Carry on 12 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

全速力で走った … カズじゃない
カズは関係ないんだ

僕の家の前に、黒山の人だかり

「離せ … 触るな …」
カズの叫び声が聞こえる

僕が家に来いって言ったばっかりに
巻き込んでしまった

「神託は降りたのだ、拒むことは出来ない
泣くことはないのだ
神の愛を受け止め、天上に向かうのだ
このような名誉を与えられたのだ
喜んで然るべき」

集まった人々に聞こえるように
導師が仰々しく告げる

「嫌だ … 神様のもとになんか行きたくない
ショー … ショー … 助けて」

ずっと抵抗して叫んでいたのだろう
声が枯れて … 最後は声ではなく悲鳴 …

人だかりを掻き分けて
ようやく家の前に
俺を見つけたカズが縋り付く様な眼差しで

「ショー…」
って、力なく呟いた

「やめろ!! カズに触るな
ここは僕の家、カズは関係ない
あの畑も全て僕の持ち物
だから、その汚ならしい手を離せ」

兵士を押し退けて、カズの肩を抱いた

「彼が来てから起こった奇跡
お主の持ち物で有っても関係ない」

「神様は贄など望んでない
捧げ物など無意味
この家も畑も欲しいならくれてやる
だけど、カズはダメだ
僕の唯一の家族、弟なんだ」

「ショー … 」

カズは泣きながら
僕にしがみついた

「カズ … いい、よく聞いて
僕が背中を押したら走るんだ
神様は捧げ物等望んでない
一緒にこの街を出るんだ」

「うん … わかった」

神様の声なんか聞いたこともない導師
権力を見せるために産み出された習慣

「神の言葉を信じぬ不届き者
この者達を引っ捕らえろ
丁度よい、捧げ物が二人なら
より強固な神殿が出来るだろう」

何が神託だ … 今の言葉が証拠

「神様の声など聞いてない
導師の言葉は嘘なんだ」
大きな声で叫び続ける

「カズ、お前だけ逃げろ
僕も後から行く」

「やだ…一緒にいる」

「 別々に逃げて、いつもの場所で落ち合おう
もう一度大騒ぎする
その隙に逃げろ、わかったな」

カズはずっと頭を振って否定し続ける

僕の夢は叶ったんだ
あの人に逢えた、話も出来た


「聞いてくれ、導師の言葉は全て嘘だ
神託など聞いたことなどない」

「黙れ、コイツの口を塞げ」

「じゃあ、神様の声はどんな声
いつ聞いたの?
神様はどんな姿をしている
答えろ!!」
兵士の槍の柄を掴んで振り回す

僕たちを取り囲んでいた兵士が怯んだ

「今だ!カズ走れ!」

「ショー待ってるね」

思いっきり、カズの背中を押した
カズは全速力で人垣の中を縫うよう走り去った

コイツら顔など覚えていない
逃げ切ったら生き延びることが出来る

カズ、少しの間だったけど楽しかった
僕の弟になってくれて
ありがとう

サトシ、もう一度だけ会いたかった
明日の約束は守れそうにない

神様に恋した俺の罪なのかな…



僕は捕まって連行される
早ければ今日、遅ければ明日
捧げ物として人柱にされる


逃げる術が見つからない…


俯きながら歩き始めると
僕の畑がある方から声がした

「神の庭が枯れてしまった」
って、誰かが大きな声で叫んだ


慌てた兵士が畑に向かう
俺の側にいた導師が

「今の言葉が真実なら
お前の暴言が神の怒りを買ったのだ
その身を持って、罪を償ってもらう」

「僕は何もしていない」

「もう遅い、残念だな
天上に行けたかもしれないのに」

卑屈な顔で僕を嘲笑った


この人が神の声を聞く導師
皆、何を見てるんだろう?

慈悲の心も、人を導くことも出来ない

 


そうか、僕は本物の神様に会ったからなんだ

烈しい風が吹いた
貴方の薫りを乗せた風が

砂埃を上げて、僕の回りに壁を作る


「ショー … 手を掴め …」

頭の中に響く声
慌てて空を見上げたら
貴方が俺に向かって手を差し出してた

 

 

 

僕はその手を強く握りしめた






〈続きます〉