中国の新・労働契約法は「終身雇用」を求めるものではない | 中国でソーシャルゲームを配信してる日本人のブログ

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以下田中信彦氏の記事

2007年に可決された中国の「労働契約法」法案について、日本のメディアでは「労使間で終身雇用契約を結ぶよう求めたもの」などとする報道が相次いでいる。しかしこの「終身雇用」という表現はあまりに通俗的で、誤解を招きやすい。この法案は決して「終身雇用」を求めるものではない。
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中国の新・労働契約法は全国人民代表大会(日本の国会に相当)常務委員会で6月29日に可決された、労働者の権利保護を強化などを柱とする法律で、日本国内でも大きく報道された。

「終身雇用」は日本の概念

今回の労働契約法では、確かに、勤続10年、または期限付きの雇用契約を2回連続して更新した場合などに「無固定期限の雇用契約」を労働者と締結する義務があるといった内容の規定が盛り込まれている。ここに長期雇用を促進しようという中国政府の政策的な意図があることは確かだ。

しかし「無固定期限」の労働契約と「終身雇用」とは全く異なる概念である。おそらく新聞の記者は、日本国内でも「期限の定めのない雇用契約」が俗に「終身雇用」と呼ばれていることから、中国の「無固定期限」の労働契約も「終身雇用」と表現したのだろうが、この表現は正確でないばかりか、新たな誤解と混乱を生みかねない不穏当な表現と言うしかない。

日本で言う「終身雇用」とは、ひとつの企業に定年まで勤務するという、日本の大手企業を中心に比較的広く定着していた一種の習慣を指す言葉であって、法律用語でもなければ、人事的な専門用語でもない。
 
だいたい「終身雇用契約」とは何か。「死ぬまでこの企業で雇用します(働きます)」という契約を指すのだろうか。そんなことができるはずがない。日本の労働基準法でも、雇用契約に「期限が定められていない」だけであって、企業に終身雇用の義務などない。日本では裁判所が判例で企業の解雇権をとても厳しく解釈しているので、大手企業は解雇が非常に難しい状況になっているわけで、契約とは別の話だ。

法施行後も雇用契約の解除はできる

今回の法改正に「雇用期間を伸ばそう」という中国政府の意図があることは間違いないない。しかし、それは「終身雇用を求める」こととは違う。

同法四十条(二)では「労働者がその仕事をするに足る能力を持たず、教育研修や配置替えなどを経ても、なおかつ仕事の任に耐えない場合」(訳は筆者)は、30日前に通告するか、1カ月ぶんの給与を余分に支払うことで無固定期限の労働契約であっても解除できる規定になっている。

もちろん裁判所の判断や、中国政府の「行政指導」みたいな形で、日本のように事実上、解雇権を縛り、解雇できなくするという方法は有り得るだろう。しかし、この法律が制定された背景が日本とは全く違う。

日本では、企業に長く勤めたい、クビにしないでほしいと望んでいるのは被雇用者の側であって、会社はできるだけフリーハンドでいたいと思っている。しかし中国では逆に、少なくとも、まともな経営を志向している企業に関して言えば、従業員の勤続期間を伸ばしたいのは企業の側であって、政府も技能蓄積の観点から、雇用の長期化を望んでいる。どんどん辞めていくのは労働者のほうなのである。

もちろん、これまでの1年単位が普通だった労働契約から、無固定期限の労働契約に変わることになれば、従来のように、辞めてほしい社員を契約期間終了まで待って、契約終了という形で社外に出すという「自然な解雇」はできなくなる。

そのため、先に挙げた同法四十条(二)の適用ができるようにするために、企業は一定の努力が必要になる。能力を発揮できない社員に対して、一定期間の教育研修を施したり、配置換えをしたりするほか、「どのように能力が発揮できないのか」「どのような教育研修を行ったのか」などの具体的なエビデンス(証拠)を残しておくことが必要になる。

またその前提として、「なぜその社員が仕事をこなすに足るだけの能力がないと判断したのか」、その根拠になる仕事の与え方、評価基準、評価方法などを事前に明確なものにし、従業員の納得が得られる形にしておくことが必要である。こうしたことをしっかり確立しておけば、無固定期限の労働契約になっても契約を解除することは可能である。

こうした面で企業の負担が必要になることは間違いないが、こうしたことは、法律に言われなくても当然やっておくべきことであり、効果的なマネジメントを行って、企業が業績をあげていくうえでは欠かせないことである。

まともな企業に対する影響は軽微

つまり、これまでまともな人事制度を持ち、しっかりと運用してきた企業であれば、今回の労働契約法は追い風にこそなる可能性はあるが、大きな問題はないと考えていいだろう。逆に言えば、今回の法律の施行が大きな負担感になるようであれば、それはこれまでの人事、評価制度が不十分だったことの表れにほかならない。

この法律で最も大きな影響を受けるのは、これまでまともな人事制度も評価制度もなく、ただ人を安く使い捨てることしか念頭になかったような企業である。日系企業にはそういうところはほとんどないが、質の低い民営企業や、香港、台湾系の企業などの一部では、この法律の制定に対して大きな不満が巻き起こっているという。

全体的に見て、今回の労働契約法の成立は、日系企業にとっては恐れる必要はなく、長期的にはメリットのほうが大きい。新しい法律の細部に合わせた微調整は必要だが、拙速な行動は不要であり、「長期雇用」を促進しようという法律の趣旨をいかに経営に生かして競争に勝っていくかを考えるべきである。

【上記はほぼ転記 出典は以下】
http://www.actiblog.com/tanaka/38982