(続)過去問ひとり答練~予備H28民事実務基礎 | ついたてのブログ

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第1 設問1

1 (1)について

(1)   法的手段

処分禁止の仮処分及び占有移転禁止の仮処分(民保法23条1項)の申立て

(2)   理由

Yに対して勝訴判決を得ても、判決効は口頭弁論終結前の承継人に及ばない(民訴法115条1項)。同承継人に判決効を及ぼすためには、訴訟引受の申立て(同法50条1項)をする必要がある。しかし、処分及び占有移転の事実に気付かず、同申立てができないおそれがある。

2 (2)について

YはXに対し甲土地について真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

YはXに対し甲土地を明け渡せ。

3 (3)について

イ AはXに対し平成27年6月1日甲土地を代金1000万円で売った。

ウ Yは現在甲土地を占有している。

第2 設問2

1 抗弁の内容

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

2 理由

Yは所有者Aから甲土地を本件第2売買契約により取得しており、「第三者」(民法177条)に当たる。そして、Yは同契約に基づき登記を具備している。よって、甲土地所有権は確定的にYに帰属することになる。したがって、Xに甲土地所有権が一度も帰属していなかったこととなる。以上より、同抗弁は、請求原因による法律効果(請求権の発生)の発生を障害する。

第3 設問3

1 エに入る具体的事実

Yは、本件第2売買契約締結の際、本件第1売買契約締結の事実を知っていた。

2 理由

背信的悪意者は自由競争を逸脱し「第三者」(民法177条)に当たらない。よって、背信的悪意者に対しては登記なくして不動産所有権を対抗できる。したがって、Yが背信的悪意者であることは、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁による法律効果(請求権の発生の障害)の発生を障害するので、再抗弁となる。エは、Yの悪意を基礎付ける事実である。

第4 設問4

1 本件念書は、本件第2売買契約締結の日である平成27年8月1日を作成日とする。そして、YがAに対し甲土地の転売利益の3割を謝礼として支払う旨の記載がある。

よって、Yが、本件第2売買契約締結の際、転売目的を有していたことが認められる。

2 同年9月1日に、XがY宅を訪れた際、Yが2000万円という金額を示してXに甲土地の買取りの打診をした点で、XYの供述は一致する。また、Yの供述より、Yが、当時の甲土地の時価が1000万円であることを知っていたことが認められる。

本件第2売買契約からわずか1か月後に、当時の時価の倍の代金を提示してYがXに対し甲土地の買取りを打診したことは、Yが、本件第2売買契約締結の際、Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していたことを推認させる。

3 Yが現在甲土地を資材置場として使用している点で、XYの供述は一致する。このことは、Yが甲土地を転売目的で購入したのではないことを推認させる。

しかし、Xの供述によると、置かれている資材は大した分量ではなく、それ以外に運搬用のトラックが2台止まっているにすぎない。甲土地の転売先が決まれば、同資材及びトラックを移動させることは容易である。よって、Yが現在甲土地を資材置場として使用していることは、Yが甲土地を転売目的で購入したことと矛盾しない。

4 したがって、Yが、本件第2売買契約の際、Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していたことが認められる。

(1342字)

 

※第1.3イ:YはAが所有していたことは認めている→XはAから所有権を承継したことさえ摘示すれば自己の現所有を示したことになる(柴田講師「問題と解説」P.89)。

※第2:①「抗弁の内容(当該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。)」という問いに対する答えとしては、抗弁の名称、大ブロックにつけるタイトルを記載すればよい。②「抗弁となる理由」という問いに対する答えとしては、抗弁に当たる事実が存在した場合の法的効果を説明し、その効果が請求原因事実による権利の発生を妨げる効果を持つことを示すことになる(柴田講師「問題と解説」P.90)。

※第4:①立証のテーマは「Yが、本件第2売買契約の際Xに対して甲土地高値買い取らせる目的を有していたこと」である。②確実性の高い事実・証拠を意識して検討する(Ex.本件念書の存在は確実性の高い証拠である。XYの供述については、両者が一致している部分を重視する)(studyweb5氏)。