眼科医を悩ます病気 | 浜田みやかわ眼科のブログ

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今回は糖尿病網膜症に合併する糖尿病黄斑浮腫という病態を取り上げます。

 

糖尿病網膜症が進行すると、毛細血管の閉塞から広範囲に網膜の虚血(低酸素状態)が起こります。

 

すると血流の悪い場所に何とか血液を送ろうとして網膜からVEGF(血管内皮細胞増殖因子)という糖タンパクが放出され、新生血管という異常血管が発芽します。

 

VEGFは糖尿病網膜症だけでなく、全身的に、がん細胞からも分泌されたりします。ただ、悪い働きだけでなく、創傷治癒過程でも分泌される物質です。

 

眼球内でVEGFが分泌されると、網膜の中で一番視力に大事な黄斑部という部位にむくみ(浮腫)を起こす作用があります。これを糖尿病黄斑浮腫と言って、私たち眼科医を悩ませるのです。

 

それでは、そのVEGFが働かないようにする薬があればむくみが起こらないのでは?と皆さん考えるかもしれません。

 

そうです、そのような薬剤は存在します。抗VEGF抗体という薬剤を眼球内に注射する治療があります。

現時点で糖尿病黄斑浮腫に対して第一選択とされる治療法です。

 

効果が乏しい患者さんもいますが、効く人には劇的に効きます。

 

その反面、大きなデメリットもあります。

 

それは、薬価(薬の値段)がむちゃくちゃ高いことです。

 

国の医療費のパイは決まっています。

 

その中で高薬価な薬剤費の占める割合が高くなると、相対的に既存の治療に対する医療費が削られます。

自己負担3割の患者さんでは1回の注射で5万円位かかる驚くほど高額な治療です。

 

製薬会社だけが左うちわの構図となっており、国民皆保険制度を守るためには、高薬価薬剤の適正価格への引き下げが望まれるのです。

 

また、これに関連しますが一度注射すればずっと効くのではなく、薬の効果が切れると抑えられていたVEGFの作用が復活し浮腫が再発してしまいます。

 

そのため、病状によって投与間隔を調整しながら注射を継続するTAE療法(Treat and Extend)や再発したら注射を行うPRN療法(Pro re nata)またレーザーやステロイド薬を併用するなどして、なるべく患者さんへ負担がかからないよう投与回数を減らす努力を医療者側は行います。

 

効果がある患者さんに毎月注射すればそりゃあ視力は維持されますが経済的負担を考えるとあまりにも非現実的です。

 

患者さんごとに、いかにして負担をかけずに浮腫を起こさないように治療していくかが悩みどころです。(腕の見せ所??)

 

注射に反応せず、効果が乏しい患者さんはさらに悩ましいのですが・・・

 

 

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