執事の務め 41 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

この家のご当主様は仕事熱心な堅物

確かに鈍感な所もあるけど、誠実で一途(多分)な方だと思っている


あの壁のメッセージ ・・・ 

ブルームーンは日時を表していると推測できる

今年の7月は満月が2回訪れる


一回目がファーストムーン、2回目がブルームーンと呼ばれ

2回目のブルームーンを見ると幸せになれるって言い伝えがあるらしい



7月31日が二度目の満月、この月が見えるどこかで待ってるってメッセージ


最初はこの敷地の小川かなとも思ったけど

3人が描かれている時点であの場所ではない

どこかに、お二人の思い出の場所があるのかも知れない



困った事にショウ様は、最初の謎解きから躓いてる

正直ロマンに無縁な方には難題、だって星空だとか見る人じゃない




私が出したヒントに気付いて

得意のネットとかで調べて下されば分かるはずなんですが




辿り着けなかった時の為に ・・・ 





当家より車で15分くらいの場所

こんもりとした森の中に入って行くと門扉が現れる

門扉の傍には警備員が常駐している



「私、ショウ・サクライの家の執事でございます

 殿下にお目通りしたいのですが、お取次ぎいただけませんか?」


先日、ジュンがここに向かった事は確認が取れている

警備員は少し困った顔をして


「申し訳ありませんが、前もってお約束頂かなければ

 お取次ぎする事も出来ません」

って、そっけない返事



「先日まで私共の城に滞在されていらっしゃった

 殿下の忘れ物を届けに参りました

 大切な物の為、直接お渡ししたいのですが」


ここは低姿勢 ・・・ 私も執事の端くれ(有能な)

申し訳なさそうに、困った振りをして ・・・

上目遣いで頼み込む



「少しお待ちいただけますか?

 30日までは誰も通さないようにと、仰せつかっていますので

 確認させていただきます」



日時は正解31日ってことで

場所は ・・・ この敷地内のどこかにあるって事



いざとなれば31日、ショウ様をこの場所で降ろせばいい



警備員は中と連絡を取ったらしく

駆け足で俺の車まで駆け寄って来て



「カズナリ・ニノミヤ様ですか?」

って訊ねる


極上の執事スマイルで


「はい、私カズナリ・ニノミヤでございます」


そう答えている、私の車の中を覗き込むように見回して


「どなたかお連れ様がいらっしゃるとかは ・・・・ ないですね

 殿下が、カズナリ様お一人ならお会いすると

 どうぞお入りください」


って、笑顔で伝える警備員



閉じられていた扉がゆっくりと開いて

警備員は中に入るように手で促す


丁寧に御礼を告げて、車をゆっくり走らせる



道なりを進むと森を抜けて、小高い丘が見えてくる

その奥に湖 ・・・ 丘の上に小さめな城

(きっとコテージだとかぬかすんだろうな)

車寄せまで行くと執事?が待ってた

ジュンの父親?じゃなさそう ・・・ 同い年くらい


車から降りると


「カズナリ様ですね、車のカギを預からせていただきます

 案内は私がいたしますので」


そう言って、鍵を使用人に渡して

俺より少し前を歩いて案内する


通された場所は、湖の見えるデッキ

テーブルとイス ・・・ それに大きなハンモックチェアー


殿下の姿は見えないけど、ハンモックチェアーが揺れてる 



「殿下、カズナリ様をお連れしました」

そう執事らしき人が告げると



「ありがとう、下がってくれて大丈夫」

そう声が聞こえる


ハンモックチェアーが動きを止めて

さっきまで見えなかった足が、デッキに降ろされた


「良くここが分かったね ・・・ ジュンの後でも尾行したのかな ・・」


そう言って、クスッて笑った



「見当はついていたって事ですか?」

そう訊ねると、当然と言う顔で


「あの日ジュンに言ったんだ

 抜かりのない優秀な執事だから居場所はすぐばれる

 ここに来るのは控えるようにって

 予想通り、やっぱりあの日尾行を付けてたって事だね」



「ええ、私はあの家の執事、当主を守る為ならどんな事も致します

 単刀直入にお伺いいたします、ショウ様の事どうされるおつもりですか」



サトシ様は、少しだけ淋し気な眼差しで俺を見つめて



「どうする?俺に選択権は無い ・・・ 全てはショウが決めること

 彼が気が付かなければそれまで ・・・

 期限まで決めた、過ぎれば知らなかった頃に戻るだけ

  ・・・ ずるいのかな ・・・」



「いいえ、お立場を考えたら ・・・ 差し出がましい事を言いました

 申し訳ありません ・・・

 ただ、殿下はショウ様が鈍いことはご存じのはず

 あのメッセージにお気づきになられるとお思いですか?」



「ふふっ ・・・ 鈍感なのは知ってる ・・・ でも誰よりも誠実 ・・・

 気付かなければ縁がなかった ・・・ 

 それでいい ・・・ 会ってみたいって思わなければ良かったな」


この方は、諦めることに慣れていらっしゃる

切なげな横顔が ・・・ この人の想いを伝える



「この1年本当に楽しかった

 ショウに取って俺は使用人で … ふっ ・・・ それがすごく新鮮で

 自由にさせて貰えて、彼のご両親にも感謝している

 マサキにも ・・・ カズナリには世話を掛けた

 もうすぐ終わる ・・・ それまで見守っていてくれないか ・・・」


そう言って、曖昧に微笑んで湖面を眺めた



「ショウ様はご自分のお気持ちにお気づき ・・・」


言いかけた言葉を遮って、頭を振りながら


「それ以上は言わなくて良い ・・・

 知らなくて良い事も有る ・・・ それはショウも同じ ・・・

 交差しないのなら、いずれ時が解決してくれる」



何も言い返す言葉が見つからなかった

俺がどうこう出来る問題じゃない ・・・



「すみません、出過ぎたことを ・・・ 

 ショウ様には、ここに来た事を伝えるつもりはありません

 あの方は必ず、サトシ様に辿り着けると信じておりますから

 ご静養をされている所に押しかけ、申し訳ありませんでした」



恐縮した顔で謝罪すると

サトシ様は大きくため息をついて


「畏まった言葉でしか話さないんだな ・・・ 

 俺はカズナリのサトシ呼びも気に入っていたんだけど

 

 ・・・・・・・ キラキラした時間は終わったって事なんだな ・・・

 

 カズナリはカズナリの居場所に ・・・ 元気で ・・・」



そう言って、立ち上がったサトシ様は傍まで寄って来て俺の手を握り



「執事が城を留守にしてはいけない、

 カズナリの気遣いに感謝している、ありがとう」

そう言って、優しく微笑んだ



「俺だって、サトシって呼びたい ・・・

 カズナリとサトシ、その関係が一番心地良かった

 俺は、サトシにも幸せになって欲しい ・・・

 二人の為ならどんな事でも手伝うから、憶えて置いて」



泣きそうになった ・・・ サトシの顔がまともに見れない

俺にとっても新鮮で楽しい1年だったから



「カズナリが味方ってのは心強いな ・・・

 うん、憶えて置く ・・・ 見送らないよ ・・・ ここで」



サトシは軽く抱きしめて、俺から離れて

来た時と同じように、ハンモックチェアーにすっぽり収まって

姿が見えなくなった