きょうの潮流
 

 大きな力(権力)を持つ文部科学省が、公共放送のNHKに“圧”をかけた―これが今回の構図です。中央教育審議会の特別部会が教員の「働き方改革」や処遇改善を議論して審議結果をまとめたと報道した夜のニュース番組(13日)に対し「大変遺憾」だと

 

▼教員給与の「定額働かせ放題ともいわれる枠組み自体は残ることになります」という放送は「一面的」―。文科省はホームページで発表してムキになっていますが、果たしてそうか

 

▼中教審の審議結果の紹介や解説、教育現場の反応、専門家の意見…。それらはよくある報道の構成です。放送法にいう「放送の自律」に基づいています

 

▼過去には2001年に教育テレビで放送された「シリーズ戦争をどう裁くか 第二回 問われる戦時性暴力」をめぐる事件が。「従軍慰安婦」問題を「女性国際戦犯法廷」の形で扱った番組に、当時官房副長官だった安倍晋三元首相らが「公正・中立」ではないと介入、「改ざん」させて放送に至ったことがありました

 

▼昨年、放送法の「政治的公平」の解釈変更をめぐる安倍政権内のやりとりを記した総務省の「行政文書」問題が浮上。特定番組に介入しようとうごめく議論は放送の自由にかかわる問題ですが、岸田自公政権は官邸の圧力があったことを認めませんでした

 

▼放送法は「健全な民主主義の発達に資する(役立つ)」放送をするよう定めています。権力者の言いなりにならない、自由のために役立つ放送を。この自律の権利を生かしてほしい。

 

 

文科相、NHKへの抗議は「圧力にあたらない」 教員確保策巡る報道

 

 

 盛山正仁文部科学相は24日の閣議後記者会見で、中央教育審議会の特別部会が取りまとめた教員確保策の提言を巡るNHKの報道に対して文科省がホームページ上で公表した抗議文について「多面的、公平、公正な報道をお願いした」と述べ、報道機関に対する圧力には当たらないとの見解を示した。

 

 盛山氏は過去にも報道機関への抗議や要請はあったとし、「我々の思っていることと違う報道がなされた場合、あるいは事実誤認があった場合には報道機関に連絡している」と述べた。文科省の考えと異なる報道をした場合に抗議するという趣旨にも受け取れる発言だが、会見直後に担当者が「(省と)違う意見かどうかではなく、多面的に報じてもらいたいということだ」と意図を説明した。

 特別部会は13日、教員確保策の提言を取りまとめ、残業代を支払わない代わりに一律支給される教職調整額の引き上げを含む教員の処遇改善のほか、働き方改革の加速、学校の指導・運営体制の充実を一体的に進めるよう文科省に求めた。NHKは同日夜、教職調整額が存続することについて「『定額働かせ放題』枠組みは維持」などと報道した。

 NHK広報局は取材に対し「ニュースでは(教職調整額を規定した)教員給与特別措置法について原則残業を命じないとされている点が明記されたことも伝えており、『一面的だ』という指摘はあたらない」などとコメント。圧力ととらえたかどうかは明確にせず「不偏不党の立場を守りながら公平・公正、自主・自律を貫いていくということに変わりはない」とした。【斎藤文太郎】