アナタの部屋のドアノブに手をかける
鍵が掛かってない事を祈りながら、ゆっくりと …
さすがに、そこまでイジワルじゃないんだね
ドアはすんなり開いて、顔をあげると … アナタが目の前に立っていた
「話したい事って?」
俺の知らない仮面をつけたアナタが、冷たく言い放つ
「中に入れてくれないの?ここで話す内容じゃないでしょ」
ここで負けたら終わり
アナタの瞳を睨み付けて言えば
「俺とお前の間に、そんな重要な話があったのか?
皆目、見当がつかないんだけど … 」
そう言ったアナタの瞳に優しさは … 見えない
俺の勘違い? … いや、違う …
「じゃあ、ここで話すよ … 良いんだね?
…俺としては、騒ぎになっても構わないからさ」
そう言うと、表情ひとつ変えずに
「… 話だけは聞いてやるよ」
って言って、俺に背中をむけて中に入って行く
追いかけるように後に続く
「智君、ちゃんと話がしたいんだ」
「何の話か知らないけど、早く済ませて帰ってくれ」
何故ここまで頑ななんだ … もしかしたら …
「アナタさっき言ったよね、本気にさせろって
俺さぁ、アナタ以外はいらないから
アナタの目の前で、消していくよ」
俺は、アナタに見せるように、携帯のアドレスをひとつ、ひとつ消していく
最後に、携帯画面をテーブルの角にぶつけて使えなくした
「明日、アナタのアドレスだけを入れた携帯を買うから
言い訳になりそうで嫌だけど、俺の遊び相手は素人じゃない
切れるのは簡単なんだ、口も硬いから …
ただ、アナタの相手が誰か探したけど、居なかった…」
そこまで一気に話す
「ふ~ん 相手が口が固くっても、お前がバラしたら意味ねぇだろう
あんな大きな声で、皆に教えたいのか?
まぁ、俺らに迷惑かけなきゃ別に好きにしろ」
腕を組んで、呆れたように呟く
「俺がうかつだった…その事は謝る
だけど、アナタへの気持ちに嘘はない
俺はアナタが好きだ、心も体も全部 … ほしい」
最初から、こう言えば良かったんだ
アナタの本音が知りたいから…
「贅沢だな … 両方ほしい? … それは無理だな…
体だけなら、いくらでもやるよ」
そう言って、薄ら笑いを浮かべる
俺は間違ってた、体から始まる関係なんて…
アナタと向き合ってから始めなきゃ
俺はアナタを傷つけたのか …
「体だけならいらない … 心がほしいんだ
だから … 待つよアナタが振り向いてくれるまで」
嘘はつきたくない …
俺はアナタを諦めない …
今、アナタの瞳が憂いを帯びて
小さく揺れた