間に合ったのかな … 凄く急いでたから
早朝バイトに3時からバイトって
合間に練習して、夜はダンスレッスン
いつ寝てるんだろう
ダンスでは食べていけないって言ってたけど
あれだけ踊れるのに…
全くダンスの事知らない俺が感動したんだ
あの人のダンスは人を惹き付ける魅力がある
あのギャップは … 反則だと思う
はにかんだ笑顔なんか、その辺の女性より可愛い
瞼の内側に浮かぶのは、フニャッとした笑顔と
スイッチの入った集中した顔
ダメだ … 考えるだけで顔が緩む
携帯を出して睨めっこ …
もう大丈夫かな…
見てくれたら返信くれるはず
『バイト、間に合いましたか?』
気の利いた言葉が浮かばない
取りあえずこれだけ …
震えながら送信のボタンを押した
「遅くなっても」って言ってくれたから
待つことにしよう
時計見たら午後8時 … いくらなんでも早すぎた
テーブルに携帯を置いて
何も出来ないまま、鳴らない携帯を眺めてた
一時間待って風呂に入った
それから缶ビール飲みながらテレビをみた
映し出されてたのは古い映画
内容が頭に入ってこない
今まで付き合った相手に
ここまで恋い焦がれた事はない
人を好きになるって
こんなにもどかしくて
切ないんだって初めて知った
ぼんやり観てた映画も、いつのまにか終わり
今日も後一時間 …
ため息をついて、鳴らない携帯を恨めしく見つめた
諦めて寝る準備をしてたら…
控えめにラインの入る音がした
慌てて画面を見ると、貴方からだった
『遅くなってごめんなさい
バイトは間に合いました
心配してくれて、ありがとう』
嬉しくて … それだけで舞い上がって
『おかえりなさい
今、帰ってきたの?』
『はい、今、戻ったばかり
もしかして、待ってましたか?』
待ってた … ずっと
『お疲れ様です
明日も早いんだよね?』
『はい、櫻井さんも明日仕事ですね
ごめんなさい、早く休んで下さい
オイラも風呂に入って寝ます
おやすみなさい』
その後、可愛いスタンプが送られてきた
いや、まだ話たい
慌てて返信した
『大野さんのお休みはいつですか?
良かったら、どこか遊びに行きませんか?』
送った後、暫く返信がない
お風呂入っちゃったのかな…
いつまでたっても返ってこないライン
焦りすぎたかな…
じっと眺めてると、返信が入った
『バイト休みの日は、昨日話した舞台の稽古があるので
休みは暫くはありません
土曜なら朝のバイト終わった後
少し空き時間がありますが』
よっしゃあ … 二人で会える
空き時間って、昨日と同じって事だよね
『じゃあ、今度の土曜にお店の横で待ってます
どこか、映画でも行きましょう』
OKして、お願い
『わかりました
えっと…昨日と同じ時間ですね
じゃあ、今度の土曜に…』
やった!思わずガッツポーズ
強引すぎたかなぁ … いや一年温めた想いだから
ここは押すだけ
『ありがとう、楽しみにしてます
じゃあ、ゆっくり休んで下さい
また明日、お休みなさい』
そう返すと
さっきと同じ、おやすみなさいのスタンプが返ってきた
一週間が待ち遠しい
今度はどこに行こうか…
胸の高鳴りが押さえられない
俺、今凄いデレた顔してる
明日、普通に会えるかな …
〈続きます〉