6月24日時点の公費解体の申請総数は2万865棟。着手したのは2601棟で、完了は申請総数の4%に当たる911棟にとどまる。石川県は県内全域で約2万2千棟の解体を想定しており、25年10月の完了を目指している。

 石川県の人口推計によると、被害の大きかった能登半島6市町の5月1日時点の人口は11万5698人で、元日から3.3%(3952人)減少した。

 

 

主張
能登半島地震半年
国は被災者見捨てぬ意思示せ

 

 能登半島地震から1日で半年です。いまなおライフラインの復旧や被災家屋の解体撤去がすすまず、先が見通せないことへの不安と怒りが広がっています。国は緊急に抜本的な支援策を集中し、被災地を見捨てないという強いメッセージを発すべきです。

■命守る緊急対策を
 いま、仮設住宅入居者や全壊を含め壊れた家に住み続けている人には、食料などの支援物資がまったく届きません。避難所にはまだ2千人が暮らしますが、ボランティアの炊き出しは終了。行政は「無料や低額でも希望者への配食サービスができないのか」との声にこたえるべきです。

 被災家屋の公費解体の申請は2万件を超えますが終了したのは4%。修繕を業者に頼んでも何カ月も待つ状況です。重機や人を集中して一気に現状を打開することが、復旧・復興に向けたいまの重点課題です。

 国が主導し業者を県内外から集め強力に推進すべきです。被災地への道路は改善してきています。泊まる場所が不足なら仮設の宿泊所をさらに建てればいいのになぜやらないのか、国の姿勢が鋭く問われます。

 梅雨に入り土砂災害への緊急対策も求められています。医療・介護の崩壊も深刻です。高齢者など支援を要する被災者が在宅で取り残され、災害関連死も増えています。全国の自治体からの応援職員が限られてくるもとで、国が命を守る支援を緊急に強める必要があります。

 備蓄や耐震化の遅れなど備えのあり方が発災直後から問われました。石川県は、東日本大震災などを受けての指摘にも被害想定を見直さず、2020年末からの能登の地震活動の活発化、昨年の地震被害も顧みませんでした。初動を担う地元職員の圧倒的不足も復旧の足を引っ張っています。

■地元支える体制を
 内閣府の検証チームの「能登半島地震に係る災害応急対応の自主点検レポート」は、応援職員の活動、避難所の備蓄品、被災者の要望をつかむ体制など多くの課題を掲げました。しかし肝心要の、地元自治体職員への言及はありません。

 避難所での雑魚寝など劣悪な環境に対し、国はガイドラインを作り災害のつど、自治体に「周知徹底」や「(体制の整備を)促す」事務連絡を出してきましたが、それだけでは解決しません。被災地の状況をつかみ現場で対策を担う自治体の体制確保が不可欠です。

 復興計画作成でも、地元のことは住民が決めるべきです。国は、集落の集約化などの復興計画を上から押し付けるのではなく、能登に住む人たち自身の復興計画を支援するべきです。

 1995年の阪神・淡路大震災を機に、生活再建に公的支援を求める被災者と全国の粘り強い運動で被災者生活再建支援法が成立しました。「住宅は私有財産。自己責任」という国の態度を乗り越え、その後も支援対象の拡大を勝ち取ってきました。災害ごとに支援策を発展させてきた主役は被災者自身の運動にほかなりません。

 国は能登に住み続けたいという声を受けとめ被災地に希望を示す必要があります。被災者とそれを支援する運動で国と自治体に責任を果たさせましょう。