Ray of hope 92 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

影山の家から車で5分くらいの所にブナの原生林が残る山がある

春から秋までの3シーズン、トレッキングに来る人が多い


この山の奥、人があまり立ち入らない場所にブナの森があり

随分昔から、保護地域に指定され立ち入りも制限されている


何でも明治の時代から立ち入り制限があったらしい

俺が迷いこんだ森は、その森の近くだったんだろうか




「ねえ、祖母ちゃん昔さぁ 俺が迷いこんだ森ってどのあたりだったの」


助手席の祖母に聞くと



「あの時は大変だったのよ、まだ小学生 ・・・ 3,4年の頃

 夜の9時ころ寝るからって客間の布団に入ったのよ

 30分して覗きに行ったらいないから大騒ぎよ

 近所の人にも探してもらったの」



「何で分かったの、山に行ったって」



「あの時は ・・・ 遊びに来た日からずっと言ってたのよ

 あの山に、凄く星がきれいに見える場所があるって

 だから行ってみたいんだって

 一度も登った事がないのに」



「それで、捜してくれたの?どの辺りに居た」



「登山道に入る辺り ・・・ 大きな木を背もたれにして眠ってたの

 皆が森に入る前に疲れて眠ったんだろうって

 森に入ってたらその日は捜せなかった、見つけた時は胸を撫で下ろしたのよ

 後にも先にも、あれほど肝を冷やしたことはなかったわ」


ちょっと怒った顔で俺を見つめる祖母ちゃん

面目ない ・・・ 頭を掻くしかないよね


可笑しいなぁ ・・・ 俺は森の中で星空を見てる



「あの時、降ってきそうなくらい綺麗な星空を見たんだよ」

って、祖母ちゃんに言うと



「そう、ずっと言ってたの綺麗な星空を見たって ・・・

 もし本当なら、森の神様が翔さんを麓まで連れてきてくれたのね」


「何でそう思うの?」

って聞くと


「あの時、翔さんケガもなくて、その上服すら汚れてなかったのよ」

って、不思議そうに答えた



「ホントに?森の中にね倒木がベンチみたいになってて、寝転んだんだけど ・・・

 感触を覚えてる、その空間の匂いも ・・・ 夢だったんだろうか

 あれから一度もたどり着けなかった ・・・

 明日の朝、登ろうと思ってる、ブナの森まで行けるかな?」



「ブナの森?・・・あそこは入れないわよ」



「立ち入り制限区域なの ・・・ あの山って国所有なの ・・・ 」



「あの山は個人所有、一部立ち入りを禁止されてる場所がある

 確かブナの森がそうだったはず」



「個人所有って、あの山一帯がそうなの?」



「ええ、M財閥が所有してるはずよ」



「そうなんだ、でも行ってみるよ、早く出かけるから寝てて良いからね」



「年寄りは朝が早いのよ、起こしてあげるは」

そう言ってクスクス笑った



途中、コンビニで買い物をして影山の家には夜中に到着した




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



食事を済ませて、サトシは部屋に戻って行った

雅紀はジュンさんと一緒に出掛けて行った



出かける準備を済ませて、玄関まで行くと


サトシのお父さんが待っていた

食堂に居た時の服装とは違って、普段サトシが着ていそうな

カジュアルな装い ・・・ エルフってお洒落だったか ・・・



「突然、すまなかったね」

って、優しく笑う ・・・ やっぱり親子だな醸し出す雰囲気が似てる



「あの、どちらに行くんですか」

って尋ねると



「サトシが暮らした場所に行こうと思っています

 あの子を育んだ国に ・・・ 私は一番大事な時期に一緒に居られなかった

 君が一番サトシの事を知っているから、案内して貰えますか」


だからか、サトシが着てた服に似たのを ・・・



「国を空けても大丈夫なんですか?」



「その心配はいらない ・・・ この国にはサトシがいる ・・・

 あの子は毎日歌を謳う ・・・ それだけでこの国は守られる

 赦しと癒しの歌 ・・・ 特別なエルフ ・・・ 」


そう言って、少し悲しそうな顔をした



「特別なエルフ?」

俺の言葉を聞き流して



「じゃあ行きましょう、この屋敷に来た時使った扉から

 サトシの住んでいた場所に」

そう言って歩き始めた



俺は頭を振って

「違います、サトシが住んでいる場所です」

って訂正すると



「サトシが帰りたい場所だね」

って、淋しそうに笑った



王位を継いで欲しいなんて思っていない

サトシの好きなように生きて欲しいって思ってる

人になる事も許してる ・・・・

でも出来ない事なのか ・・・ 特別なエルフ?



「あの、サトシが人になることは難しい事なんですか?」



「難しい事だと思う ・・・ あの子は ・・・ 王になる為に生まれてきた

 私は知らなかった、私が人の世界で暮らせば

 自分の王位と言う枷は無くなると思っていたから ・・・

 あの子が生まれた時点で、王位継承者は決まった

 つまり、その時点で私は王になっていた

 この国に居た王、私の父は力を失くし名前だけの王となり

 国は荒れた ・・・ 全ては玉座の意志」



王位を捨てて、親子3人の生活を望んだサトシのお父さん

サトシのように、人の世界で奥さんが生まれ変わるのを待つ決意をしていた



「サトシを人の世界に逃がしたのは、この国から遠ざける為

 ジュンさんが王位に就けば、貴方はサトシと暮らすために人の世界に ・・・」



そう尋ねると、少し苦笑いして


「あの時はまだ、サトシが特別なエルフだとは知らなかった

 ジュンは王位に就けると思っていたからね

 一緒に暮らせなくても、人の世界でサトシの近くで暮らすつもりだった」


そう言って、俯いて

「全ては私が無知だったせいで ・・・」 って小さい声で呟いた



彼は俺を連れて、光の道を使い

俺達が住んでいる家の近く、あの屋敷にある楠に着いた



「案内して貰っていいかな」

そう言って、静かに笑った



「こちらです、この街には100年くらい住んでいます

 この国の時間軸ですが ・・・ 」




向うでは10日くらいしか経ってないのに

この世界はすっかり秋 ・・・ サトシ時間が ・・・ 



お店まで案内すると


「ここで暮らしているんだね ・・・ やはり森の傍に 

 人は便利さのために自然を手放した ・・・ ここで歌っていただろう?」



「はい、毎日 ・・・」



「 ・・・・・ その歌が浄化してるんだよ ・・・

 あの子の歌が風に乗って、大地にふりそそぐ ・・・

 毎朝謳っている歌も、この世界に降り注いでいる」


そう言って、空を見上げた



「すみません、店の中にはいる事は出来ません

 サトシが結界を張っているので、鍵を持っていても無理なんです」

って、すまなさそう話すと



頷きながら

「分かっている、この結界は私には破れない

 サトシは何をしていたんだね」



「古い物を売買していました、ここに来た頃は薬の調合をしてましたが」



「薬草を ・・・ さっきの屋敷の方にですね 

 ・・・ あの屋敷の持ち主はサトシの祖父なんです」



だからなんだ、どこに居ても巡り会う ・・・



「なぜ解ったんです?」



「私も精霊や妖精とは話せるんです、サトシのように物とは話せませんがね」



「あの屋敷の方はサトシに取っては親そのものでした

 この家も、あの森もサトシの為に守られてる」


サトシのお父さんは辛そうな顔で


「あの子はこの街で ・・・ 生きる気力を失くした ・・・

 私は何もできませんでした ・・・・ ただ息をしているだけ

 あの子の瞳は何も映さず、あの子の耳は閉ざされ

 どれだけ後悔したか ・・・ サトシをあそこまで追い詰めて ・・・

 抱きしめてあげる事も出来ない ・・・ 無力な自分 ・・・

 君が傍に居てくれたから、サトシは立ち直れたと ・・・

 本当にありがとう」


そう言って、上を向いて泪を堪えている


「あの時は俺も何もできませんでした ・・・ 愛する人の為に辛い別れを決意した

 その方が消えてしまった ・・・ サトシの強さだと思います」



「どんな方だったんだね」



「誠実で優しくて真っ直ぐで、陽の光のように温かい素敵な方です」



「その方は、今は ・・・」



「転生され巡り会いました、記憶を消しても呼び合って ・・・

 エルフの国に戻る前、サトシは全ての痕跡消したそうです」



「そうですか ・・・ だから人になりたいと

 人として巡り会いたいと ・・・・・ 切ない願い ・・・

 あの森に行きましょうか」


そう言って、屋敷の楠に戻っていく




楠から、あの森に飛ぶ


「この森は、サトシの結界だらけだね」

そう言って、苦笑するお父さん



「こっちの結界は私でも破れます」

そう言いながら、歩き出す



その先はサトシの大切な場所


「しっ!誰か来ます」

そう言って、木の陰に引っ張られる



木を踏みしめる音が聞こえる方を見つめていると

人影が見えてきた


「ここはサトシの結界内ですよね、入れるものなんですか?」

って、お父さんに尋ねると


頭を振りながら


「入ることは出来ないはずなんだが ・・・」

って首を傾げる




じっと見つめていると、見覚えがある人が通り過ぎて行った





「櫻井さん ・・・」




サトシの大切な場所に入って行ったのは櫻井さんだった








<続きます>