Wish you were here  060  | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

健太君たちと一緒に外に出た

今朝作った雪だるまの撮影に向かった二人

貴方とお父さんが外まで見送りに出てくれた

 

「雪だるま溶けてないですね」

貴方が安堵の表情で笑みを浮かべる

 

「あそこだけ寒いのかも(笑)」

 

大ちゃんならやりかねない

 

「あり得ますね(笑)」

 

お父さんが俺の横に並んで

 

「美味しくなる隠し味を忘れるなよ」

 

そう言って背中をポンと叩いた

手のひらから優しさが伝わってきて

ちょっと泣きそうになる

(明日、今日の報告とお礼を伝えます)

 

「はい」

 

美味しく食べて貰うために

気持ちを込めて作る

 

「翔さんの気持ち

 ぜったいに伝わります」

 

貴方の言葉は百人力

それだけで、出来る気がしてくるから不思議だ

それに5人の応援団も付いてる

そう思ったら、気負いも迷いも消えた

 

「おにいちゃん、おじさん

 いってきます!」

 

写真を撮ってご満悦な健太君を乗せた車が

駐車場を出ていき

その後を追うように俺も車を発進させた

 

車内から電話をすると

両親も弟も祖母宅に着いたらしい

 

今年は帰らないと言ってた弟が

同行してたのにはびっくりしたが

安全運転を心がけて車を走らせた

 

「ただいま」

 

声を掛けると

祖母が玄関まで出てきた

 

「遅かったわね」

 

「ちょっと時間が掛かっちゃって(笑)」

 

「何の時間?」

 

祖母には伝えていないから

不思議そうな顔をする 

 

「うん、蕎麦を作ってた」

 

「はい?」

 

何を言ってるのか分からないって顔をする

 

「お蕎麦は頂くから用意しないでって

 聞いてたけど ・・・

 翔さんが打ったの?」

 

それは間違いよね?って顔をする

いや、俺が作った蕎麦だよ(笑)

 

「俺が作ったんだ

 智君とお父さん

 師匠と健太君と一緒に」

 

お父さんと師匠の計らいで

全て自分で作った蕎麦を

持たせてくれた

 

「悟祖父ちゃんの味を再現できてるかは

 自信がないけど ・・・

 画伯直伝の蕎麦を食べてたお父さんが

 教えてくれたから ・・・ たぶん近い味」

 

祖母は考え込むよう俯いたまま

黙ってしまった ・・・

もしかして ・・・ 思い出したくなかった?

でも ・・・ 思い出して欲しい ・・

 

「祖母ちゃん、画伯祖父ちゃんの家では

 年越し蕎麦は男が作るんだって

 だから、祖母ちゃんが教わらなくても

 間違いではないよ

 それに ・・・ 」

 

「それに?」

 

「祖母ちゃん、年越し蕎麦だけは作ってたでしょ?」

 

おせちが高級料亭の物だったり

正月の食卓に並ぶものが

お取り寄せの物だったりしてたけど

何故か年越し蕎麦だけは作ってたんだ

その事を思い出して気が付いた

 

「ええ ・・・ それは作ってたわ ・・・」

 

「それでいいんだって ・・・

 例え、それが出来合いの蕎麦でも

 家族の為に作って皆で食べる

 それが悟祖父ちゃん

 画伯祖父ちゃんの想いを

 ちゃんと受け継いでる」

 

悟祖父ちゃんの想いはちゃんと繋がってた

だから負い目に感じる必要はない

 

「智ちゃんのお父さんが仰ったの?」

 

どこか縋りつくような眼差し

祖母ちゃん、もう降ろしていいんだよ

二人の父も悟祖父ちゃんも

そんな祖母ちゃんを望んではいない

 

「師匠も、蒼さんも大ちゃんも同じこと言ってた

 そう身構えないで ・・・

 皆で食べたら美味しいよ」

 

美味しさを求めるなら

お店に行けばいい

家族で囲むことが大事だって

伝えたかったんだ

だから俺の蕎麦でも

それなりに美味いと思う

 

「翔さん ・・・」

 

祖母ちゃんの瞳に光るものが見えた

もう、自分を許してあげよう ・・・

 

「樹が来てるってことは

 二人で作れってことだと思うんだ」

 

「じゃあ、手伝っちゃダメなの?」

 

「お蕎麦に関しては孫二人で作るよ

 他はお任せだけど」

 

「兄貴、祖母ちゃん、玄関で何を話しこんでるの?」

 

なかなか入ってこない俺たちに

痺れを切らしたのか

弟が顔を出した

 

「お前、年末は帰国しないって言ってたのに

 どうした?」

 

「それが ・・・ 今年は帰ろうかなって ・・・

 思いたったの」

 

きっと、悟祖父ちゃんが呼んだ気がする

 

「じゃあ、一緒に年越しそば作るぞ」

 

「はあ~?」

 

素っ頓狂な声を出すけど

そこは拒否できない

 

「翔さんが打った蕎麦ですって」

 

「え~~~~~~!」

 

そこまで驚かなくても

 

「食べられるの?」

驚いた後がその言葉?

 

「失礼な奴

 太鼓判押してもらってるから

 大丈夫だよ」

 

「だれに?」

 

「そば打ちの師匠に!

 それに、俺とお前が作るのに意味があるの」

 

「どんな意味?」

 

「それは後で教えるって

 お前、ミイラ取りがミイラになってるぞ

 ほら、早く行くぞ」

 

弟にの持つを持つよう目配せして

祖母の肩を抱いて中に入った

 

 

蕎麦の味は問題じゃない

(美味しいに越したことはないけど)

テーブルを囲んで食べる

それが伝えたい想い

 

 

二人で年越しそばを作った

(文句を言ってた弟も楽しそう)

 

薬味を切って(主に弟)

蕎麦を茹でて(俺担当)

ざるに盛り付ける(二人で)

(ちゃんと美味しくなれの呪文は唱えた)

 

少々不揃いで細くはない蕎麦だけど

これが俺の精一杯

そばつゆはお父さんの力作

 

「出来たよ

 年越し蕎麦,召し上がれ!」

 

祖母と母が揚げた天ぷらが加わり

かなり豪勢な年越し蕎麦となった

 

「頂きます」

 

祖母がどんな顔をするのか ・・・

蕎麦を口に運んだ瞬間

目をまん丸くして ・・・

もう一口蕎麦を啜る

 

みるみる瞳に大粒の涙

 

「祖母ちゃんどうしたの?」

弟はおろおろするばかり

 

隣に座ってた母はが箸を止めて

祖母の顔を見た

 

「すごく ・・・ 懐かしい味 ・・・

 どこかで食べた事が ・・・どこだっけ?」

 

母はもしかして食べた事があるのかも ・・・

悟祖父ちゃんの蕎麦を ・・・

 

「お父様が作ってくれた蕎麦

 そばつゆが 甘くないの ・・・」

 

そうか ・・・ そうだ ・・・

お父さんのそばつゆは甘みが少ない

これが画伯父ちゃんの味 ・・・

(今頃気が付いてる俺)

 

祖母ちゃんの瞳から涙が零れ落ちた

 

「もう食べられないって思ってたの ・・・

 翔さんのお陰ね ・・・

 ありがとう ・・・」

 

「これはこれで美味しいね」

 

「本当に翔がそばを打ったのか?」

 

父は半信半疑らしい

 

「こんな不揃いな蕎麦売ってないよ

 でも上手くできた方なんだよ」

 

最初は食べられたものじゃなかった ・・・

 

「お蕎麦の師匠ってどなたなの?」

 

母の素朴な疑問

 

「企業秘密(笑)」

 

母にどこまで話していいか分からない

だからそこは伏せるよ ・・・

 

「兄貴ばかり褒めてるけど

 薬味を切ったのは俺だからね」

 

ちょっと拗ねたように

「弟も褒めろ」という顔をした

 

「樹ちゃん 美味しいわよ」

 

祖母が嬉しそうに笑って

弟の肩を叩いた

 

画伯祖父ちゃんたちの食卓も

これくらいに賑やかだっただろうな ・・・

 

さて、俺も食べよう!

あ ・・・ 今までで最高の出来だ

ミッションは大成功!

 

貴方も食べてくれてるかな?

 

 

 

 

<あと一話です>