懐かしい、知る人ぞ知る丸高時代にさぼった新幹線の高架下。
道路脇に2台ほど停車可能なスペースがあった。
そこから近くに眺められた芹川沿いの小山。


丁度今頃の季節、新緑が美しく目に眩かった。
緑がこんなに活き活きと息づいていたなんて初めて知った。
自分も人生で同じ季節にいたことには気付かずに。

あれから34年の歳月が瞬く間に過ぎ去ってしまった。

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ベルの形をした街灯点る火点し頃のベルロード。
カミさんと娘、私。
滅多に合わぬ意見が一致し、彦根のとある場所にやってきた。

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ツタの絡まるチャペルどころか、ツルの中の空間とも言うべき店舗。

近くの夜間高校に通っていた十代の頃から足繁く赴いた喫茶スイス。

何年ぶりだろう。
この店の閉店時間が早まってから、なかなか来ることが出来ずにいた。

久しぶりだ。

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相変わらず、店の中は賑わい、BGMの代わりに看板メニューのハンバーグが焼ける音と匂い、客同士の談笑、今も変わらぬ良き昭和の時代の独特の雰囲気が一瞬にして今を過去へと導いてくれる。

勝手に時間が流れる窓の外に一瞥を投げると、厨房で忙しげにフライパンを振っているマスターと動きまくっていたママを近眼を細めて眩しく見つめた。

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うん。
店同様、何も変わっておられず、お元気そうで一安心。

かなり忙しい店で、以前は朝から深夜まで、今でも22時頃まで営業されていて、私より一回り以上離れたそんなお身体をつい気遣ってしまう。

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大好きなポークステーキ。
肉厚で脂が甘くて旨い。
洋皿に盛られたごはんと一緒に頬張り磨き上げられた味を確かめた後、胃袋にすっと入っていく。

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超有名なハンバーグ。
余計な味付けやソースは使わず、素材の持つ旨さとマスターの絶妙な焼き加減が奇跡的とでも言えるほどの旨味を醸し出している。

私にとって世界で1番の歴史的ハンバーグここに健在!
と1人、いや目の前の家族といっしょに悦に入る。

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そうそう、今日は昼間なにやら、某番組のレポーターか誰かが「スイス丼」を求めて撮影に来たらしい。

マスターとママ、お2人に感化された歴代の滋賀大スタッフが地道に誠実にやってこられた仕事がそれらを引き寄せるのだろう。
おそらく、宣伝販促などまったく興味の無いマスターの店は、逆にテレビや新聞、雑誌の取材などがひっきりなしにくる。

店の人気や味と外観の異様さのギャップが話題性に取り上げられ、多分、この丼もネーミングのユニークさや、そこから想像が付きにくいということで取り上げられたのだと思う。

また数日間、それでなくても行列のできる店に、大群が押し寄せること間違いない。

それとは関係なく、言ってみれば豚肉と玉葱を炒めて焼肉のタレっぽいソースを絡めて仕上げただけの、ともかく、シンプル・イズ・ベストな一皿。
旨味だれの絡んだごはんは、他では食べられない味である。

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「体の調子はどう?」

帰り際、もう8年以上前にここ彦根の病院に入院したことを思い出してくださったのか、マスターに逆に心配して貰った。

どうかいつまでもお元気で、どこにもない味とお店、伝統の光るスタッフが活き活きと働き、客が愛してやまない時間と場所を提供し続けて欲しい。

満腹になるだけならどこの店でも可能だろう。
しかし、満腹と心からの満足感をたっぷり堪能して重さのなくなった店のドアを開けると、外には銀色に輝いた家路を潤すように優しい雨が降っていた。



スイス
0749-23-6501
滋賀県彦根市中藪町598-2