「吸血鬼ストラセック」。。。 | 怒りくまのブログ(仮)

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気が向いた時、だらだら書いてます
一部、ネタバレもあるのでご注意を

今回はコチラの少し変わった作品を鑑賞

 

【吸血鬼ストラセック】

 

「ステファンは今もどこかで生きている」

そう呟くカール・テオドア・ドライヤー

彼は1910年10月の事を回想する。。。

とある人物を探すカールは"セルビア"へ

小さな村はずれにある墓石の前に座り

辿り着くのがわずかに遅かった事を悟る

墓碑銘は"ミレーナ・ストラセック"

 

(まださほど古くない墓碑)

 

謎の人物"ストラセック卿"との恋に落ち

1898年に男の子をもうけたミレーナ

男の子は"ステファン"と名付けられたが

それからすぐにストラセック卿は失踪

彼から届く仕送りで母子は生活していた

が、気苦労は続きミレーナは病に倒れ

1910年夏、35歳の若さでこの世を去り

 

(どこか気品の漂う少年ステファン)

 

ステファン・ストラセック。。。12歳

生前、母親は父親の使いが迎えに来ても

一緒に行ってはいけないと言い聞かせ

ステファンは頑なにその教えを守り続け

村人にも関わらず静かに暮らしていた

しかし夜になると父親の使いという男が

執拗にステファンを連れ去ろうと接近

 

(夜にしか現れない謎の紳士)

 

(怯えて隠れるしかないステファン)

 

身を隠しやり過ごしていたステファン

村人たちも幼い彼と村の秩序を守るため

見回りをしたりと協力的だったけれど

いつまでもそんな生活が続くはずはなく

父親の使いたちが流した流言なのか?

ステファンのよくない噂も聞こえ始めて

彼は追われるように村を去ることに

 

(貨物列車の荷物に紛れ。。。)

 

どこでステファンの存在を知ったのか?

彼に会うため村へとやって来たカール

しかし既に村を出た後で足取りは途絶え

残されたのは無人の家とミレーナの墓

あの時、会う事は叶わなかったけれど

それでも"ステファン・ストラセック"は

今もどこかで生きていると信じている

 

(佇むカール・テオドア・ドライヤー)

 

ステファンが村を出てから数年が過ぎて

冬のアルプスの自然を取材するために

フランスからスイスを訪れた女性記者は

山奥で道に迷い古い山小屋に辿り着く

そこにはひとりの"青年"が暮らしていて

女性のために温かい食事と寝床を提供

自分は牛小屋で休むと山小屋を出て行き

 

(もしかして。。。ステファン?)

 

翌日、道が悪く山を下りるのは困難と

もう一晩だけ泊ることになった女性だが

夜しか活動しない青年を不思議に思い

個人的な質問を次々と投げかけて。。。

青年はどこか迷惑そうなそぶりを見せ

そして夜が更けてふと目が覚めた女性が

深夜の森へ入ると何者かに襲われる!

 

(女性に覆いかぶさる青年!)

 

しかし我に返った青年は女性から離れる

と、その時!女性を探す捜索隊の声が

「もうここにはいられない」

悲し気な表情を浮かべそう呟く青年は

自分は夜の色の無い世界しか知らないと

その世界でしか生きて行けないと告げ

暗闇のなかへとその姿を消してしまって

 

(安息の地のはずが。。。)

 

救助された女性は麓の村の神父に会うと

青年に関する驚きの事実を聞かされる

「村人たちは彼の存在をみな知っている」

彼がどこから来たのかは分からないが

夜の世界に生きる者だとうすうす感じて

村に迷惑をかけないよう暮らす青年を

村人たちはそっと見守り続けていたとか

女性が来なければ今も彼はあの場所で

その頃、安息の地を求め山を登る青年は

凍えるような寒さと雪に埋もれ。。。

 

(眠っているのか?それとも)

 

女性に責任はない仕方ない事だったと

神父はいたわるような言葉を女性にかけ

女性はフランスの自宅へと戻ったが

「あの青年は今もどこかで生きている」

言い知れない確信のようなものを感じ

。。。エンドロールへ

 

隠された出生の秘密に翻弄されながら

けして他人を傷つけずひっそりと暮らす

"ステファン・ストラセック"の物語を

カール・テオドア・ドライヤーの回想と

彼と出会った女性記者の言葉で綴って

モノクロ映像と最低限のセリフで描いた

1900年代初頭のクラシックな。。。

作品に見せかけた?1982年制作の本作

 

いや、言われなきゃ分かんないでしょ

映像の粗さのような見た目だけではなく

カメラのアングルや間の取り方なども

いつも観てるクラシック作品とソックリ

もちろんそんな"作風"だけではなくて

不気味なほど静まり返ったシーンが続き

ほとんど動きはないけど魅せる演出と

その絵力はなかなかのインパクトがあり

 

ストーリーもいわゆる"吸血鬼もの"とは

一線を画した独特の物語と人物設定で

自分が吸血鬼だと母からも知らされずに

"周囲と少し違う"とは分ってはいても

それが何かが分からず苦悩する幼少時代

自分が何者かを知ったうえで身を潜め

人知れず山奥で隠遁生活を送る青年時代

迷惑をかけるくらいなら自分が消える

優しさ。。。とは違う?切なさや悲哀を

淡々と描くところは思わず唸りました

ま、とはいえ面白いかと言われると微妙

観る人を選ぶ作品ではありましたね

 

ちなみにピンときた方も多いかもですが

カール・テオドア・ドライヤーといえば

邦題「ヴァンパイア」(1932年)など

多くの作品を世に送り出した監督さんで

そこから拝借した役名なんでしょうね

 

クラシックな作品のような雰囲気ながら

吸血鬼として生まれた少年の苦労や

それでも生きることを選んだ悲哀を描く

近年に制作されたスイス産の本作

気になった方は機会があれば配信でぜひ

 

🦇