http://hochi.yomiuri.co.jp/column/shirota/news/20101111-OHT1T00336.htm


GPシリーズの行方~強く、輝いて、跳んで~(その1)

 もうご存じかと思うが、改めて選手を紹介したい。女子では、ジャンプを一からやり直すという勇気ある五輪銀メダリストで世界チャンピオンの浅田真央、5種類のジャンプ、そして4回転も入れるかもしれない安藤美姫、よみがえって進化を続ける鈴木明子、世界ジュニアGPファイナルに優勝した村上佳菜子、そして新鋭の今井遥などなど。


 一方の海外勢は、スケーティングの旨さ、高いジャンプのカロリーナ・コストナー(イタリア)に今季の開花に期待がかかる。このところロシアは今一つと言われるが、世界ジュニア優勝経験者で、5種類のジャンプを持つアリーナ・レオノア、注目度の高いジュニア上がりのクセニア・マカロア。対する北米の星は、どんなポジションからの高速スピンの技術は世界一と言われるアリサ・シズニー、全米チャンピオンで3回転―3回転ジャンプを常に挑戦し続けるレイチェル・フラット、五輪4位で日米両国籍を持つ長洲未来に、アシュリー・ワグナー。ジャンプの安定度が増せば上位に食い込めるシンシア・ファヌフ(フランス)、キーラ・コルピ(フィンランド)など目白押し。


 一方、男子では、成長が期待されるパトリック・チャン(カナダ)。2度世界ジュニアを制しビールマン・スピンも出来るアダム・リュポン、4回転ジャンプとスケーティングの旨さを持つジェレミー・アボット(いずれも米国)。ベテランで4回転を持つ元世界チャンピョンのブライアン・ジュベール(フランス)。本番時にジャンプを成功させることがちょっと弱いが、素晴らしい才能の持ち主のトマシュ・ベルネル、若手の期待のミハル・ブレジナ(いずれもチェコ)。ちょっと気になるフローラン・アモディオ(フランス)。迎え撃つ日本勢は、五輪銅メダリストで世界王者の高橋大輔、スケートのお手本と言われる小塚崇彦、スケート以外でもお騒がせな織田信成、世界ジュニア、GPファイナルとも優勝した才能ある若手の羽生結弦…。目が離せない選手達に期待する。


 前置きが長くなったが、GPシリーズも中盤に入り、3つの大会を振り返って見よう。まず初戦のNHK杯で目に付いたのは、女子3位に輝いた15歳の村上だろう。SPではジャンピング・ジャックと言う曲にノリノリで何の屈託もなく、自分らしく元気いっぱいの演技に観客は活力を貰ったのではないだろうか。山田満知子コーチも今年は初参加だから、エキシビションやショーに出来るだけたくさん出して力を付けると言っていた。その成果はあったように思え、SPもフリーもそろえられたら今後が楽しみになって来るだろう。


 優勝したコストナーも、コーチを元のミカエル・フェースに師事、戻りつつあるジャンプのテクニック、持ち前のポジションの美しさ、スケーティングの伸びやかさをプログラムに乗せ流れの中で得意のジャンプから入っていく演技構成の旨さが見て取れた。彼女のジャンプは高さ、飛距離、質と3拍子そろい、スピード、ダイナミックさは世界のトップ。SPはガリシアフラメンコ、フリーはドビッシーの「牧神の午後」のまどろむ感じの曲をゆったりと巧みなスケートで演技する、大人のプログラムである。さすがローリー・ニコルの作品だ。


 世界チャンピオンになって迎えたNHK杯のSPの高橋の曲は、「ある恋の物語」。リズムはマンボ、シェイ・リーン・ボーン振り付けだそうだ。高橋独特の身体使い、シーズン始まったばかりとは言えなかなかのものだ。ジャンプに多少ミスがあったが、これからまだまだ曲に溶け込んで行けそうな気もした。フリーは4回転も入り、自信にあれプログラムを楽しんでいるかのように見えた。こちらも「ヴェノスアイレスの四季」で、タンゴのリズムだ。彼はラテン系が好きなのか? 振付師のパスクァーレ・カメレンゴが選んだのか? 実に高橋流にアレンジしてアピールしている。マンボ風味のインパクトの強い静止ポーズとクネクネと怪しい身体の使い方、足さばきと音の調和が良くできている。これでエレメンツの成功率が高くなれば5コンポーネンツももっと伸びてくるだろう。当然のごとくNHK杯優勝だった。


 2位のアボットは4回転なしのプログラム構成だったが、音楽との調和とスケーティングの質の良さとのバランスの取れた演技構成だった。15歳の新鋭、羽生は表彰台には上がらなかったものの、ジョニー・ウエァーがデザインし、母が製作したコスチュームを着て初参加。世界中から注目されるに値する演技。これからまだまだ伸びると言うことを感じた。次回は第2、3戦目を振り返る。